詩人の魂―バイロンに寄す
詩人―おお稀有なる魂よ !
この人間界の深き泉より
エッセンスを汲みとり
万人の心を激しく揺さぶる者よ !
詩人よ 汝(な)れは世の遊離者ではない
汚濁渦巻く世の只中で
その精華を抽象し 研ぎ澄まされた
言霊(ことだま)として世に投げ返す
類(たぐい)稀なる魂よ !
詩人よ 汝れは単なる言葉の錬金術師ではない
汝(なんじ)の真の詩人たる所以(ゆえん)は
汝のなべての言動によって示される
ただ独り 世界の深奥を探りえた確信と
探りえぬ数多(あまた)の人々との 何たる乖離(かいり)よ
その孤独 その懊悩 おお高貴なる魂よ !
母国英国を追わるるは
世の反逆児たる汝の運命(さだめ)
神々の原郷たる希臘(ギリシャ)で命果つるは
神々の愛(め)でにし汝の運命(さだめ)
詩人よ !
時に手弱女(たおやめ)の如く繊細で
時に武人のように勇敢なる魂よ !
(原作・昭和46年―大場光太郎)
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コメント
この詩の公開は2008年5月10日でしたから、ブログを開設して10日あまりだったことになります。こんな古い記事を今回なぜ再掲載したかといいますと、直前にある人が「詩人の魂」という検索フレーズで、珍しくこの詩を訪問してこられたからです。
それで私も何年かぶりで読み返してみたのです。何とも時代がかった文語調の詩です。『まあ臆面もなく・・・』と、気恥ずかしくなってしまいます。
「原作・昭和46年」とありますから、私が22歳頃のことになります。しかし今、おぼろげな記憶をたどってみると、それは初案ということで、実際にこのような形に整えられたのは25歳頃のことだったと思います。(公開時一部手直しした)
確かその頃、鶴見裕輔の『バイロン』という伝記を読んでエラク感動し、それに触発されてこういう形にまとめ上げたと記憶しています。鶴見裕輔という人は評論家の鶴見俊輔の父で、この伝記は戦前のもの、この人には他に『ナポレオン』などがありますが、当時の時代の英雄崇拝の傾向が全体に色濃く、それが若くて軟弱な私の心を大いに鼓舞してくれたのです。
投稿: 時遊人 | 2013年3月 1日 (金) 02時29分