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初蝉の声

    暁やうまれて蝉のうすみどり   (篠田悌二郎)

 きのうもそしてきょうも終日曇り。おかげで蒸し暑さはあるものの、だいぶしのぎやすい一日となりました。暑さに弱い私としては、願わくば今夏は一週間に一回くらいのサイクルで曇りまたは夕立の日があらんことを。あの悪名高い1995年の記録的猛暑、そして去年も確かそうだったと思いますが。本式の猛暑型の年ですと梅雨明け以降は、昔の大干ばつ状態で、雨はおろか曇りの日も滅多にありませんから。
 とのん気に申している最中に、北陸地方は集中豪雨で大被害が出たもよう。現地の方々、被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。とにかく近年は、水害でも何害でもより被害が激甚化する傾向にあり、本当に憂慮すべき事態です。

 さて午後三時過ぎ、きのうの『暑気所感』でもお伝えしました、近所の住宅団地群の側を通りました。その団地側道沿いの桜並木の方から、ジジジジジィーッと、蝉の声が聞こえてきました。鳴声からして油蝉でしょうか。
 私はここ何日か外を歩くたびに、『そういえば、今年はまだ蝉の声を聞いていないなあ』と思っていたところでした。これをキッカケに、暑さに一層拍車をかけるような蝉声の夏到来となるのでしょうか。
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 蝉といえば、私の故郷の山形では、夏ともなればあっちでもこっちでもうるさいほど蝉の声が盛んでした。他に自慢するものはあまりないのですが、何せ自然だけはたっぷりと豊かなもので。いささか残酷物語ながら、友だちと油蝉を捕まえては、火であぶって一匹丸ごとムシャムシャ食べたことがあります。(皆様はそのような経験はないと思いますので、申し上げます。パリパリして歯ごたえよく、けっこう香ばしい味です。)
 そんな中でも、ひときわ印象深い蝉の思い出は―。
 小学校4年の夏休みだったでしょうか。ある早朝、多分5時すぎ頃だったと思います。今でこそスッカリ「夜型人間」ですが、その頃はいっぱしの早起き少年だったらしく、そんな朝早くだというのに我が母子寮から外に出て、近くのリンゴ園に一人で冒険しに行ったのです。

 ある太いリンゴの木の根元まで寄ってみると。そこの草むらに一匹の蝉がうずくまっていました。私は思わぬ収穫物に『しめたっ!』とばかりに、手に取って見てみました。蝉は未明に脱皮するもののようです。ですからその蝉は脱皮したてのホヤホヤだったのです。何とも頼りなげで儚げで、まるでにわかづくりの宝石のような淡いあおみどり色です。おそらく羽もまだ十分ではなく、体にピタッとくっついているような状態だったと思います。

 生まれたての命を目の当たりにしているという感動と共に。子供心にも「もののあはれ」のようなもの悲しい感じにおそわれました。手にとってしばしその蝉の姿を見やりながら、私は『これはそっとしておいてやらなければ…』と、静かに元の草むらに戻してやったのでした。
 (大場光太郎・記)

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