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田母神論文をめぐって(7)

 私の結論

 いやしくも「論文」というからには、一つのテーマの光も影も、肯定面も否定面も、問題点の一切を白日の下にさらして、多角的にさまざまな観点から考証して慎重に結論を導き出すべきです。それからすれば、田母神の一文は論文の体をなしていない、単なる「大東亜戦争肯定文」であると、断ぜざるを得ません。
 こんな文が、アパグループという民間企業の懸賞論文とはいえ、「防衛省航空幕僚長 空将」の肩書きで出されて最優秀賞となり、世間の注目を浴びてしまうとは。私は深い憂慮の念を禁じ得ません。
 同グループ第1回「真の近現代史観」懸賞論文の審査委員長・渡部昇一は、私の出身県でもある山形県出身で、現代の碩学とも称されている人物です。渡部が本当に審査決定したの?と疑念を抱いていましたら、どうやらこれはアパグループ代表の元谷外志雄(もとや・としお)が、強引にねじ込んで最優秀にした「やらせ疑惑」まで浮上しているようです。
 それにしても思います。こんな困った一文が、なぜ今この時期に出されるのだろうか?と。
 
 ついでにご紹介します。『朝生』収録中に視聴者から募った電話アンケート結果では、「田母神氏論文に共感できるか?」という設問に対して、YESと答えたのが303件(61%)、NOと答えたのが164件(33%)、その他は30件(6%)と、共感できるという回答がトップだったそうです。また共感できる理由として、以下のような回答だったそうです。
  1. 論文内容は正しい:47件
  2. 田母神氏の意見は正しい:30件
  3. 日本は侵略国家ではない:22件
  4. 日本だけが悪いとはいえない:20件

 思えばバブル崩壊からだいぶ経過した今日、経済力、国民の生活水準、学童の学力など国際的な指標のどれを取っても、(高度経済成長期は世界のトップクラスだったのが)軒並み大幅に下落しています。これはすなわち、日本の国力が下降傾向にあることの表れと見るべきです。
 それに加えて、アメリカ発の一連の大問題による世界的金融危機が今日の我が国社会を直撃しています。まさに私が少し前述べました「昭和初期と酷似」した状況なのです。
 こういう時期はえてして、一見すると勇を鼓舞されるようなアナクロニズム(時代錯誤)的言説が流布され、もてはやされがちなものです。社会全体の自信喪失、閉塞感の穴埋めのように、多くの国民がそれに共鳴しがちなのです。(第一次世界大戦の莫大な損害賠償に苦しむドイツ国民もそうでした。そしてヒットラーの登場を、大歓呼で歓迎したのです。)

 『朝生』で誰かが述べておりました。「本当のシビリアンコントロールとは“主権在民”のことである」と。すなわち民主主義社会である今日では、「主権」は言うまでもなく我々「国民」なのです。その権利と責任のもとに、このような暴走的言説は、厳しくチェックしていくべきです。間違っても、主権者たる私たちが、いとも簡単に共鳴したり振り回されたりしてはいけません。
 とにかくこの論文から透けて見える田母神の本音とは、憲法第9条を改正しろ、自衛隊を正規な国軍として再整備しろ、集団的自衛権を認めろ、自衛隊が地球上のどこにでも出動できるような「普通の国」にしろ、本当に自国を守る体制にするために核保有しろ、等々です。

 私は以下のことを断言します。
 (甚だ失礼な物言いながら)田母神は単なる「軍事バカ」で、時代の「真の潮流」がまるで見えていません。いえ田母神のみならず、世界各地で今なお戦闘や紛争が繰返されている情勢では、皆様方もあるいは信じられないかもしれませんが。
 しかし底流では、この世界はもう「戦いのない世界」の方向に既に動き出しているのです。どこかでも述べましたが、今は「産み出し=膿(ウミ)出し」の時、人類数千年来のウミをさかんに出している最中なのです。どうぞ、現象面のみを見て捉われないようにしていただきたいと思います。今の混迷、ごたごたは、近未来必ず平和的、調和的に収束します。
 それでも「戦う心」を強く持っている人たちは、いずれこの地球上での生存が許されなくなるでありましょう。どうせ訴えるのなら、「平和」をこそ訴えましょう。これこそが、「真の勇気」なのです。   ― 完 ―

(追記) 今回の記事をまとめるにあたりましては、フリー百科事典『ウィキペディア』の「田母神俊雄」や昭和初期の出来事の各項など、また田母神論文『日本は侵略国家であったのか』などを参考にしました。
 なお、同論文は以下のページを開いて、PDF版でお読みください。但しくれぐれも、同論文にマインドコントロールされませんように。
    http://www.apa.co.jp/book_report/index.html
 また今回は、肝心の「村山談話」について触れることができませんでした。いずれ改めて、それと同論文の対比などを述べさせていただければと思います。
 真珠湾攻撃から満67年の、12月8日   (大場光太郎・記) 

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