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かなえの殺人レシピ(15)

 父親が突然の謎の死

 木嶋佳苗がオークション詐欺で逮捕されたのは‘03年3月、佳苗が28歳の時のことでした。その2年後今度は身内に不幸な事態が起こります。佳苗の父親が交通事故を起こして突然亡くなったのです。佳苗のみならず、一家全体の運命が大きく暗転していくきっかけのような出来事でした。

 父親が亡くなったのは‘05年8月。享年60歳。それはいささかミステリアスな死でした。
 地元住民の話によると、父親はある日突然行方不明になったというのです。そして数日後、標津(しべつ)町から羅臼(らうす)町に向かう国道335号から、崖下に転落している車の中で、遺体となって発見されたのです。現場は国後(くなしり)島が望める見通しのいい直線で、父親の乗っていた乗用車はガードレールを突き破り大破していたといいます。
 父親の知人は「出張で羅臼に行ってから連絡が取れなくなったと思ったら、“海岸沿いの道路わきから転落している主人の車が発見された”と奥さんが言っていた」と当時を振り返ります。遺書などはなく、現場の状況から警察は事故死として処理しました。

 しかし地元では違った見方をしていました。生前親交のあった人物は「慎重でまじめな性格だった。事故を起こすような無謀な運転をするとは思えない。ただ、亡くなる前いくつかの理由が重なって軽い“うつ状態”だった。自殺か事故かはっきりしていないが、それが関係しているのは間違いない」とはっきり「自殺」という言葉を出しています。
 自殺との見方が取りざたされたのには、ワケがありました。佳苗の父親は別海町でただ1人の行政書士でしたが、その父(佳苗の父方の祖父)は既に見てきたとおり、現在でも司法書士事務所を経営しかつて別海町議会議長を3期も務めたほどの名士です。先代から地元で名の通った人物だったにも関わらず、「葬儀の後で新聞に載ったのです。これは異例のことで、こちらでは死後すぐに“葬儀はいつ、どこで営まれる”との広告が出るのが通例ですからね。父親の葬式は生地である中標津の寺で営まれましたが、会葬者は70人ほど。あまり多くの人を集めたくない理由でもあったんじゃないかと勘ぐられ、そのため自殺説が広まったんです」(関係者)

 父親の死に、佳苗の詐欺事件が影響していたのでしょうか?「それもあったかもしれない」とある地元の人は言い、次のように続けます。「父親はしつけに厳しく、佳苗をよく大声で怒鳴りつけていたほどの人でした。いかに執行猶予で済んだとはいえ、佳苗が犯罪に手を染めたなどとなったら死を選んでも不思議ではない」。
 しかし中には別の見方をする人もいます。「子供たちが親元を離れて全員関東地方に出て以降、夫婦仲は疎遠になっていた。奥さんはご主人が亡くなる3年ほど前に家を出て、コンビニでバイトを始めています。ご主人は年老いた実父の事務所を手伝いながら司法書士の勉強をしていましたが、“なかなか資格を取れないので、親を楽にさせてやれない”と独りで悩んでいました。私はやはり、あれが事故死だったとは思えない」。

 父親の同業者の立場から言わせていただければ。父親には「司法書士事務所を引継がなければならない」という至上命題があったわけで、対世間的なことからも司法書士資格が取れなかったことの方がより深刻な悩みだったはずです。もし仮に“自殺”だったとしたら、佳苗の詐欺事件への悩みがあったにしても、私はそちらの理由だった可能性が高いように思われます。
 ただ大出嘉之さん中毒死以後、佳苗の徹底的「行動確認」を開始した埼玉県警では、捜査員がはるばる現場となった北海道羅臼町にまで足を運ばせています。「父親の死も木嶋周辺の不審死の一つなのか、その可能性を念のため調べたが、関連性は確認できなかった」とは捜査関係者の話です。

 ところで父親の死後、木嶋家の墓を東京に移しています。親戚筋の人は「子供たち4人全員東京に来ていたし、奥さんとは別居中だったこともあり、お墓を北海道から東京に移した」のだと言うのです。
 同家の墓は、台東区浅草の名刹・東本願寺境内にあります。父親の遺骨はこの墓に埋葬されたのです。墓所は0.3㎡、永代使用料は245万円。その他墓石代や納骨棺などを含めればざっと400万円は下らないと見られています。
 この墓の建立者の名義は佳苗の弟(長男)になっていますが、実際の購入者は佳苗だというのです。

 佳苗の友人は、「彼岸や命日にしょっちゅうお参りに行っているようでした」と話しています。また自宅の仏壇の父の位牌にも毎日手を合わせていたといいます。ある地元関係者は、「長女(佳苗)は性格や外見はかっぷくの良い父親に似ていた。お父さんの頭の良いところを継いだとは思うが、妹たちの方が母親似で体も細く外見的には可愛らしかった」と話しています。生前の父親は「パイプをくわえたダンディな風貌だった」と語る住民もいます。
 ただ一人父親似の佳苗は、取分け「父親っ子」もっと言えば「エレクトラコンプレックス(ファザーコンプレックス)」のようなものを心の奥深くに持っていたのかもしれません。中学時代からずっと年上の男性が好みで、援交相手ももっぱら中年男だったことを考えると、それは「秘められた父親愛」の代償行為だったと考えられなくもありません。

 ともかく。問題は佳苗がそんな大金をどうやって工面したのか?ということです。これはもう言わずと知れたこと。「詐欺」によって得た金の一部を充てたとしか考えようがないわけです。多分時期から見て、千葉県松戸市の福山定男さんに騙(かた)りまくって詐取した大金の一部だったものと思われます。
 そんな汚れた金で購入した立派な墓に埋葬してもらっても…。果たして父親はどんな心地でその下に眠っているのでしょうか?  (以下次回につづく)

 (大場光太郎・記)

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