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かなえの殺人レシピ(10)

 佳苗「殺人容疑」で立件へ

 ここのところ伝えられなかった木嶋佳苗被告(34)の動向でしたが、久しぶり新たな報道がありました。19日付け読売新聞朝刊によりますと、警察当局が佳苗と関わった東京都千代田区の会社員・大出嘉之さん(当時41)と、千葉県野田市の安藤建三さん(当時80)に対する殺人容疑で立件する方針を固めていることが分かったということです。

 木嶋佳苗は既報のとおり、「婚活サイト」を通じて知り合った男性4人に対する詐欺及び詐欺未遂罪で起訴されています。さらに埼玉県警は、18日「4度目の逮捕」に踏み切ったというのです。
 これは佳苗が今年7月、50代の男性から料理学校の学費名目で、百数十万円を騙し取ろうとした容疑によるものです。同男性は、「佳苗とは“婚活サイト”で知り合い、結婚を持ちかけられていた。自分も被害にあったのではないか」と相談してきたのだそうです。

 捜査関係者によりますと、佳苗は“婚活サイト”などで知り合った少なくとも20人の男性から、多額の現金を受け取るなどしていたといいます。このうち数人が、「佳苗と食事後に突然寝込んでしまった」「睡眠薬を飲まされたようだ」と話しています。寝ている間に、財布から現金を抜き取られたケースもあったようです。
 警察当局は大出さんと安藤さんの不審死は、これら複数の詐欺事件の延長線上にあるものと位置づけ、「殺人罪での立件」には犯行に類似性がある詐欺事件の解明が欠かせないとして、まず男性4人に対する詐欺や詐欺未遂で起訴し、今回は4度目の逮捕に踏み切ったものです。
 これら詐欺、同未遂事件の捜査を終え次第検察などとも協力し、来月にも殺人容疑で逮捕に踏み切る構えとみられています。

 2年前の‘07年8月の千葉県野田市のリサイクルショップ経営者・福山定男さん(当時70)と、今年2月4日の東京都青梅市の会社員・寺田隆夫さん(当時53)の不審死のケースでは、殺人罪での立件は不可能に近く、立件を断念したものとみられます。福山さんについては千葉県警が「病気による突然死」と判断、また寺田さんについても警視庁青梅署が「自殺」と判断。いずれの場合も、司法解剖や行政解剖なしで荼毘に付されました。今となっては物証らしきものは何一つないに等しく、断念せざるを得なかったのでしょう。
 このように両不審死とも、警察の「初動捜査の失敗」が最大の原因であることを改めて指摘しておきたいと思います。福山さん、寺田さんの不審死の際きちんと捜査していれば、今回立件見通しとなった安藤さん、大出さんの事件は阻止出来たはずなのです。

 さて本シリーズでもこれまで見てきたとおり、4人の不審死についていずれも佳苗被告の“クロ”は明らかだと思われます。
 しかし、その中でも詳細に分かっているはずの大出嘉之さんのケースを取ってみてもと、警察出身のジャーナリスト・黒田昭雄氏は言うのです。
 「状況証拠は揃っていますが、どれも殺人を裏付ける直接の証拠にはなり得ません。練炭や睡眠薬は偶然と言われればそれまでだし、仮に車内から拭き取られた指紋が見つかったとして、一緒にいたことの立証にしかならない。ただし、レンタカーの鍵が犯人の関係先から出てくれば別です。鍵を持ち去った人物は、車内に七輪や練炭があることを知りながら、施錠して立ち去ったことになる。殺意・殺害に結びつけることができます。自供によって、鍵の在かが引き出せればいいが、それ以外の証拠は決め手を欠きます」。(11月3日付け「日刊ゲンダイ」より)

 素人目には証拠だらけに見えますが、それらはすべて「状況証拠」にすぎないのであり、殺人に関する「直接証拠」ではないわけです。しかし今回警察は「立件」の方針を固めました。さて、立件してどうやって佳苗を殺人罪で有罪に持ち込むつもりなのでしょう?
 “確たる証拠”がなくても、状況証拠を積み重ねる手法を取るものとみられています。実はこの手法には前例があるのです。あの「和歌山県毒入りカレー事件」です。

 和歌山毒入りカレー事件は、今年4月最高裁が上告を棄却し、林眞須美被告(49)の死刑判決が確定しました。この事件では、同被告の犯行であることを示す直接証拠のないまま公判が維持された異例の裁判となりました。取り調べで林被告は一貫して完全黙秘したため自白は得られず、被告がカレーにヒ素を混入した目撃供述なども存在しませんでした。
 そのため検察は、被告の犯人性について数々の状況証拠を立証し、そこから推認するという手法を取ったのです。こうして同裁判は我が国の裁判史上、自白や直接証拠がなくても状況証拠を積み重ねることで有罪を立証できるという重要な判例となったのです。
 今回の木嶋佳苗による、安藤さん、大出さん不審死事件についても上記事件と同じような手法で公判を維持し、有罪に持ち込もうとしているとみられます。

 対して肝心の木嶋佳苗はどうなのか?やはり今もって、警察にとって「手ごわい強敵」であることに変わりはなさそうです。
 既報のとおり、佳苗は罪が軽い詐欺については、「はい、やりました。すみません」と頭を下げて罪を認めています。ところが“殺し”に話が及ぶと「知りません」の一点張り。しかも長期戦を見越して体力をつけるために出された食事をモリモリ食べ、さらにふくよかに(あけすけに言えば100㎏超のデブに)なっているといいます。
 並みの容疑者であれば、『自分が罪を認めてしまうのではないか』と怯えて、眠られぬ夜を過ごすものです。しかし佳苗に限ってはそんな心配はいらず、グースカピーピーと高イビキで眠っているそうです。  (以下次回につづく)

 (注記) 本記事は、直近の「YOMIURIONLINE」、11月20日付け「日刊ゲンダイ」、11月5日付け「東京スポーツ」を参考にしてまとめました。

 (大場光太郎・記)

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