中国、日本人死刑囚の刑執行
中国遼寧省大連で6日、麻薬密輸罪で死刑判決が確定していた赤野光信死刑囚(65)に対する刑が執行されたと、国営新華社通信が同省最高級人民法院(高裁に相当)の発表として伝えました。中国で日本人に対して死刑が執行されたのは、1972年の日中国交正常化以降初めてのことです。
赤野死刑囚は、2006年8月、約2,5㎏の覚せい剤を日本に密輸しようとした疑いで大連の空港で逮捕され、中国で裁判を受け死刑が確定していました。
今回の中国の死刑執行については、「薬物犯罪で死刑は厳しすぎる」という日本国内の声が圧倒的です。確かに日本での薬物事犯での最高刑は、覚せい剤を営利目的で密輸した場合でも「無期懲役」であり、死刑という極刑はありません。
しかしアムネイティによりますと、アジア地域では薬物に関連する犯罪で最高刑に「死刑」を設けている国は多いといいます。今回の中国をはじめタイ、マレーシア、シンガポールなど16ヶ国が、薬物犯罪の最高刑を「死刑」としており、今回の例のように自国民だけでなく外国人にも死刑が執行されるケースも少なくないようです。
日中外交的には、日本政府が中国側に「懸念」を伝えていたにも関わらず刑が執行されたことになります。「死刑問題で対日関係を大きく損なうことはない」という、一定の自信が中国側にあったのだろうという観測もあります。
ただ中国側は、6日の赤野死刑囚に続き8日にも日本人死刑囚3人の刑を執行する見通しで、日本政府は相次ぐ日本人への死刑執行が国民の対中感情に悪影響を及ぼしかねないとの危惧も抱いているようです。
3日に訪中した菅直人副総理兼財務相も、温家宝首相との会談でこの問題を取り上げ、「日本の基準からすると、罰則が厳しいという感覚を持つ日本人は多い」と指摘したといいます。これに対して温首相は、「覚せい剤密輸は重大な犯罪。(死刑は)法律に基づくものだ」と理解を求めたそうです。
今年は日中外交が活発で、5月以降上海万博のほか、温首相の訪日や鳩山首相の訪中が予定されています。そんな中中国側はこの問題で「日本側に理性的な対応を希望する」声明を発表すると共に、「日本国内の世論を細かく分析し、説明不足な点はすぐに補う」という対日配慮の姿勢も示しています。
一方の鳩山首相は刑の執行を受けた6日夕方の記者団の質問に、「日中関係にいろんな亀裂が入らないよう、出来る限り政府としても努力する。影響が出ないように国民にも冷静につとめてもらいたい」と述べました。死刑は厳しすぎるとの声があることについては、「それぞれの国にそれぞれの司法制度がある。判断に対して内政干渉になることを申し上げるべきではない」と明確な見解は避けたものの、世論への配慮からか「残念であると前から申し上げているとおりだ」とも付け加えました。
自身の慶大4年留年中(昭和42年3月)に起こした婦女暴行事件、また92年6月の愛人芸者「小はん」首絞め過失致死事件などの弱みを、CIAに握られていた小泉純一郎元総理は、毒を食らわば皿までで、アフガン、イラク侵攻追随、市場原理主義導入など、9・11を自作自演したブッシュのアメリカ様に卑屈なほど徹底した忠犬ポチ公ぶりでした。
しかし同時にアメリカ様のご威光を笠にきて、甚だ外交的バランス感覚を欠いていた小泉は、中国に対しては高飛車で、靖国参拝問題などでいらざる国家間トラブルを引き起こし、ために当時の日中関係は戦後最悪になりました。
小泉の跡目を継いだ、CIAエージェント岸信介の孫として本来は「親米反中」であるはずの安倍晋三元総理も、さすがにこれ以上日中関係が険悪になっては国益を大きく損なうと判断し、関係修復にこれ努めました。以後福田、麻生両総理も安倍の方針を踏襲し、今日の鳩山民主党政権に受け継がれています。
鳩山首相も小沢幹事長も、元は日中国交を回復させた田中角栄の経世会出身ですから、「親中」は何の違和感もないわけです。それのみか鳩山首相は、中国、韓国との事前の根回しがなかったのは拙速にすぎたとはいえ、歴代自民党首相の誰も唱えなかった「東アジア共同体構想」にまで踏み込んでいます。
それが今回都合4人もの日本人が一挙に死刑執行されるとなると、それでなくても民主党バッシングの機会を鵜の目鷹の目で狙っている新聞・テレビのこと。それに我が国メディアは根っからの「親米・親戦争屋」であるわけですから、この時をとらえて「中国の外国人への死刑執行は行き過ぎで、国際人道上問題だ」などとキャンペーンを張り、鳩山政権と中国政府との間にくさびを打ち込みかねません。
もしそうなったら国民世論がどう反応するかです。まさか小泉時代のような険悪なムードにはならないとは思いますが、国力が低下した分それに反比例するようにナショナリズムが高まっている昨今です。若干の懸念はされるところです。
また今回の中国の死刑は厳しすぎるものの、では我が日本はどうなのか?薬物事犯への取り締まりや処罰が大甘すぎて、今日では「薬物天国・ニッポン」になっているのではないでしょうか?
そのことについては、もう少し詳しく別の機会に述べてみたいと思います。
(大場光太郎・記)
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