師走だより(2)
真夜更けのかの天狼(シリウス)の光濃し (拙句)
先日の『日々雑感(8)』記事などで取り上げましたとおり、今冬は例年のような西高東低の冬型の気圧配置にはなかなかなりにくい、したがってしばらくは暖冬傾向が続くことでしょう、などと悠長なことを述べました。
まさかその記事が「冬帝(とうてい)」の目に止まったわけでもないでしょうが(笑)、「ならば、これでどうじゃ !」と言わんばかりに、ここ2、3日にわかに日本列島全体に大寒波が襲いかかってきています。
北海道や東北はもとより、北陸、山陰など日本海側は言うに及ばず、広島県芸北地方など太平洋側、四国山地沿いなど四国西部地方、さらには九州北部から佐賀県にかけてまで、かなりの積雪に見舞われたもようです。
いったい急にどうしたことなのでしょう?私など素人にはよく分かりませんが、さすが気象予報士の中には先週末既に、今週後半から週末にかけてのこの寒波襲来をきっちり予報していた人もいたようです。とにかく今現在の列島周辺の気象図を見ますと、いつの間にか中国大陸には高気圧がデンと居座り、方や太平洋上には低気圧がこれまたデンと構えています。東西横綱級の両気圧に挟まれた格好の我が日本列島は、なるほど密に何本もの等圧線が南北に走っている典型的な冬型の様相です。これでは北極、シベリア圏からの大寒気団が列島に思うさま吹きつけられもするわけです。
某テレビ局の報道番組によりますと、17日早朝の北海道のある地域では、何と氷点下25℃にまで気温が下がったそうです。それがどれだけの寒さかと言いますと、リポーターが雪で覆われた外で防寒服を重ね着してリポートしていましたが、それでもなお立っているだけで震えがくる、体中が痛くなるほどの寒さだと言うのです。ためしにシャボン玉を膨らませてみますと、シャボン玉はあっという間にカチカチに凍りついてしまいます。また外で生卵を割ろうとするも、カチンカチンに凍っていて殻をむくことさえできません。屋外全体が天然の“冷凍庫”状態だと言うのです。
「寒い」とは言ってもたかが知れている関東地方在住の私などには、およそ想像すら出来ない“極寒地獄”のような感じなのではないでしょうか?
そう言えば思い出しました。私も18歳までの子供時代を、山形県南部の内陸部・置賜地方で過ごした経験があります。今年初めの『雪に埋もれし我が故郷』シリーズでご紹介しましたとおりの豪雪地帯です。一段と冷え込んでくる真冬の夕方など急に寒さが襲ってきて、外で遊んだりしていますと、むき出しの両耳がちぎれるほど痛くなります。まさか-25℃とまではいかなくても、とにかく氷点下であったことは間違いないと思われます。
そのため羨ましいことにお金持ちの子供などは、予め狐のふさふさした毛皮で作られたような市販の耳隠し(郷里では別の呼び方があったかと思いますが、忘れてしまいました)をしっかりつけていました。もっとも小学校時分に、顔の前面だけ出るようにして、頭から両耳、両頬がすっぽり隠れ、あごの下で両方から紐で結ぶ黒い色の“冬帽子(?)”を被って登校した記憶もあります。
山形といえば、夜某テレビ局で鶴岡市大網七五三掛地区内の積雪のようすを中継していました。同地区は今年2月頃から部落全域にわたって地すべりが起こっており、ひどい所では2~2.5mもの段差が生じ、とても住める状況ではなく集落全体が自主非難している地区だそうです。えてして災害は限界集落に集中しやすく、同地区も例外ではなかったようです。
そこにもってきてこの大雪です。50代の男性は、「今の雪質は湿ってっから、とても雪下ろしなど出来ね。今上さ登っと、つるんとすべっから」と、経験に則って話していました。事実同市内の70代の男性が屋根から転落して死亡したことを、同局では直前に伝えていました。
県では地すべりの原因を、地下25mの地層にある地下水が流れ込んだために起こったものとしています。とにかく地すべりと大雪のダブルパンチです。とんだ難儀なことと心よりご同情申し上げます。
また本日昼頃には、別のテレビ局が北陸富山湾岸での寒ぶり漁のもようを中継していました。日本海に面した富山湾沿岸一帯は、11月下旬から12月中旬にかけてぶりが湾内に回遊してくるので、“寒ぶり”のかき入れ時だというのです。そしてぶりの到来を知らせるように、同時に陸風が陸上から吹き込む強い南風となって、複雑な気候をもたらし、雷を伴った荒れ模様の天気となるのだそうです。
「冬の雷」とはこれまた面妖ですが、これが鳴るとぶりがよく獲れることから同地方では昔から、この時期の雷のことを「ぶりおこし(鰤起こし)」と呼び習わしているようです。そう言えば先月読んだ松本清張の『ゼロの焦点』にも、同小説は冬の北陸が舞台とあってぶりおこしのこともさり気なく描かれていました。
同地方ではまた新婚家庭の場合、新婦の実家から新郎の実家に獲れたての生きのいいぶりを贈る風習があるようです。一つには新郎の無事息災のためと、もう一つはぶりという“出世魚”にあやかって、新郎が仕事で活躍できるようにという願いを込めたものだそうです。
本18日当地(厚木市)は、雲は四辺の低い空にわずかに認められるばかり。抜けるような青空が広がる冬晴れの一日となりました。空がそんな具合ならば、街のようすもいつになくすっきり、くっきりと見えています。そのさまは、冬帝(冬将軍)に遣わされた無数の見えざる寒兵たちによって、邪気という邪気がきれいさっぱり祓われてしまったかのようです。しかしその分外に出ますと、ピューピュー吹きつける北風が余計身に沁みます。
関東南部はさすがに雪こそ降らないものの、列島の脊梁山脈を越えてきたカラカラに乾燥した冷たい空っ風(からっかぜ)が吹きつけて来るのです。
週間天気予報によりますと、この超冬型の気圧配置はあした土曜日くらいがピークかと。それでも来週火曜日の朝頃まではこの冬型が居座り、それ以降は徐々に寒さも緩んでいくでしょう、ということのようです。
本夕方日が沈んで少し後の大山の姿を見ました。西空の青い色が残る冴えた夕空を背景に、黒か紫かと見まごう常にも増して引き締まったその秀峰を仰ぎ見ることができました。大山の稜線がなだらかに降りていく左側の低い空には、佳人の美しい眉のような眉月(びづき)も認められました。
(大場光太郎・記)
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