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薬物汚染の拡がりを憂う(34)

 押尾学ら3容疑者の近況など

 7日夕方横浜市内で逮捕された押尾学容疑者(31)は、8日未明身柄を麻布警察署から東京湾岸署に移されました。東京湾岸署といえばかつて酒井法子が拘置されていた署です。7日同時に逮捕された、押尾に事件2日前の7月31日MADAを渡した容疑の泉田勇介容疑者(31)と、変死した田中香織さん(当時30)の携帯電話を六本木ヒルズの植込みに隠した証拠隠滅の疑いの遠藤亮平容疑者(28)も、それぞれ別の署に移されました。

 繰り返しますが、警視庁捜査1課が捜査する事件は「殺人、傷害致死、強盗、強姦」といったいわゆる“凶悪犯”を専門とする部署です。通常の薬物事犯であれば、前回の押尾がそうであったように組対(組織犯罪対策)5課で十分なわけです。それをわざわざ捜査1課が引き継いだところに、今回何としても押尾学を「保護責任者遺棄罪」さらには「保護責任者遺棄致死罪」に持っていこうとする、警視庁の並々ならぬ意欲が感じられます。

 そのため変死した田中さんに、体に害になるものを与えた張本人が押尾容疑者であることを立件するために、事件後密室にいた3人の同時逮捕としたのでした。この事件は物的証拠というよりも、MADAを「渡した」「渡された」という証言、供述などの「人的証拠」が非常に重要となります。
 そのため逮捕状は通常有効期限が1週間ですが、それを4日に準備しておいて当時行方不明であった泉田勇介の居場所を突き止め次第同時逮捕という、3人の「役者」が揃うタイミングを見定めていたと見られます。3人一緒に取調べを開始する必要があったのです。

 3人ともそれぞれの容疑を否認しているもようです。元エイベックス社員の遠藤亮平は携帯を捨てた実行行為は認めているものの、証拠隠滅の意図については否認しています。特に重要なのは押尾と泉田の供述ですが、両者が否認し続ける中捜査関係者によると、押尾と泉田との2人の間には、薬物の譲渡をうかがわせるようなメールのやり取りがあったといいます。また事件のあった8月2日、六本木ヒルズレジデンスに両容疑者が入っていく姿が、同マンションの防犯カメラに映し出されていたといいます。さらにここにきて、事件以前複数の男女が押尾からMADAの服用を勧められ、体に変調をきたした女性もいたことが明らかになりました。ということは、押尾は以前からMADAを常用しており、その危険性を十分認識していたことになります。
 捜査1課は9日、押尾ら3人をそれぞれの容疑について東京地検に送検し、また東京地裁は3人の拘置期間を18日までの10日間と決定しました。

 ところで捜査1課が押尾学を「保護責任者遺棄」で立件する場合、押尾が田中さんにMADAを渡したことになると、同容疑者の田中さんに対して保護すべき義務の度合いが高まることになります。これを「先行行為者の作為義務」と言い、同容疑者は田中さんを積極的に助けなければならなかったということになります。
 前回の麻薬取締法違反(使用)罪での押尾に対する判決は、「懲役1年6月、執行猶予5年」でした。それでは保護責任者遺棄まで視野に入れた今回の場合はどうなるのでしょう?板倉宏日大名誉教授は以下のような見解を述べています。
 「麻薬譲渡でも保護責任者遺棄でも、立件された場合には、前回確定した麻薬取締法違反(使用)罪と合わせて“併合罪”となる。保護責任者遺棄ならば実刑4年くらい、保護責任者遺棄致死まで行けば実刑8年ほどになるでしょう。“致死”まで行けないとも思いません。そこまで行ける可能性は60%ほどでしょう。」

 押尾は田中さんの容態急変直後、6人の知人に「ヤバイことになった」と電話していたといいます。そのうちの複数人から「救急車を呼べ」と忠告されていたことが8日分かりました。結局押尾は自分では通報せず、約3時間後の午後9時頃119番したのは現場に駆けつけた知人でした。
 そもそも田中さんが当日、現場となった2307号室を訪ねるまでの間、押尾、泉田両容疑者はそばなどを食べ同室にいたといいます。(その後泉田は同室を離れたのか?)田中さんに異変が生じた午後6時過ぎ、泉田は再び同室に駆けつけたものとみられます。押尾は(泉田も一緒か?)田中さん異変後、B棟最上階の野口美佳が借りている4201号室に移動しました。

 そして(ヒルズ外の?)別の場所に移動し、さらにタクシーを使って数ヶ所に立ち寄ったものとみられています。その間警察から押尾の携帯に電話が入りましたがすぐには応答せず、翌3日午後1時前警視庁麻布署に一人で出頭したのでした。
 押尾が移動した場所の一つは錦糸町のラブホテルで、この時泉田も一緒でした。そこで押尾から「クスリを抜く方法はないか?」と尋ねられた泉田は、友人の元チーマー(元不良)に生理食塩水、解毒剤、ブドウ糖などが含まれている点滴セットを同ホテルに持ってくるよう依頼。やって来た元チーマー(と泉田本人か『週刊文春』や『FLASH』の取材でそう言っている)が押尾に点滴を施したとされています。なお『FLASH』(12月22日号)によれば、その時押尾は「田中さんに自分がMDMAを飲ませた」と重大なことを語ったそうです。

 今回重要な鍵を握る泉田勇介ですが、その素性は全く知られていませんでした。現時点で分かっていることはー。
 泉田は輸入衣料品のネット通信販売会社を経営していると称していますが、実際は非合法薬物を合法薬物として販売してきた<薬物売人>という見方が強いようです。何でもかつて泉田は有名バーのカリスマ店員で、デビュー前の(ということは“整形前”の)佐々木希の“元カレ”だったという噂もあるようです。佐々木希は前回記事で、押尾からMDMAを渡された「有名モデル」では?とネットの話題になっていることを紹介しました。
 押尾に泉田を紹介したのは元暴走族のヘットで、現在芸能プロを経営しているNという人物のようです。泉田の実質的稼ぎは“薬物”であり、押尾と手を組むことによって泉田は更なる利益を得ようとしたのかもしれません。そしてどうやら売人・泉田は単独でというより、組織ぐるみで動いていたのでは?ともみられています。
 今回の捜査によって、泉田の背後関係にどれだけ迫れるかにも注視していく必要がありそうです。

 (大場光太郎・記) 

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