筑紫哲也氏をしのぶ
昨11月7日午後1時50分、ジャーナリストの筑紫哲也氏が肺がんのため都内の病院で亡くなりました。享年73歳。謹んで哀悼の意を表したいと存じます。
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筑紫哲也(以下、広く知られた人であるため敬称略)は、1935年6月23日大分県日田市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。1959年~1984年朝日新聞記者。1984年~1987年「朝日ジャーナル」編集長。1989年~2008年『筑紫哲也NEWS23』メーンキャスター。早稲田大学大学院経営研究科客員教授。立命館大学客員教授。著書『筑紫哲也のこの「くに」のゆくえ』など。
私が氏の訃報に接して真っ先に思い浮かんだのは、『これで本当の意味での言論人が、いなくなっのかなあ』ということです。
筑紫哲也は、とにかく見事なほどその言論にブレのない人でした。例えば、あの小泉政権下それが長期政権になればなるほど、「郵政選挙報道」に見られたように、多くのジャーナリズムやジャーナリストが大政翼賛的に同政権にすり寄っていきました。しかしそんな中筑紫哲也は、最後までそのリベラル、反権力の姿勢を崩すことがありませんでした。時に鋭い言説を放ち、権力へのチェック機能としての言論人のあり方を貫きました。これは言うは易く行なうは難しで、いくらジャーナリストと言えど、わが身が可愛いわけだし、それで長くメシを食っていこうとするなら、時に権力的なものにヨイショもしたくなるでしょうに。ただただ立派というしかありません。
世に筑紫哲也が広く知られるようになったのは、TBSの夜の報道番組「NEWS23」のメーンキャスターになってからでした。そのような形式の先駆けとなった、テレビ朝日の久米宏の「ニュースステーション」に対抗する形で発足した番組でした。
久米と筑紫では、経歴も個性も違いそれぞれの特長を出し合って、その後の報道番組のあり方に強い影響を及ぼすことになりました。久米も筑紫も共に早稲田大学出身。そのためなのか、共にリベラル、反権力というあり方では共通していました。早稲田の自由な校風、気風がしのばれます。
始めたのも久米宏が早く、そして報道番組から去っていくのも久米の方が先でした。その後筑紫哲也一人が、「言論の良心の砦」をただ独りで護る形が以後続きました。私は筑紫は、ガンに侵されているのが分かり同番組を降板するまで、「言論の自由」という孤塁をよく護り切ったと思います。
筑紫哲也の「NEWS23」をどれだけの人が、視聴していたのかは知りません。が、私は筑紫が、一貫して自分の言葉で視聴者にニュースを伝えていた姿に感銘を覚えます。特に主なニュースが一段落した後の、筑紫の総括とも言える「多事争論」が好きでした。筑紫の自分の言葉、肉声で、その時々のテーマについて視聴者に率直に伝えていこうという真摯さが伝わってきました。その言説に、『あヽこんな視点、こんな切り口があったのか』と、何度ハッとさせられたか分かりません。
筑紫哲也ほどのジャーナリストが今後出てくるのだろうか?是非是非出てきてもらいたい、という思いでいっぱいです。しかし今は、筑紫哲也に「不世出の言論人」の称号を贈りたいと思います。
(筑紫哲也氏については、今後も触れることがあるかもしれません。今回はその訃報に接し、取り急ぎまとめました。)
(大場光太郎・記)
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コメント
「筑紫哲也氏」を検索していて、初めてこちらのブログを拝見しました。筑紫さんは、オバマの当選を確信して世を去ったと思います。インタビューに行きたかったでしょうね。その番組を見たかった。きっと素晴らしい発言を引き出されたと思います。残念です。
投稿: 牧場のはぐれ牛 | 2008年11月 8日 (土) 04時03分
牧場のはぐれ牛様
はじめまして。当ブログをご訪問くださり、かつコメントいただきありがとうございました。そうですね。おっしゃるとおり、オバマ当選を確信し、なおかつアメリカの「チェンジ」も確信していたと思います。とにかく惜しい人を亡くしたという思いでいっぱいです。
「牧場のはくれ牛」というハンドルネーム、なかなかいいですね。私もそういうところがありますので、共感を覚えます。今後ともお気軽にご訪問、コメントください。
投稿: 大場光太郎 | 2008年11月 8日 (土) 11時13分