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草なぎ剛への(架空の)手紙

 既にご存知かと思いますが、本日23日人気アイドルグループ「SMAP」のメンバーの一人である草なぎ剛が、「公然わいせつ罪」で警視庁に逮捕されました。よって現在は留置場に身柄を収監中。いやそんな事態ではなくとも、私如き者の拙文が、草なぎ剛に届きそして読まれることなど金輪際ないことでしょう。
 しかし私はそれを百も承知で、彼に手紙を出したくなりました。そこで以下の一文は、「草なぎ剛への架空の手紙」として認(したた)めてみたものです。
 
                        *
 草なぎ剛君。君とはまったく縁もゆかりもない人間ながら、今回の君の事件が午前のニュースで流された時にはびっくりしたよ。
 私は君が所属するSMAPというグループは、実のところあまり好きではない。中井正広、キムタクなど「オレが、オレが…」の「我」の強い自己顕示欲の塊りのようなメンバーの集まりのようだと感じていたからだ。しかしそんな中で君は、他の者とは少し違って見えた。そんなに自己主張をしない、どちらかというと温和な好青年という印象が強かった。
 
 SMAPの仲間との活動や、君独自のテレビCM、地上デジタル放送の普及推進キャンペーンのメーンキャラクターなど、君の活躍の場面はいっそう広がり続けていた。しかし私が君を最も評価したいことは、実はそれらではなく、君が韓国語をマスターして、心底韓国を理解しようとしていたことだ。
 まだ筑紫哲也存命の頃、TBS『ニュース23』で前韓国大統領をスタジオに招いて、日韓関係を巡る諸問題を討論した生番組があった。その時君も出演して、流暢なハングル語で前大統領に的を得た質問をしていた。また最近では、地球環境保全の日韓キャンペーンで、韓国の人気女優、チェ・ジウと共演するなど、益々日韓友好の架け橋的活動もしていたそうだ。私はこの面で、SMAPの他のメンバーとは一味も二味も違う君を評価していたのだ。

 ところで君は、駆けつけて身柄を拘束しようとした警官に対して、叫んだそうじやないか。「裸だったら何が悪い!」。君はその時酒気帯び運転の約5倍ものアルコールにより、酩酊状態だったようだ。だからその言葉は、泥酔酔っ払いで無意識的に発した言葉で、全裸になったのもその延長線上のことだったのだろう。しかし私は、深夜の公園で全裸になったことも、大声で何をか叫んでいたことも、全部君の本心から出た行為だったのではないかと思う。
 昔私の友人で、私より二つほど若いのがいた。一緒に仲間と酒を飲んでいた時、その男がふと「オレは素っ裸になって町に飛び出したい衝動に駆られる時があるんだよ」と言った。もちろん君ほど酔っぱらってはいなくて、冷静にそう言ったのだ。彼はなかなかハンサムな上、筋骨逞しい男だった。私は思った。『何だコイツは。変な妄想抱きやがって』。
 しかし今なら違って考える。自分の肉体に自信を持っている若い奴は、そういう衝動を誰もが抱くのかもしれない。私の場合は虚弱体質で、とても人様に見せられる体ではなかったから、そう思わなかっただけで…。

 君は自慢の肉体をさらしたい無意識的願望を、ともかくもそういう形で実現した。凄いじゃないか! 常人だったら、例え泥酔していてもなお抑えてしまうタブーを、君はいとも簡単に破ったのだ。痛快この上ないではないか!
 しかしその結果は、この世の刑法という法律に触れて、
 同法第174条(公然わいせつ)
 公然とわいせつな行為をした者は、6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
という刑事罰が待っている。多分君の場合は初犯だから、執行猶予付きでそんなに遠くなく保釈されるだろう。しかしそれでも世間的代償はとてつもなく大きい。芸能活動、テレビCM、地デジのメーンキャラクター…。君がこれまで営々として築き上げてきたことが、すべて水泡に帰してしまうことになるだろう。

 だが草なぎ剛君。君にとってそれで良かったのだよ。君は限度を超えて、何もかもを一身に背負い過ぎていた。「SMAP」のメンバーとしてその虚像を長いこと維持し続けること、地デジの「国民的」メーンキャラクターとしての役割等々。言ってみれば君はそんな「良い子ちゃん」を演じ続けることに、かなりのプレッシャーとストレスを感じていたんじゃないだろうか?その思いを君は必死で抑圧しながら、一生懸命良い子ちゃんを演じ続けて来た。しかしそれは地下のマグマのようにたまりにたまって、今回あのような形で一気に爆発したのだ。
 今留置所の中でしみじみ『大失敗だ』と思うと同時に、『いやこれで良かったんだ。これでやっと少しは楽になれる』という、相反した気持ちがないだろうか?

 君は実は何一つ失っちゃいない。失ったのは単なる外側の虚名だけで、そんなものは所詮幻(まぼろし)に過ぎないんだから。
 君はお見受けするところ、本当は物静かで内省的な人間なのではないだろうか。留置所は多分越し方を振り返り、内省をさらに深めるには格好の場所かもしれない。その場所でとことん問い直してもらいたい。『オレは本当に芸能活動に戻りたいのか?』と。もし本心から強く戻りたいなら、世間やファンがどう思おうと戻って、また一からやり直せばいい。
 しかし本心がまったく別の、例えば芸術の世界か公益活動か何かに進みたがっているんだったら、虚名などかなぐり捨てて、ゼロからその方向でやり直してもらいたい。
 いずれにしても、何の関係もない者ながら、君の真の再起を心よりお祈りしている。

 (大場光太郎・記)

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コメント

 草なぎ剛は、一日の留置のみで、処分保留のまま釈放されました。単に酔っ払った上での少し羽目を外しすぎたくらいですから、当然といえば当然の処置なのかもしれません。
 それなのに即現行犯逮捕そして異例の家宅捜索は、警視庁はあるいは「薬物の可能性」を疑ったのかもしれませんが…。
 ただ今回の件で、草なぎ本人やジャニーズ事務所にとってのイメージダウンは避けられません。スマップや当人が今後どうなっていくのか、関心をもって見守りたいところです。

投稿: 大場光太郎 | 2009年4月25日 (土) 06時35分

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