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碧野圭『辞めない理由』

 先ず皆様に、碧野圭(あおの・けい)という女流作家のことを、ごく簡単にご紹介させていただきます。
 碧野圭さん(と少し気安く呼ばせていただきます)は、現在48歳。今から3年ほど前それまで長くお勤めだった都内の某出版社を辞められ、少し遅まきながら女流作家としてのスタートを切られました。その最初に世に問われた処女作が、今回取り上げました『辞(や)めない理由(りゆう)』です。現在東京都在住。高校生2人を育てられている主婦でもあります。

 そもそも私は、日本文学は「三島由紀夫の死」をもって終わったと、勝手に思い込んでいるフシがあります。そのためそれ以降の現代作家の作品は、ほとんど読んでおりません。
 それがなぜ今回、碧野圭さんのこの作品を読む気になったのでしょう?実は碧野さんはつい先日まで、ブログにおける「ココログ仲間」でもあったのです。私が当ブログを開設した4月末から当初は、「ココフラッシュカテゴリー」の「身辺雑記」に絞って記事を投稿しておりました。当然その仲間たちのことが気になります。それで身辺雑記に記事を寄せられる何人かのブログに、立ち寄らせていただきました。そこで、何と「女流作家」という碧野さんの『ものを書く日々』を見出したのです。
 以来何日かおきに出される記事を、なるべく読ませていただいておりました。さすがプロ作家らしい、切れ味鋭い冴えたエッセイです。その都度大いに刺激を受け、私が最も注目しているブログの一つでした。

 それがどうしたことなのでしょう。7月上旬突然ブログの閉鎖を宣言され、その数日後に実際ブログは閉じられてしまいました。それまでは『プロの作家だからなあ、どうもなあ』とコメントをためらっていました。が、最後にお出しになった文に今までのお礼と共に直前にアーカイブ記事をプリントアウトさせていただいた旨のご報告などを致しました。その中で、「今後『辞めない理由』なども読ませていただきます」とお約束したのです。
 それで早速、本厚木駅前の有隣堂書店から同書を取り寄せてもらったはいいけれど…。日々の諸事、雑事でなかなか読み進まず。読了がつい一週間ほど前のことでした。

 前置きが長くなってしまいました。以下『辞めない理由』の読後感などを述べてみたいと思います。
 主人公は、某大手出版社に勤務する七瀬和美という37歳の女性です。バリバリのキャリアウーマンで、人気雑誌の副編集長という立場です。いかんなくその力量を発揮している場面からストーリーは始まります。しかしある時事態が暗転し、複雑な社内事情が絡んだ理不尽な理由によって、その地位を追われてしまいます。同じ頃ワーキングマザーでもある彼女に、小1の娘のことで学校でも難しい問題が起こります。七瀬和美にとって、のるかそるかの人生最大の試練の時です。苦悩の末彼女は、「辞めるわけにはいかない理由」によって、社内での厳しい立場に踏みとどまり、敢然と新しいチャレンジに挑みます…。

 歯切れの良い文体で、ストーリーも無駄なくテンポ良く進展していきます。時間にゆとりのある人なら、冒頭からこの本の物語世界にぐいぐい引き込まれ、気がついたら一気に読み終えているかもしれません。私は一日一章以下のペースでしたが、それでも何ヶ所かは(不覚にも)涙なしでは読めませんでした。
 碧野さんがそれまで培ってきた人生経験のすべてを投入したように感じられる、力作、感動作です。ご自身が出版界に在籍されていただけあって、『現実の出版界でも起こり得る話だよなあ』と、思わせられるほどリアルな作品です。それにビジネスの第一線で働く有能なキャリアウーマンの、男社会における立場の難しさ、苦悩などをクローズアップして問いかけた、意欲作とも思います。お奨めの文学作品です。

 この本の帯に、「誰か、テレビ局さ~ん、ドラマ化して!!!」という、大学講師の女性の切実なコメントがありました。矢島武弘様。どうでしょう?実力あるOBとして、フジテレビの後輩たちにお奨めになってみては。素人ながら、ドラマとして「成功間違いなし!」と思うのですが。
 最後に碧野圭様。私のコメントのご返信では、当ブログにもたまにお立ち寄りいただけるということでした。もしこの記事をお読みになりましたら、その時お願いした「貴ブログ再開の件」、もう一度前向きにお考えいただけませんでしょうか?

 (大場光太郎・記) 

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