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師走だより(1)

   裏道は風の道なり落葉焚(た)き   (拙句)

 きょう4日はきのうの雨とうって変わって、すっきりした晴れの一日となりました。青い空に時たま白い雲が浮いているだけの快晴といってよい天気です。西の大山の秀麗な姿もくっきりと見てとれます。
   烏啼(からす・な)きて 木に高く
   人は畑(はた)で 麦を踏む
   げに小春日の のどけしや
   かえり咲(ざき)の 花も見ゆ   (文部省唱歌『冬景色』2番)
 昔懐かしい歌が蘇ってきそうですが、「小春日」というには少し風が冷たいようです。この風は、太平洋の遥か北方洋上に発生した低気圧の影響で、そのため北海道から関東地方にまで冷たい風、つまり“北風”が吹きつけてきているためなのだそうです。

 最近は気象衛星からのデータ送信により、日本列島のみならず北極を中心としたユーラシア大陸、北米大陸など北半球全体の冬の予報天気図が示されることがあります。それによりますと現時点で日本列島は、寒気の帯から外れているようです。大寒気団は北極圏からシベリアや中国北部の大陸にずれて伸びているのです。
 それに今度は太平洋の南海上に、この季節には珍しい台風の名残りのような温帯低気圧もあり、それが日本列島への北の寒気団の侵入を阻止している按配のようです。そのため少なくとも年内またはここ何週間は、そう極端な寒さにはならないだろうとみられています。

 もう「木枯らし1号」は吹いたのでしょうか?今年は明らかに木枯らしを思わせるような強風は吹かずじまいだったように思うのですが…。
 ただ12月ともなると、桜並木などはおおむね葉を落とし黒々とした枝の向こうに、きょうの青い空が透けて見えるばかりです。そうして道の端などに吹き溜まった落葉が、風にあおられて舞い上がるさまは、何やら「滅び」の哀れを感じさせます。

 そういえば先月下旬、郷里の2軒の親戚から、ラ・フランスとリンゴがそれぞれ送られて来ました。年末恒例です。リンゴはともかく、ラ・フランスは意外とお思いかもしれませんが、共におらが郷里山形県南陽市の産なのです。
 もっとも私が子供時分は、ラ・フランスなどというシャレたものではなく「洋梨」でした。何となく“子だるま”のような少しユーモラスな形をした梨でした。しかし味は、ラ・フランスと少しも変わりなかったように我が舌は記憶しています。
 ちなみにうちの郷里は、ミカンやバナナやといった南方系の果物こそないものの、桜桃(さくらんぼ)、ブドウ、スイカなど果物類は豊富にありました。他に何も誇るものはありませんが、それら自然の恵みだけは他の地方に負けていなかったと思います。
 郷里では11月初旬文化の日を過ぎたあたり、一度雪が降ったそうです。今はもちろん消えていますが、例年よりも早い初雪で…。電話でそんな故郷の話を聞くことも、年末の贈答の楽しみです。

 午後3時前いつもの中津川堤に降りてみました。近頃居住地近くに246号に接続する道路が開通したため、最近では本厚木方面に行くのにその道を利用し、中津川沿いの裏道はすっかり通らなくなっていました。
 久しぶりで来てみると、中津川はもうすっかり冬ざれた景色です。10月初旬には少し下流の大堰の水門が開けられ、川は幅が10m以下に狭まり細く白々と流れています。東の中空の白い雲の塊りが水面(みなも)に冷え冷えと映っています。川から向こうは、干上がった中州が陸地のように広々と続いています。その砂地の部分に季節外れの青々とした草が生えて広がっていました。

 上流から流れ着いて中州の真ん中辺りで止まって、去年は緑の葉を繁らせていた流木も、今ではすっかり枯れ切っています。水に浸かっていない今は、西日を浴びて何やら悲しげな白い骸(むくろ)のような幹となって横たわっています。
 こちら岸にも中州の上流側にも向こう岸にも、もうすっかり枯れ果てた葦が連なっています。時折り吹きつのる北風にカサコソと音を立てながら揺れるばかり。天辺の穂波がことのほか大きく揺れています。
 時折り川向こうで、カラスの野太い鳴き声が聴かれるかと思えば、どこか知れない所から微かな小鳥のさえずりが聴かれることもあります。

 冒頭の句は、もう7、8年も前に作ったものです。中津川方面に向かう裏道の、今頃の風物を詠みました。ある曇りの午後、その道に車でさしかかると、その道を伝って上手(北)から煙がもくもく流れてきたのです。その辺は昔ながらの旧農家が立ち並んでいます。各屋敷内には樹木がいっぱい繁っており、この季節落葉の手入れも大変なことでしょう。
 だから私はその煙から咄嗟に「落葉焚き」を連想し、あまり苦労なく出来た一句です。これが数年前の「俳句の国三重“風の一句”」で佳作入選したのです。都合20句ほど応募し、私のお気に入りは実は別の句でした。しかし分からないもので、この句が選ばれたわけです。審査員にしてみると、「裏道を伝って流れる“落葉焚き”の煙がよく見える句だ」ということだったのでしょうか。
 なお毎年の「風」「水」「山」「音」「遊」などのテーマごと、角川学芸出版社から一冊の本として発行され、最優秀賞から佳作までの作品が収録されています。当ブログが忙しくなって、去年から応募できずにいます。

 (大場光太郎・記)

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