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かなえの殺人レシピ(8)

 婚前旅行のはずが死出の旅にー大出嘉之さん中毒死事件

 今年8月6日東京都千代田区の会社員、大出嘉之(おおいで・よしゆき)さん(当時41)が、埼玉県富士見市内の駐車場に停めてあった車の中から遺体で発見されました。(発見は6日午前7時頃)。車は、大出さん自身がその前日レンタカー会社から借りたもので、その車中で大出さんは一酸化炭素中毒死していたのです。助手席には、七輪に入った燃え残りの練炭が残されました。また司法解剖の結果遺体から睡眠薬が検出されました。

 千葉県野田市の安藤建三さん焼死事件あたりから、警察内部で「どうも木嶋佳苗という女が怪しい」という極秘情報が上がっていたのでしょう。そんな中またも起きた不審死事件。練炭や睡眠薬を使う手口も、今年5月に起きた安藤さん焼死時と酷似しています。
 大出さん事件発覚後の埼玉県警の対応は素早いものでした。『本シリーズ(3)』で既報のとおり、佳苗に気づかれようがお構いなしの複数の捜査員による、24時間態勢の佳苗の「行動確認(尾行)」をスタートさせたのです。

 その過程における捜査や9月25日の逮捕後の佳苗の供述から明らかになった、大出さん中毒死事件の概要はー
 佳苗は睡眠薬を東京都板橋区内の診療所で、今年1月から9月にわたり計7回処方してもらっていました。ハルシオン、レンドルミン、デパスの3種類の睡眠薬でしたが、司法解剖の結果大出さんの体内から、佳苗が処方されていた3種類と同じ成分の睡眠薬が検出されたました。なお大出さんは、睡眠薬は普段まったく使用していませんでした。

 今となっては確かめようもありませんが、安藤さん、大出さんのみならず、千葉県野田市の福山定男さん、青梅市の寺田隆夫さんの不審死にも、「死亡導入」を容易にするために睡眠薬が使用された可能性が高いと思われます。
 また逮捕後押収された佳苗のパソコンを解析したところ、安藤さん、大出さんが死亡する前に、ネットで練炭を箱ごと大量に購入していた履歴が見つかりました。

 事件前の大出さんの行動と、事件前後の佳苗の行動が明らかになってきました。
 大出嘉之さんは木嶋佳苗と、「会員制婚活サイト」で知り合いました。大出さんは自身のブログを持っており、10日前の7月27日のブログでは、「ジュエリー売り場にしばらくいました。理由は秘密。クフフ…」と、結婚間近の嬉しさを抑えきれなかったような書き込みをしています。

 また亡くなる前日の8月5日のブログには、
 「実は41歳のトマちゃん(大出さんの愛称)は婚活中でしてwつか今日相手のご家族と会うのです。
 ここ最近ずっと相手と新居を探したり新生活のことを話し合っているんです。
 今夜から2泊3日で相手と婚前旅行に行きます。
 結婚したらしばらく模型は無理でしょうけど、パワーアップしていつか必ず復活しますよ」と記してありました。大出さんはネット仲間に知られた「模型マニア」だったようです。
 まさに「幸せの絶頂」をブログで仄めかした直後、最悪の事態を迎えてしまったわけです。埼玉県警は当初から、現場の状況そしてこのブログ内容からも「自殺」の可能性は極めて低いと判断していました。
 
 大出さんは死亡前日の8月5日レンタカーを借りて、佳苗が当時住んでいた板橋区内のマンションに迎えに行きました。家族には「旅行に出る」と言って、着替えなどの旅行道具を入れたカバンを持って。
 佳苗のマンションにやってきた大出さんを、佳苗は自慢の手料理でもてなしました。佳苗も「ビーフシチューを一緒に食べた」と供述しています。それを裏付けるように大出さんの胃から、ビーフシチューと思しき食べ物が摘出されています。またこの夜、大出さんは普段あまり飲まないというお酒も飲んだようで、体内からはアルコールの成分も検出されました。

 同夜午後9時過ぎ、佳苗は酩酊状態の大出さんをレンタカーに乗せ、埼玉県富士見市に向かったものと思われます。レンタカーのメーターの走行距離から、ほぼ一直線で向かったと推定されます。所要時間は約30分。
 佳苗は、遺体発見現場となった富士見市内の月極駐車場に同夜いたことを認めています。しかしその後は、「大出さんとケンカをして駐車場で別れた。(大出さんはそのショックで)自殺したのではないか」と、寺田隆夫さんの時とよく似た供述をしています。
 埼玉県警は、佳苗が同夜午後10時頃、現場の北東約300mの入浴施設からタクシーで帰宅したことを確認しています。  (「大出さんの項」次回につづく)

 (大場光太郎・記) 

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