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横浜の秋風に吹かれて(4)

 産業貿易センタービルといえば、公的機関のビルのようです。しかし実際は、(株)産業貿易センターという民間企業が運営する、テナントビルです。一階や広場では、定期的にいろいろな催事も催されるようです。
 このビルの7階に、神奈川県行政書士会事務局があります。今回同事務局を訪れるのは、日本行政書士会連合会(日行連)が会員に交付している、「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」の新様式との交換のためです。戸籍法の改正により、それまでの様式での請求書が使えなくなったのです。今年の春頃から切り替えがあったのですが、なかなか都合がつかず、かといって場面によっては同請求書が必要になるし。それで今回の訪問となりました。(たまに、同請求書を悪用するケースがあるようです。誓って私は、そのようなことは致しません。)

 私が所属する事務局を批判して申し訳ありませんが。直接訪問でも電話でも、応対は決して良いとは申せません。まあ、能面のように無愛想、慇懃無礼、つっけんどんです。前の所から、産貿センターに越してからは特にです。『自分たちは特権階級なんだ』というような、変な思い上がりがあるのではないでしょうか。
 今では各役所とも、応対はずっと親切で柔らかくなっているというのに、俗に「民間官僚」と言うのでしょう。官僚化して改めようとしない民間組織は実に困りものです。
 というわけで、折角道々浜の秋風に吹かれながら、歴史的建造物を心地よくたどってきたのに。一辺で台無しの気分になりながら、ぐっとこらえて新請求書を受け取りました。

 一階に下りて、午後4時半少し過ぎ。気分転換に、通路から山下公園へと歩いて行きました。いえ、同事務局を訪れた後は、必ずといっていいほど、目と鼻の先の公園に足を伸ばすのです。敷地から、山下公園通りを渡って、同公園内に入り、海の方へと歩いていきます。公園内もそうですが、この界隈には街路樹を始め、本当に樹木が豊かです。もしそうでなければ、とてもこの辺には立ち寄らないことでしょう。
 横浜港はと見れば、既に日は翳って、海全体に夕靄が漂っているような感じです。前はベンチに腰掛けて、海を眺めながらゆっくり一服できたのですが、今はできません。そこで、また「赤い靴はいてた女の子の像」に逢いに行くことにしました。(以前はよく来ても、すぐ近くにその像があるとも露知らず。)

 いつもの夕方と同じで、大勢の市民が三々五々散策を楽しんでいます。特に本日は、像の周りにもいっぱい人がいるようです。どうやら、どこかの高校生たちが見学に訪れているようです。引率の先生が「どうだ。記念写真を撮ってやろうか」と呼びかけると、像を取り囲んでいた男子たちはそれに応じて、女の子の像の後ろに並びポーズを取りました。私も先生から少し離れた所でそのようすを見ていました。すると真ん中辺の男子が、私の方に一瞬シャイな視線を送ってよこしました。私はくるっと向きを変えて海を見やりました。

 秋の暮色はつのるばかり。私は早々と像も公園も後にしました。途中開港広場公園に、もう一度立ち寄りました。お隣の横浜海岸教会を、しかと確かめるためです。
 これは、先日仙人様ブログ『心の居間Ⅱ』で紹介された折り、私は「この教会は山手地区にあるんですか?」と、トンチンカンなお尋ねをした教会です。何年か前は、ここの敷地内の桜が見事に咲いて(関内地区には、他に桜はほとんど見当たりません)ちょうどその時期に偶然何度か通り、そのたびに近くまで行ってしげしげと見上げたものでした。
 しかしその木の向うに、白壁の美しい我が国最古のプロテスタント教会があったなんて。「心ここにあらざれば、見るども見えず。聞くども聞こえず」。今回はその正面に行って、暮色がいよいよ深まる中、周りを樹木で囲まれた幽玄とも思われる教会のさまを、しばし見入っておりました。(太字個所をクリックすれば、赤い靴の女の子の像・教会画像がご覧いただけます。)  ― 完 ―
 (大場光太郎・記) 

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