続・『カムイ外伝』を観て
今回の映画は、「ビックコミック・スペシャル」の『カムイ外伝』3、4巻の「スガルの島」をベースにしているようです。2つの漁村が舞台になっています。こんなローカルなうち捨てられた漁村で、世にも奇っ怪な出来事が巻き起こるとは。武士あるいは史上名高い出来事にスポットライトを当てがちな時代劇にあって、大いに異色な視点だと思います。
この映画は監督が崔洋一、脚本が宮藤官九郎と崔洋一の共同脚本。崔洋一は、1949年(昭和24年)生まれで韓国籍の映画監督、脚本家、俳優。主な監督作品は、『十階のモスキート』『月はどっちに出ている』『血と骨』など。『血と骨』では第28回日本アカデミー賞最優秀監督賞、優秀脚本賞に、『月はどっちに出ている』では第17回日本アカデミー賞優秀監督賞など、多数の受賞歴があります。
主人公のカムイを演じたのは、松山ケンイチ。青森県むつ市出身の24歳。若手実力派俳優とのことですが、この映画を観るまで私は知りませんでした。『男たちの大和/YAMATO』で第30回日本アカデミー賞新人俳優賞、『デスノート 前編』で同賞優秀助演男優賞、『デトロイト・メタル・シティ』で第32回日本アカデミー賞優秀主演男優賞など多数の賞を受賞。なるほど「凄い」の一言です。
今回のカムイは、ぴったりのはまり役だったなという感じがします。私のかすかな記憶のカムイ像もこんな感じだったと思うのです。松ケンは元々二枚目のイケメン系ですから、とにかく絵になります。それに非情の世界に生きる孤独なヒーローながら、時折り見せるやさしさ。女性ファンはイチコロでとりこになってしまうのではないでしょうか。
脇役陣の演技も光っています。やはり抜忍の先輩格の元くの一(女忍)スガル役の小雪。彼女は『ラストサムライ』で一躍国際派女優との評価を得ましたが、私は今回のスガル役の方がより演技が光っていたと思います。もっとも皆が絶賛する『ラストサムライ』、私は「ハリウッド臭時代物」と、あまり評価していないのです。
追忍に追われて「スガルの島」に漂着したスガルを、妻としている漁師半兵衛役の小林薫は今さら言うまでもないベテランです。貧しい漁村の一漁師の役柄でしたが、さすが味のある演技でした。
2人の間に生まれたサヤカという娘役の大後寿々花。同島に同じように漂着したカムイにいつしか恋心を抱く娘の役どころを好演していたと思います。彼女はまだ16歳とのことですが、将来が楽しみな女優の卵のように思います。
漁村民からサメ退治を依頼される、当初は正義の味方、しかし実はカムイを葬り去ろうとする渡衆(わたりしゅう)の頭目・不動役の伊藤英明。このような映画では、ヒーローをより引き立てるための、魅力的な「悪役(ヒール)」の存在が欠かせません。伊藤英明はその期待に十分応えていたのではないでしょうか。私は伊藤はどちらかというと善人役だけかなと思っていただけに、新たな側面を発見した思いです。
その他備中(山陽道に面した昔の一国。今の岡山県西部)松山藩主軍兵衛役の佐藤浩市、その側女(そばめ)のアユ役の土屋アンナ。共に面妖な役どころがはまっていて面白かったと思います。
映画のラストでカムイは、一艘の小舟に乗って荒れ狂う夜の海に漕ぎ出し、すべてが終わってしまった島を後にします。そのシーンにかぶさるように、「カムイはいつになったら本当の自由を手に入れることが出来るのだろうか?」というようなナレーションが入ります。いやいや。映画の中でカムイは、既に十分自由を手にしているではありませんか。
己を追ってくる追忍たちが飛ばす短剣を、すんでのところでするりとかわしたり、高い木や崖上にいとも簡単に飛び移ったり、空中飛行が出来たり、檻の中に閉じ込められたまま海中に沈められても、間一髪危地を脱したり…。私たち平凡人からみれば、まるで「超人」です。超人とは真の自由人の異名に他ならないわけですから、カムイは今のままで十分自由人であるのです。
カムイと追忍たちあるいは不動との息づまる攻防戦を、一層スピード感、臨場感溢れる迫力あるものにしているのは、何といってもCG技術の進歩の賜物です。それなしには、カムイの変移抜刀霞斬りや飯綱落しなどの必殺忍法は表現出来なかったはずです。
ある人がテレビは「提霊微」だと言ったことがあります。これはテレビは、「微妙な霊的世界を映し出す装置」という意味合いかと思われます。現在起きている事物でも、場所を選ばず国内外どんな所でも中継出来ます。また過去も未来も自在に描き出せるわけです。霊界は3次元世界とは違って場所的制約はなく、また過去、現在、未来という直線的時間軸にもない世界なわけですから、この言葉は案外的を得ているのです。
これはCGなどの映像技術の進歩によって、今や映画の世界にこそふさわしい言葉であるように思われます。最近の映画の映像世界は、本当に「夢の中の世界」「霊界(アストラル界)」にどんどん迫っていっているようなのです。
おそらく現実の世界も、いずれその世界にどんどん近づいていくのでしょう。というよりも、今この時がそのプロセスなのかもしれません。映像世界というバーチャルリアリティの世界は、そのことを告げ知らせる予告編、あるいはこの現実がその世界に踏み込む上での、かっこうの予行演習としての役割があるのかもしれません。
ともかく全体として、異色の大型娯楽時代劇。さすがは白土三平劇画の映画化。見ごたえ十分で、お奨めの作品です。
(大場光太郎・記)
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