大神殿への道
私はいと高き神の神殿に向かっていた。
私の誠心を神に宣(の)り上げ祈りを捧げるために。
しかし行く手には夥しい群衆がひしめいている。
進もうにも一歩も進めそうにない。
どうしたものか?私は躊躇逡巡していた。
と気がつくと私の右手に立派なロッド(杖)が握られていた。
二匹の蛇が互いに絡み合い、
先端で頭を天に聳やかしている装飾のロッド。
なぜか私はその用い方がすぐに分った。
ロッドを厳かに大群衆に向けて、
高らかに告げた。
「民よ!我が道を開けよ !」
我が大音声を聞くや否や、
大群衆は二手にさっと分かれた。
そのさまは紅海が真っ二つに分かれた時のようだ。
私はモーセさながらだ。
一気に視界が開け私は粛々と歩を進める。
彼方に黄金に煌めく大神殿が見える。
群衆は賞賛の眼差しで私を見守っている。
神殿の階(きざはし)を一歩ずつ登り始める。
と突然神殿も階もかき消えて、
私はとある近世の大きな広場のただ中にいた。
私が登っているのは何と断頭台だったのだ !
大群衆は今度は周りをぐるっと取り囲み、
断頭台の上の私に容赦ない怒号と罵声を浴びせかける。
(大場光太郎)
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