「テネシーワルツ」ー主人公は男性?女性?
文句なしに良い歌です。お勧めの名曲です。
子供の頃、江利チエミの歌で知りました。その頃から子供心に、何となくいい歌だなあと思っていました。今では、江利チエミの方の日本語の名訳詞もなかなか…としても、やはりパテイ・ペイジの本場の『テネシーワルツ』の方がいいですね。それにパティ・ペイジは、今でこそご高齢ですが,若い頃はかなりの美人だったようですし。(これは冗談でした。)
この歌、アメリカでも日本でも女性が歌っているので、女性が「男性の恋人を失った歌」かというと、さにあらず。
江利チエミの歌では、「別れたあの娘よ」とありますから、こちらの方は明らかに、主人公は「男性」です。
問題は、パティ・ペイジが歌った元歌の方です。
およそ英語の読解力に乏しい人種である私が、冷や汗をかきながら原詞を解読致しますに。歌の一聯目に「I intoduced her loved one」とあって、「私にとって、かけがえのなかった恋人を、彼女に、紹介した」。つまり前行の「old friend」が「her(she)」ですから、「I」は当然「女性」ということになります。この「my friend」が「stole my sweetheart from me」、紹介した「愛しの恋人を奪う」という、痛ましいことをした。
私が引っかかったのは、歌の二聯目の「I lost my little darlin`」です。男性の恋人に対して「my little darlin`」という呼称がふさわしいのかどうか。これはむしろ、男性から、女性の恋人への呼称なのではないだろうか。
数年前NHKが、この歌がどうして作られ、世界的大ヒットになるに至ったかのドキュメント番組を放送していました。
もう詳細は忘れましたが、この曲が作られた当初は、男性グループが歌う予定だったかと思います。今回少し調べましたところ、その時の歌詞では「her」ではなく「him(彼に)」(彼女を奪われた)。それであれば、「my little darlin`」はまったくおかしくありません。
それが、パティ・ペイジという才能豊かな女性ボーカリストを見出し、彼女にこの歌を歌わせることにした時に、「him」は「her」に変えたけれども、「my little darlin`」は、他にふさわしい言葉が見つからずにそのまま残した…。
しかし、もしそうだとしても。この歌は、主人公である女性が、「あの晩」からだいぶ歳月が経ってから、その時の出来事を回顧している内容です。だから今では、恋人だった「当時の彼」を「my little darlin`」と呼称してもおかしくない年齢に達している。そう考えれば、つじつまは合ってきます。(いささか回りくどい話になりましたが)つまり、パティ・ペイジの元歌の主人公は「女性」。
*
彼女は、ある夜窓辺に寄りながら外を見やりつつ,あの晩のことを思い出している。今この時点で振り返っても、あの時失ったものはあまりにも大きい。
失ってしまった恋人ー闇の中に浮かびくる遠い回想の中の彼は、当時の「my little darlin`」のまま。…いつしか彼女もあの時のうら若き自分に戻って、痛ましい出来事に出会う前の彼と、麗しのテネシーワルツに合わせて至福のダンスを踊っている。
もし仮に「もう一つ別の現実」というのがあるのならば、誰にも邪魔されず、あのままずっと彼と…。
(以上はあくまでも、私の勝手な推察と想像です。) (大場光太郎・記)
(『テネシーワルツ』の歌詞と曲は「二木紘三のうた物語」にあります)。
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