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かなえの殺人レシピ(2)

 逮捕のきっかけとなった結婚詐欺事件について

 3千万人首都圏人口の巨大な無名性にまぎれて、木嶋佳苗(34)は人知れず恐るべき闇の行為を重ねていたのでした。闇が現れようとしていた時には、現在露見している犯罪のすべては仕上げられ、なおかつ次なる獲物に間近に接触もしていたのです。
 30代半ばの女の恐るべき事件が表に現れ出るきっかけとなったのは、9月25日佳苗が結婚詐欺容疑で埼玉県警から逮捕されたことです。いやその時は、日常茶飯事に各種犯罪が恒常的に頻発している当今、一人の30代女の結婚詐欺のことなど報道機関も世間もまったく関心を寄せませんでした。

 それがにわかに注目され出したのは、逮捕から1ヵ月あまり経った10月26日のこと。それまでマスコミに伏せられていた佳苗の本当の「逮捕事実」を、読売新聞がスッパ抜いてからです。
 それによりこの事件は単なる結婚詐欺事件にとどまらず、複数人の男性が謎の死を遂げており、いずれにも木嶋佳苗が関与しているらしいということになり、「稀に見る大事件」とばかりに各報道機関が以後狂乱的に報道合戦を繰り広げたのでした。

 いずれにしても9月25日逮捕のきっかけとなったのは「結婚詐欺事件」です。まずはこの事件から振り返っていくことにします。
 結婚詐欺を遂行する上で佳苗が使ったのは、ネットの「婚活サイト」でした。世の中の「婚活ブーム」にあやかり、現在婚活サイトの運営会社は4000社にも上るといわれています。その中で佳苗が利用したのは検索サイト「ヤフージャパン」が運営する婚活サイト「ヤフーパートナー」でした。最も信用度が高く利用客の多い同サイトを利用することで、佳苗は登録者のうちでも「カネを自由に使える」いわゆるお金持ちの男性を特にピックアップし、ターゲットにしていったものと考えられます。

 佳苗は同サイトで「学生」や「介護ヘルパー」と自己紹介。そうやって関係が進み結婚話が出ると、さあそこからが口八丁手八丁の佳苗の本領発揮です。「私は大学院生です。学費が3ヶ月未納で卒業できません。卒業したらあなたに尽くします」と持ちかけ、生活費や学費などを無心していったのです。
 今回はその中で、長野県塩尻市内の50代男性と静岡県の40代男性の2人から、合計330万円を詐取した疑いで逮捕されたのでした。同容疑では、佳苗は10月21日起訴されました。
 また同じような手口での、長野県の50代後半男性と埼玉県の30代後半男性への詐欺未遂容疑でも、10月21日再逮捕されています。
 佳苗は詐取した金は「クレジットの返済に充てた」と言い、生活費への充当目的で詐欺を繰り返していたとみられています。そしてこれら一連の「詐欺罪」について、佳苗は容疑及び起訴事実を認めているとされます。

 ところで木嶋佳苗は、押収したパソコンを解析した結果、ヤフー婚活サイトのような大手サイトの他に「不倫サイト」「愛人サイト」へも顔を出していた可能性が高いことが分かったといいます。実際佳苗は、不倫相手を探す出会い系サイトに名前を登録し、交際にこぎつけた83歳の無職男性を脅し、百数十万円を受け取ったとされています。
 幾つもの偽名を使いながら数十人の男性と接触し、同じような手口でやられた被害者はゆうに20人を超えるとみられています。しかしそこは知能犯の佳苗のこと、予め社会的地位が高く被害届を出しずらい男性を狙い撃ちしていて、捜査当局も実態を把握しにくい状況のようです。

 こうして見てきますと、改めて「婚活サイト」や「出会い系サイト」の持つ怖い一面が垣間見えてきます。いくらヤフーの同サイトが「本人確認」をきちんと取っている優良サイトとはいえ、時に木嶋佳苗のように最初から詐欺目的で同サイトにアプローチしてくる輩を防ぐことは難しいわけです。いわんや偽名や偽情報をいくらでもデッチ上げられる、出会い系サイトに至ってはなおさらです。
 
 今回の木嶋佳苗の一連の事件によって、せっかく盛り上がっていた昨今の「婚活ブーム」も下火になるのでは?と懸念されています。男女とも結婚年齢が上がり少子化している今日の社会。その意味で婚活ブームは、今日の社会的要請によって生じたブームといえなくもありません。

 しかしだからといって、「結婚」という人生で最も大事なことの一つを、ネットによる出会いに求めても良いのだろうか?見合い結婚の一つのバージョンとして、それはそれでうまくまとまりめでたくゴールイン、その後も「ハッピー、パッピー」というケースがないとはいえないけれど。見えない相手を、じっくり時間をかけて各方面から見定めてからならともかく。ネット上の甘い言葉にすぐに飛びつくようでは、いくら何でも少し安直すぎはしまいか?
 中には同サイトに登録した個人情報を他に売り飛ばしたり、飛びついてきた男性に対して、美人局(つつもたせ)のようなことをしている悪徳業者もいるというし。

 俗に「魚心あれば水心」。その心理にうまくつけこまれた被害男性にも、何らかの責任があったのではないでしょうか?
 それにしても多額のお金ばかりか、人によっては命まで奪われることになろうとは…。
 その意味で木嶋佳苗の今回の事件は、結婚相手すらもバーチャルなネットで探そうとする風潮に、一石を投ずることになったことは間違いないのかもしれません。  (以下次回につづく)  

 (大場光太郎・記)

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