虫の夜
びっしりと虫の鳴き継ぐ夜道かな (拙句)
本夕お隣の愛川町中津に行きました。
以前『新涼(2)』でお伝えしましたが、当家のある所より数百メートル北へ車を走らせますと、東西に横断する道路を境に北側は市街化調整区域、途端に田園風景が広がります。数年前に完成した南北に走る新車道の両側は、人家はまばらで一面の田んぼです。もっとも今では既に刈り取りは終わり、どの田も刈り残った短い稲株の列を残すのみです。
周りに夕靄が立ちこめています。遠く西の彼方の大山と丹沢の峰々は、うっすらシルエットとなって静かに連なっています。進むほどに、何やらもの悲しい秋の夕暮れといった感じがしてきます。
新道を1.5kmほど進むと旧道に合流し、後はその旧道をしばらく北へ進みます。この道も、刈り入れの済んだ田んぼそして旧の農家が点在していたりします。道々コスモスの可憐な姿が薄暮の中に浮き上がって咲いています。本夕は風がさほどないようです。いつもならば、わずかの風にもそよぐコスモスの、じっと身じろぎもせぬ立ち姿です。
農家の庭や畑には、すでに色づいた柿の実がたわわです。思えば、私が当ブログを開設してすぐくらいの記事が『柿若葉』でした。早いもので、あれから半年近くも経ったわけです。
とまた、どこからともなく『夕焼け小焼け』のメロディが聴こえてきました。残念ながら本夕、夕やけ小焼けは見られません。
しばらく走って、中津川の橋を渡ります。この地点は、いつもご報告している中津川堤防道からは数キロ上流にあたります。その分河川全体の幅も少し狭まって、真ん中の川も数mの一本の流れのみです。
見ると川の両側の州は、上流も下流も葦や薄(すすき)やセイダカアワダチ草などが覆い尽くし、何やらすがれた秋川原の風情です。
…両側の小山を止める低いコンクリート擁壁と道の際に、枯葉がびっしり吹き溜まっているのを見ながら、左右にカーヴする坂を登っていきます。坂を登りきると中津の街並みです。県道沿いの両側には、主に各商店が建ち並んでいます。既に車のライトを点灯させないと危険なくらいの暗さになりました。
武田氏と北条氏との古戦場として名高い、三増(みませ)方向に二キロほど車を走らせて、目指す建設会社に到着です。5時10分すぎ。西の小山がやっと幽かに認められるくらい、夕暮れが急に迫ってきています。
「そろそろ県の電子申請更新の時期だから、今年の建設業の手続は早めに進めてもらいたい」と、過日お電話をいただいての訪問です。既に各都道府県とも実施しているかと思いますが、神奈川県でも県と各市町村がコンピュータネット化され、指名参加申請の主要データは県が一元管理し、それを各市町村が共有するシステムなのです。
国自体が以前から「電子政府」を目指しており、当初困難と思われていた法務省管轄の各登記申請ですら、今では電子申請が可能な時代なのです。
用事が済んで外に出てみると、早や日はとっぷりと暮れて辺りは真っ暗です。5時45分。応対してくれたおかみさんも一緒に外に出られて、「缶コーヒーですが、よかったらどうぞ」と、敷地内の自販機から温かい缶コーヒーを取り出してくれました。ありがたく頂戴します。
近くのコンビニに立ち寄り、パンを買って、車の中でいただいたコーヒーを飲みながらパンを食べて一服します。すると、コンビニに隣接した庭のあちこちから、元気な虫の声が聞こえてきます。
もう虫の夜は峠を越えたのかな?と思っていたら、さにあらず。今秋一番ぐらいリンリンとひときわ高い虫の音色ではありませんか ! 駐車していた十数分間小止みなしです。
ややあって帰路に着きました。西に小高く連なる山々は、早や境目とてなく黒々と一つらなリで続くのみ。そのたもとにポツンポツンと灯が見えます。西の斜め空には、宵の明星でしょう、たった一つだけ明るく輝いています。
帰るさのしばらくは、まるで虫のリレーのように、心地よい音色が引きもきらずに続いておりました。
(大場光太郎・記)
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