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バラの思い出(1)

    遠き日や心に赤き薔薇一つ    (拙句)

 この季節近所を歩いていると、家々の垣根や庭にバラが咲いているのをよく見かけます。垣根からこぼれるように、紅いバラがいっぱい咲いていたり。とある庭では、茎が2m以上伸びて天辺にピンクの花が咲いていたり。今はアジサイの季節であると共に、バラの季節でもあります。ちなみに「薔薇(バラ)」は、夏の季語ですから。(もっともバラは、一年を通して咲くみたいで、「冬薔薇(ふゆばら、ふゆそうび)」という季語もあります。)
 私はそんなバラを眺めながら、ふと遠い昔のバラがパッと浮かんできました。バラの花言葉は、「愛、恋、美…」。さぞや華麗なラブ・ロマンスなんだろうね?ですって。いえいえ、残念ながらそのようなものでは。何せ小学校の頃のことなもので。
                         *
 といっても、うんと若い頃、ロマンスの一歩手前くらいのバラの思い出ならあります。先ずそれを先に―。
 21、2歳の頃。現居住地で、同じ年くらいのある女性と知り合いました。ある時とある喫茶店で会うことになりました。私が先に店に入って待っていると、少し遅れて彼女が入ってきました。「ごめんなさい。遅れちゃって」。見ると彼女は手に、豪華な花束を持っています。私はそれを見た途端、すっかりどぎまぎしてしまいました。彼女の意図は既に分っていました。その日だったか、前後だったかが、私の誕生日だったのです。
 
 イスに座るなり、「はい。どうぞ」と彼女。渡された花束を見ると、赤、ピンク、黄色などのバラの束です。だいぶお金もかかったでしょうに。女性から花をプレゼントされるなんて初めての私は、どぎまぎの上照れくさくなって、「何?こんなのどうしたの?」。今考えても、ダメですねえ。こういう場合、根っからのシティボーイならもっとスマートに、「おっ。ぼくの誕生日プレゼントかい?どうもありがとう」。それからしげしげと花を眺めてから、やおら彼女の方に向き直って、「こんな高級なバラどこで?」などから始まって、そのバラをめぐる話を一くさりし終えて、彼女を飽きさせないウィットに富んだ話を次々にする。となるものです。
 なのに田舎者の私は、予期せぬハプニングにただただ面食らって、その後の話がうまくつなげず長い沈黙。それを察知して彼女も…。しばらく二人の間に気まずい空気が流れて…。
 
 その後彼女とは一、二度逢いました。またそこでもヘマをやらかし、年頃の娘というものは何せその後の全人生を賭けているわけですから、『この男はダメねえ』とさっさと見切りをつけ、私から離れていきました。   (以下次回へつづく)
 (大場光太郎・記) 

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