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事業仕分けが終わって

 来年度予算編成における「事業仕分け」が終わりました。鳩山政権下で始まった同仕分け作業は前半後半2週間にわたりましたが、「予算のムダ」に斬り込むまったく新しい試みとして、終始国民有権者の高い関心を呼びました。

 「仕分け人」と呼ばれる政府関係者VS各省庁のお役人という対立図式。
 仕分けする側とされる側の役人たちが、一つ一つの予算案をめぐって「これはどうして必要なんですか?いらないんじゃありませんか?」「いえ、これはかくかくしかじかの理由で必要なんです」「どう考えても必要ないでしょ。止めましょう、今回は」というような丁々発止のやり取りが続き、「いる、いらない」が次々に判定されていく。そのプロセスを国民希望者が自由に傍聴も出来る。またネットでその映像を見ることも出来る。
 一部からは、「まるで公開処刑のようだ」という批判の声も挙がりました。それが的を得ているかはともかく。まったく画期的な仕分け作業となりました。

 同仕分け人は、時にかつての名時代劇ドラマをもじって“必殺仕分け人”と呼ばれもしました。その代表格が、民主党の蓮舫参議院議員であり、枝野幸男衆議院議員であり、菊田真紀子衆議院議員でした。特に蓮舫議員の、さしものお役人もたじたじの鋭い突っ込みが連日テレビなどで映し出され、多くの国民の注目を浴びました。
 一躍“時の人”となった蓮舫議員を簡単に紹介しますとー
 蓮舫(れんほう)は1967年(昭和42年)11月28日、台湾出身の父と日本人の母との間に東京で生まれました。青山学院大学法学部卒業後、グラビアアイドル、テレビ司会者などを経て、‘04年民主党からの誘いにより参議院議員となった異色の議員の一人です。テレビ朝日の深夜の名物番組『朝まで生テレビ』には、議員になる前からパネリストとして度々出演し、社民党の福島瑞穂や辻元清美らと共に舌鋒鋭い女性論客の一人として知られていました。

 さて事業仕分けについて、野党に転落した自民党幹部は「新政権のかっこうの攻め時」とばかりに、スタート直後「本来は大臣や副大臣がやるべきこと」「きちんと詰めないと政治ショーに終わる」「事業の優先順位をどう考えるか、削減理由をきちんと説明すべきだ」(石破茂政調会長)あるいは「わずか1時間で、事業の良い悪いを裁断するのはパフォーマンスにしか見えない」(大島理森幹事長)といった批判が相次ぎました。
 自民党幹部のネチネチした繰り言にも関わらず、国民有権者の7割以上は同仕分けを支持しました。そんな国民の意思を察知したのか、作業が前半を終了する頃には、「こりゃおもしろいわな。新鮮に映る。ヒットしている」「なんで自民党の時にああいうことをせなんだかなぁ。出来なかったのは正直言って、非常に残念だと思っていますよ」(谷川秀善参院幹事長)と一転ベタ褒めするやら、悔しがるやら。

 そもそも50年以上にも及ぶ自民党政権下では、予算編成過程など国民にとっては五里霧中不透明なまま、どこの省庁がどういう理由で各予算を上げてくるのか、何の説明もなく「はい。これが来年度の国家予算です」とある日突然総額のみニュースで知らされるだけ。今回それに初めてメスを入れて仕分けしただけで、目標の3兆円には遠く及ばぬものの1兆8千億円もの予算がカットされたのです。
 従来の旧自民党型の国家予算にはどれほどのムダがあったことか。それが今日、国、地方合わせて八百数十兆円という世界にも類を見ない財政赤字となって国民全員に重くのしかかってきているわけです。とにかく今回の仕分けによってその一端が垣間見えたわけで、これぞ「政権交代の意義」と言うべきです。
 政官癒着ズブズブの旧自民党政権では、このように予算編成のプロセスを透明化することなど、この先も出来っこなかったのです。『あなた方のおかげで国民一人一人が六百数十万円もの借金を背負わされているんです。元々出来なかったんだから、文句言わずに黙って見ていなさい』。自民党のお偉方にはそう言いたい気分です。

 行革担当相の仙谷由人は今回の仕分けの成功に気を良くして、「来年はゴールデンウィーク明けくらいから始めるか」と、来年度以降も仕分けを続けていくことを表明しました。
 しかしこの「事業仕分け」、手放しで評価してばかりもいられないようです。幾つかの重大な問題点も見えてきたからです。

 その一点は、事業仕分けは結局「財務官僚主導」なのではないだろうか?という疑問です。確かに同仕分けの席では、財務官僚が進行役をやっていました。「歳出カット」が至上命題の財務省が行司役となって、民主党を利用している図式と見えなくもありません。
 というのも「脱・官僚依存」とスローガンでは言ってみても、仕分け人である民主党議員にも予算の一々についてはよく分かっていないわけです。そのため蓮舫議員が科学技術開発予算をカットしようと、「どうして一番でなければならないんですか?二番じゃダメなんですか?」と鋭く斬り込んだのに対して、ノーベル賞受賞者たちが決起し「科学技術は日本の生命線である」旨の緊急会見は開くは、鳩山首相に面会を申し込むはで、首相もとうとう「我が国は今後とも技術立国を目指していく。その上で科学技術予算も必要である」と言わざるを得なくなりました。どの程度の依存なのかは不明としても、そのような現状では、財務官僚の手の上で踊らされるのもやむを得ない面があります。

 そして次は、各省庁が仕分け会場に持ち込んだ予算は本物か?という疑問もあります。最初からムダな事業を自分たちで選び出し、行政刷新会議に“お土産”として差し出した予算案だったのではないだろうか?そして本当に隠したい事業や身内にウマミのある予算は民主党政権には手をつけさせない…。結局は財務省のみならず「全官庁がグル」なのでは?という疑惑です。狡猾な官僚組織のこと、このような「予算隠し」が行われたとしても、決して不思議ではないのです。
 
 エコノミストの中からは、「仕分け人のメンバーの中には民主党が掲げる“国民の生活が第一”という理念に反する人たちが多くいる」という指摘もあります。例えば川本裕子、翁百合、高橋進、土居丈朗といったエコノミストや大学教授は、消費税引き上げ推進派だったり、小泉・竹中(デタラメ)路線の賛同者でもあるのです。
 また亀井静香金融担当相が噛みついたように、どうして日本の財務の仕分けに、モルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマン部長という外国人が入っているのか?このことも疑問です。肝心の「仕分け人」の人選、大いに問題がありそうです。

 国民有権者は、「劇場型事業仕分け」が面白いからと、ただ手放しで礼賛したり拍手喝采するだけではなく、このような諸問題も見据えて、来年度以降の事業仕分けを冷静にチェックしていく必要がありそうです。

 (大場光太郎・記)

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