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新政権の厳しい船出

 少し前まで、この国ではまず政権交代は起きないだろうと思われていました。しかしそれが現実に起こってしまいました。起こしたのは他でもない私たち国民の力です。「民主党308議席」。それにしても凄まじいほどの大勝利です。
 今回民主党に託した、有権者の一票一票への思いはさまざまなものだったことでしょう。政権交代への全面的支持から、リスク覚悟で「とりあえず任せてみよう」という人まで、投票動機は実にさまざま。しかしこれ以上自公政権に任せていたら、この国と我々の生活は更にどん底になる、そんな危機感は共通していたのではないでしょうか。

 そのような国民の期待を一身に背負ったかたちの、民主党を中心とした新政権は、果たして本当に国民の負託に十分応えてくれるのでしょうか?残念ながら、当面はあまり過度な期待はしない方が良いと思います。4年前の「郵政が民営化されればすべてが良くなる」式のバラ色の夢を抱いてしまうと、早晩幻滅させられることになるのは必至かと思います。
 小泉政権以降の「新しい失われた10年」、さらには1955年発足以来半世紀以上にも及ぶ自民党一党支配によるこの国の「負の遺産」は、それこそ膨大なものです。どの党が政権を取って国の舵取りをしていこうと、一朝一夕で解決を見るような生易しいことではありません。

 国地方合わせて1000兆円超とも言われる莫大な財政赤字をどうやって減らすのか。六本木ヒルズと地方のシャッター商店街、一部の億万長者とワーキングプアなどの格差の是正をどうやって図るのか。輸出頼みの外需依存型から内需拡大型へどうやって経済を質的に転換させていくのか。本当に景気浮揚は出来るのか。どのようにして食糧自給率を高めていくのか。高齢者、失業者、身障者など社会的弱者へのセーフティネットをどう構築していくのか。少子高齢化が急速に進む社会にどう有効に対応するのか。医療、介護などの社会福祉の充実をどうやって図るのか。地方分権、地方への財源移譲問題とどう向き合っていくのか。問題の多い教育をどう立て直すつもりなのか。犯罪多発、薬物汚染拡大をどう防ぐのか。地球環境問題には、どう取り組むのか。従来の従属的な関係から対等の日米関係にチェンジするにはどうすべきなのか。真の国際貢献とはどのようなものなのか。中国、韓国との近隣外交はとのようなスタンスでいくのか。北朝鮮とは…。
 懸案の問題、難題は数多くあります。

 民主党をはじめとして連立を組むどの党も、政権与党の経験がないことも不安材料の大きな要因です。しかしこれは自民党に代わって受け皿となる政党を育ててこなかった、我々国民にも責任があります。これについては、経験不足から生じる多少の齟齬(そご)は寛容の心で見守るしかないと思います。
 また経験がないことだからこそ、新鮮な気持ちでチャレンジ出来るということもあるものです。それに民主党には、今回の新当選組も含めて勉強熱心で優秀な若手の人材が大勢います。ベテランの藤井裕久(元大蔵大臣)や菅直人(元厚生大臣)のような閣僚経験者とともに、それら若い力による現状突破力にも大いに期待したいものです。

 次にマニフェストに掲げた政権公約実行に当たって、選挙期間中にもしばしば問題にされた「財源はどうするのか?」ということがあります。自民党は政権交代が起きることを見越して、「民主党に渡すな」とばかりに「埋蔵金」を悉く使い果たしたのです。だから確信を持ってそう言うわけです。大マスコミもそれに同調していたとおり、確かに厳しいと言わざるを得ません。
 しかしそれは政官財癒着構造で、予算を分配する仕組みの自民党政権下での旧思考です。そのシステムを根本から改めてムリ、ムダ、ムラを見直せば、政策実現に必要な財源は必ず確保出来るはずです。

 その前に立ちはだかるのは、明治以来連綿と続いてきた「官僚の壁」です。これに対して小沢一郎が代表の時、「民主党が政権を取ったら、霞ヶ関に100人の議員団を送り込み、霞ヶ関改革を断行する」とぶち上げました。中央官僚はさぞびびったことでしょう。新政権では後を継いだ鳩山由紀夫が首相になるわけですが、その「脱・官僚」の基本姿勢は変わっていないと思います。
 ただ初めからけんか腰で乗り込むと、小泉政権下の田中真紀子外相のように、お役人から総スカンをくらい物事が一歩も進まない事態も考えられます。官僚は任された分野では国会議員が太刀打ち出来ないほどのプロ、優秀で確かに手ごわい相手です。そして己の保身には極めて敏感です。
 一方で脱・官僚、霞ヶ関改革を進めながら、もう一方ではうまく官僚を手なづけて協力させなければならない。難しいことながら新政権の成否は、実にこの一点にかかっているといっても過言ではなさそうです。

 こうしてみますと、新政権にとっては実に厳しい船出と言えそうです。308議席を獲得しても、鳩山代表はじめ民主党首脳の顔に笑みはありませんでした。身の引き締まる思い、とても浮かれている気分ではないのでしょう。政権担当は初めてという初々しさから、自公政権のように数の力を頼みとした暴挙に出る心配はないと思います。

 8月30日は、以前述べましたように、徳川幕府の大政奉還にも匹敵する「歴史的な日」となりました。とにかく新政権に、この国の浮沈と私たち国民の命運がかかっています。前途は多難でも、これまでの閉塞感、絶望感ただよう暗雲垂れ込めた状況から、天の一角に光が射し初めたのです。理想的な政治形態にはまだまだです。しかしそれに何歩か近づいたことは確かです。
 光をよりいっそう輝かせるべく暗雲を払おうと、新人も含め当選した308人の民主党議員たちは、それこそがむしゃらに仕事をすることでしょう。私も「よしっ。オレも自分の立場でしっかり仕事をしていくぞ ! 」という、新たなやる気をかき立てられました。

 (大場光太郎・記)

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