秋風の詩(うた)
秋風の詩(うた)
冷ややかな大気が
なべてのものを秋の色に
変えていこうとする。
風はだめ押しのように
さらに深い秋のスタンプを
到るところに押して過ぎてゆく。
風は 落ちなんとして
なおためらいがちな朽葉に
最後の一押しを加えて
母なる枝から引き離す。
ああ 朽葉は
空中をひらりひらりと舞い落ちる。
落葉の落下点を
風は誰にも予測させない。
風はまた 孤独のうちに
秋思して歩く者に吹きつける。
時に体をもするりと通り抜け
心の核心にある想いを
そっと取り出して運び去るだろう。
遠くの そう幾つもの
野や町や山や川を越えて
風はそれを 見も知らぬ誰かの心に
秋のメールとしてそっと届けるだろう。
(大場光太郎)
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コメント
この詩は、08年10月19日に公開したものです。それ以後も、たまに詩を作っては公開していました。が、1年後くらいにある人の詩に接して、『これはとても適わん』と思い、それ以後まったく作っていません。
そうしましたら、そのうち「詩想」さえ湧いてこなくなりました。出来得れば加齢に関わらず、いつまでも「みずみずしい感性」を保ちたいもの。今後はまた思いついた時に、「詩」を作っていきたいと思います。
投稿: 時遊人 | 2010年11月10日 (水) 02時21分