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星月夜

    オルフェウスの竪琴をふと星月夜  (三重県「音の一句」採用の拙句)

 きょう当地では、快晴の秋晴れの一日となりました。日差しはさして暑からず、街並みに吹き渡る風は心地よく、気持ち良い秋の一日でした。
 
 夕方6時半頃所用で車で外出しました。この季節、もうその時間ともなれば、既に薄暗く街ははや暮色に包まれています。
 西の大山の秀峰にはわずかに雲がかかり、うすくすじを引いて上空にのびた巻き雲がみごとな茜色に染まっています。大山の南寄りの空には、今にも虚空に消え入りそうなほどに薄い眉月(びづき)が、うっすらと掛かっております。中空はまだ深い青い色をとどめ、南空の幾すじかの巻き雲も美しい夕焼けの色になっておりました。
 
 夜8時過ぎ帰宅し、車から降りて空を仰ぎました。雲一つない夜空です。ただ惜しむらくは、街の諸々の灯りが明るすぎて、認められる星はあちらに一つこちらに一つと点在しているのみであることです。南西の空に輝く金星が一番明るく、あと見えているのは一等星だけのようです。二等星は2×2で明るさが減じられます。つまり一等星の1/4の光度しかありませんので、街のこの明るさでは探すのが容易ではありません。

 冒頭の句は、2年ほど前『俳句のくに・三重「音の一句」』で佳作入選した句です。マニュフェストの提唱者である北川正恭が県知事だった、今から10年ほど前から三重県は県起こし事業の一環として、その年々でテーマを決めて(例えば「水の一句」「風の一句」など)全国から新作の俳句を募ってきました。俳聖・松尾芭蕉の出身県(旧伊賀の国)であることから、俳句という文芸を三重県から発信していきたいという趣旨のようです。
 私も某俳句誌でそれを知ってから毎年、テーマに沿った句を10数句ずつ投稿してきました。これまで6回ほど佳作入選しております。ちなみに、全国のみならず世界各国から「テーマ句」「自由題句」の二部門合計で、毎年200万句くらいの応募があるようです。入選した句は、翌年の夏頃角川学芸出版が一冊の本として出版し、その中に掲載されます。

 オルフェウスはご存知のとおり、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人です。オルフェウスはまた、竪琴の名手でもありました。その技は非常に高度で、彼が竪琴を弾くと森の動物たちが集まって耳を傾けたと言われています。自然界の生物たちが耳をそばだてたということは、オルフェウスの竪琴の音色が本物であったことの証明だと思います。
 またオルフェウスの事跡として、亡くなった妻を取り戻すべく冥府に入った「冥府くだり」は有名です。

 今から数年前の残暑の頃。「深夜涼み」のために外に出て、近所の草地(今はもうありません)に腰を下ろしながら夜空を眺めていました。12時過ぎの真夜更けのこととて街の灯りもだいぶ落ちていて、天の川もうすぼんやりと認められるくらいの星空でした。
 『あれら無数の星々は、ある規則正しい法則によって布置されているんだろうなあ。かくあらしめている法則はまた、音無き「星界の音楽」によって真釣合っているのかもしれない。その音楽を表現するとすれば、オルフェウスの竪琴の響きになるのかもしれないなあ』。そんな取りとめもないことを考えながら、しばし眺めていました。冒頭の句は、そのことをもとに後でまとめたものです。ちなみに「星月夜」は秋の季語です。

 (大場光太郎・記)

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