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新しき年の始めの

                          大伴家持

  新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重け吉事
                 (万葉集第二十巻-4516)
  (読み)
  あらたしきとしのはじめのはつはるのきょうふるゆきのいやしけよごと
 …… * …… * …… * …… * …… * …… * …… * ……
《私の鑑賞ノート》
 大伴家持(おおとも の やかもち) 養老2年(718年)頃~延暦4年(785年)。奈良時代の政治家、歌人、三十六歌仙の一人。万葉集の編纂に関わる歌人として有名ながら、大伴氏は大和朝廷以来の武門の家柄であり、祖父安麻呂、父旅人(たびと)と同じく、政治家としても歴史に名を残している。延暦2年陸奥按察使持節征東将軍の職務のため陸奥(奥州)に赴任、延暦4年同地で没した。
 長歌、短歌など合計473首が万葉集に収められており、同集全歌の1割を越えている。このことから家持が万葉集の編纂に関わっていたと考えられている。 (フリー百科事典『ウィキペディア』より)

 万葉集のラストを飾るのが、大伴家持のこの歌です。新しい年を寿ぐ(ことほぐ)歌として、古来親しまれてきました。この歌は天平宝宇3年(759年)1月、因幡国国府で詠まれたもののようです。家持はその前年から国守(因幡守)として同地に赴任していたのです。家持42歳の時のことでした。

 「新しき」は現代読みでは「あたらしき」ですが、この歌では「あらたしき」ですから注意が必要です。また「重け」は「しけ」と読み、「重なれ」という意味になります。新しき年の始めのこの日、ちょうど雪が降って積もっているように、今年も吉事(よごと)が重なれよ、というような大意となります。
 そしてこの歌そのものが、「新しき」「年の始め」「初春」と寿ぎの言霊(ことたま)が重ねられています。家持は必ずしも意識していなかったかもしれませんが、それらの良き言霊が、降る雪のように積み重ねられているようです。

 この歌を詠んだ因幡国は現在の鳥取市にあたります。いわゆる山陰地方ですから、今現在でもそうなら当時もそこそこ雪が降る土地柄だったものと推測されます。
 万葉集の棹尾(とうび)を飾るに相応しく、目の当たりにしている雪の実景から、何の虚飾もない感じたままの新年の感懐が、そのまま歌となって迸(ほとばし)っているように思われます。
 
 この歌のように、今年はさまざまな分野で「吉事(グットニュース)」が聞かれる年であってもらいたいものです。

(大場光太郎・記)

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