レッドクリフ&三国志(3)-孔明登場
曹操南征の目的は、それによって中国全土を手中に収め統一して、新たに曹王朝を創るためです。
その大野望を阻むことになる劉備も、着実に力を蓄えつつありました。一時徐州の牧(ぼく・地方長官)となったものの呂布に追われ(呂布は後に曹操によって討ちとられる)、曹操を頼って許都に滞在中、曹操は最大級の待遇をもって劉備を遇しました。ある時梅を煮て酒を酌み交わしながら天下国家を論じた時は、曹操をして「天下の真の英雄は、君と僕だ」とまで言わしめました。
劉備は元をたどれば、前漢6代皇帝・景帝の子の中山靖王・劉勝の末裔と言われ、献帝に拝謁の折りは「劉皇叔(りゅうこうしゅく)」という賛辞の言葉を賜り、そのことが劉備の名声を更に天下に高めることになりました。
しかしその後、献帝の曹操討伐の密勅に連判したことが曹操の知るところとなり、都を逃れ、その頃は同じ漢室の流れを汲む荊州(けいしゅう)の劉表の客将として、新野(しんや)という一地方の守護に当たっている身分でした。
顧みれば、黄巾の乱平定に関羽らと共に身を投じてから幾十星霜。今は既に齢五十半ばなのに、未だ「漢室再興」という志を遂げずにいる。それを嘆いた「髀肉之嘆(ひにくのたん)」の故事は有名です。
『演義』によれば、そんな折りこのままでは荊州を劉備に乗っ取られると危機感を抱いた、劉表の奥方の弟らが、さまざまに劉備暗殺の謀略を企てます。ある重要な宴の主宰を務めることになった劉備は、勇将の一人・趙雲のみを連れてその館に赴きます。しかし暗殺計画を事前に報せてくれた劉備を慕う者のお蔭で、間一髪難を逃がれます。
その逃走中、水鏡先生の庵に偶然立ち寄ります。そこで水鏡先生より、「天下を治める器量をお持ちのあなたが不遇なのは、傘下に優れた智謀の士すなわち軍師がいないからである。臥龍、鳳雛の何れかを得られれば、天下を取ることも夢ではないでしょう」と告げられます。
劉備も深く思うところあり、その二人を探し続けます。ある時そのうちの一人の臥龍(がりょう)先生が、新野にほど近い南陽の草蘆(そうろ)に隠棲していることを知り、その草蘆を最大の礼を以って訪れます。しかしなかなか会えず、三度目の訪問でやっと臥龍・諸葛孔明(孔明は字・あざなで正式名は「諸葛亮」)に逢えたと言われています。名高い「三顧の礼」です。
常々自らを歴史上の人物・管仲や楽毅になぞらえていた諸葛孔明は、この時弱冠27歳の白面の青年。白皙長身、どこか神仙的雰囲気の漂う人物だったと伝えられています。
その会見で諸葛孔明は、庵の壁面に大きな中国の地図を掲げ、劉備に「中国はあまりに広大で、統一しこれを運営するのは極めて難しい。ゆえに北と東は魏の曹操に任せ、南は呉の孫権に任せて、あなたは西の益州(後の蜀)に入りその地を治めたらいかがか?」という、有名な「天下三分の計」を授けたと言われます。
それまではとても思いもつかなかった、大戦略、大構想を示されて劉備の視界は一気に開けたことでしょう。
「その大望成就のために、何とか先生のお力をお貸しいただき、この私を補佐して欲しい」と、劉備は説得に当たります。孔明は固辞し続けますが、「このまま動乱がうち続き、民が苦しむのを座して見ていることができましょうや」という言葉に、孔明も深く心を動かされ、遂に出蘆(しゅつろ)を決意することになるのです。
嗚呼(ああ)南陽の旧草蘆
二十余年のいにしへの
夢はたいかに安かりし
光を包み香(か)を隠し
隴畝(ろうほ)に民と交われば
王佐(おうさ)の才に富める身も
ただ一曲の梁歩吟(りょうほぎん)
丞相(じょうしょう)病あつかりき
(土井晩翠「星落秋風五丈原」より)
諸葛孔明の登場によって、『三国志』がにわかに精彩を帯びて感じられるのは、私だけでしょうか? (以下次回につづく)
(大場光太郎・記)
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