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エントロピー増大の法則について

 物理学上の「エネルギー保存の法則」そして「エントロピー増大の法則」

 前回の『「パワー」か「フォース」か』記事中で、「エントロピー増大の法則」に触れました。今回はこの法則について、もう少し詳しく考えてみたいと思います。

 まず同法則の元になった「エントロピー」とは何か?ということについてです。
 エントロピー(entropy)は、ドイツの理論物理学者・クラウジウスが1865年に“熱力学”で導入した概念で、「エネルギー(energy)」の「en」と変化を意味するギリシャ語「tropy」の合成語で、クラウジウスによって命名されました。
 エントロピーは、物質や熱の拡散の程度を表すパラメーター(媒介変数、母数)で、また原子や分子の「でたらめさ」の尺度でもあります。
 今日では、エントロピーの概念は、熱力学や物理学の分野にとどまらず、情報理論や経済学、社会科学など広い分野で応用されています。

 次に問題の「エントロピー増大の法則」についてです。
 この法則は別名「熱力学第二法則」とも言われ、エネルギーの移動の方向とエネルギーに関する法則のことです。これをごく簡単に言ってしまえば、「すべての事物は、それを自然のままに放っておくと、そのエントロピーは増大し続け、外から故意に仕事を加えてやらない限り、そのエントロピーを減らすことはできない」ということです。
 そしてエントロピーの低い状態を「秩序ある状態」、エントロピーの高い状態を「無秩序な状態」と言うことができます。

 これをもっと分かりやすく言えば、エントロピー増大の法則とは、「自然(世界)は、常にエントロピーが“小さい→大きい”という方向に進む。すなわち、自然は“秩序→無秩序”という方向に進む」ということです。
 例えて言えば、「整理整頓された部屋は、そのまま自然に任せておくと(掃除もしないで放っぽっておくと)だんだん乱雑になる。勝手に整理整頓されることはあり得ない」ということです。

 はじめに見ましたとおり、この法則は元々は物理学上の法則です。しかしその分野だけにとどまり、私たちの日常生活と無縁な法則であったなら、その分野を志す人以外にはさほど意義のないものとなります。
 しかし上のたとえのように、ごく身近な日常生活にも応用できるところに、このエントロピー増大の法則の面白さがあります。

 そう言えば、私も高校の「物理」の授業で習った記憶があります。この法則が社会的な関心を集めたのは、高度経済成長に翳りが見え始め、エネルギー問題や環境問題がクローズアップされ出した、1980年代後半から90年代にかけてのことでした。『エントロピーの経済学』という本が当時出版され、話題となったようです。

 当時なぜそんなに関心を集めたのか?
 (もう一度繰り返しますが)物理学では、まず「ある物質系においては、あらゆる(最初と最後の)エネルギーの総和はいつも一定で、決して新しく創られたりまた消滅したりすることはない」(熱力学の第一法則 = エネルギー保存の法則)。しかし「外界との間にエネルギーを交換しない物質系では、その状態が変化するとき必ずエントロピーが増大する」(熱力学の第二法則 = エントロピー増大の法則)と定義しています。
 その言わんとするところは、「使用可能なエネルギーが失われる」「(反面)使用不可能なエネルギーが増える」、つまり「秩序の状態から無秩序の状態へ移行するのが自然の運命だ」ということです。そこでエントロピー増大の法則は、昨今の地球環境の汚染や、自然破壊を生み出した経済社会や、混乱に立ち至っている人間社会に対する警鐘を打ち鳴らす意味合いがあったわけです。

 確かにあのまま無反省に、熱帯雨林などの大規模伐採、石油や天然資源の採掘、核開発・核実験、巨大ダムの建設などの環境破壊を野放図に行っていたなら、私たちは今以上に深刻な地球滅亡の危機を迎えていたかもしれません。
 その後心ある企業、各自治体はこぞって「エコロジー」に取組み、CОPなど地球環境改善のための国際的枠組みもできました。これらの動きにこの法則がどれだけの役割を果てしたかは定かではないものの、一定の役割を果たしたことは間違いないようです。 (以下「続」につづく)

 (大場光太郎・記)

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