マスコミに屈した民主党
世論誘導によって一人の政治家を悪者に仕立て上げ、時の政権を崩壊させる。こんなイビツで強大な権力を削ぐには、「メディア改革」が絶対必要である。しかし「メディアすり寄り」「旧勢力屈服」菅政権にそれを期待するのは無理というものだろう。
旧自民党時代、日本には「四つの権力」が存在すると言われていました。第一の権力は政権与党としての自民党。第二の権力は霞ヶ関官僚群。第三の権力は財界。そして第四の権力こそがマスコミです。当時からマスコミは侮れぬ勢力として警戒されていたのです。
そしてこれらの権力は皆、植草一秀元早大教授言うところの「悪徳ペンタゴン」の一角を形成しているのです。悪徳ペンタゴンとは、「政、官、財、外、電」のことを言います。そのうちマスコミは「電」に該当します。政、官、財、電が「悪の五芒星(ペンタゴン)」の四辺を形成し、残る一辺の「外」のみ我が国に有形・無形の圧力を外から加え続けている米国勢力ということになります。さらに言えば国内四勢力は皆、米国勢力のコントロール下にあるのです。
この構図を私は「悪徳旧勢力」と呼んでいます。昨年の劇的な政権交代後、「第一の勢力」だった自民党は大敗し、50余年続いた一党独裁体制は終わりを告げました。また財界はもちろん今でも大きな影響力を日本社会に対して持ってはいますが、民主党中心の新政権がその要である経団連と距離を置いていることにより、以前ほどの権勢は振るえなくなっています。
残るは官僚機構とマスコミです。そしてこの二つは、年初以来の小沢一郎バッシング、鳩山政権バッシングに顕著なように、発足間もなく脆弱な「新政」に代わって、恐るべきモンスター化してきているのです。
官僚機構は高度経済成長時代を経てとてつもなく肥大化し、バブル崩壊以後の我が国にあって国全体の建て直しのための最大の阻害要因となっています。民主党中心の政権が掲げる諸改革のうち、「公務員改革」こそは日本再生のため避けて通れないものとなっています。
鳩山政権下で一定の評価を得た「事業仕分け」などは、同改革のほんの入り口にすぎません。公務員改革こそは、民主党中心政権における「アルファでありオメガ」と言えるほどの最重要課題です。
それだけにこの問題は別テーマとして述べるべきで、今回はこれ以上の深入りはしません。
問題は第四の権力と言われた「電」すなわち新聞・テレビなどのマスコミです。これが今や「政」「官」「財」を飛び越して「第一の権力」に躍り上がってきているようで憂慮の念を禁じ得ないのです。
東京地検特捜部という「官」の悪徳旧勢力仲間が仕掛けた小沢土地購入問題では、年初以来検察と二人三脚で悪意に満ちた土石流的報道に終始してきました。「公平」「中立」というジャーナリズムの基本などどこへやら、1月の産経新聞では「小沢一郎容疑者」と確信犯的報道をしたことに明らかなとおり、露骨な「推定有罪」報道を繰り広げたのです。
それにモロに影響されたのが、普段新聞・テレビしか情報源を持たない大多数の国民有権者です。「政治とカネ」をことさらあおる膨大量の虚偽報道により、「小沢一郎 = 悪人、犯罪者」という刷り込み(マインドコントロール)がなされていきました。
そのため世論調査のたびに、「小沢氏は幹事長を辞任すべき」が70~80%もの高数値に達し、小沢幹事長の辞任が既定事実化されていったのです。それと共に、小沢氏と運命共同体である鳩山前政権の支持率も下落、続落していくことになりました。
東京地検が先月2度目の「嫌疑不十分で不起訴」としてからは、「この問題ではもう十分な成果が得られたわい」とばかりに、今度は次のターゲットである普天間基地移設問題に論点を移し、鳩山政権の迷走ぶりをことさら強調し、沖縄県民、日本国民への大ネガティヴキャンペーンを展開しました。
また「政治とカネ」に代わって、小沢幹事長による「権力の二重構造」も非難し始めました。
何を言いたいのか?つまり鳩山政権は「マスコミによって潰された」のです。かつては「第四の権力」であったマスコミが、今や時の政権など簡単に吹き飛ばせるほどの「第一の権力」にのし上がってきたということの何よりの証明です。
これは「社会の木鐸」としてのジャーナリズムのあり方からして、異常な事態であることは明らかです。マスコミを本来の姿に戻すためには、既に3月29日の『暴走メディア歯止め改革案』記事で述べたようなメディア改革が絶対必要です。
具体的には記者クラブ制度や再販制度の見直し、電波オークションによる他業者参入の機会の確保、同じ資本が新聞、テレビなど複数メディアを所有する「クロスオーナーシップ」の規制などです。
メディア改革の一環として、今回鳩山・小沢を辞任に追い込んだ、メディア各社による世論調査のあり方も変えなければなりません。わずか千人から2千人のサンプリングだけで、1億人近い国民有権者の総意とみなす調査自体おかしなことです。それに各社調査では、メディアが望む結果に導くために対象者に誘導尋問的質問を投げかけもします。
マスコミ人が何かというと持ち出す「アメリカ」では、より公正を期すためメディア自体は世論調査を行わず、ギャロップ社のような専門の民間会社が実施するシステムです。また調査は2、3ヶ月に一度くらいなもので、我が国のように毎週末実施などはまさに狂気の沙汰と言うべきです。
マスコミが真正な報道機関に立ち返るためにも、これらのメディア改革は公務員改革同様早急に必要です。
しかし菅政権は「メディアの後押しを受けて」誕生した政権です。固まった内閣人事、党人事を見る限り、早くも「凌雲会内閣」とヤユされるほど、仙谷官房長官、枝野幹事長など重要ポストを前原グループ(凌雲会)が独占しています。そしてこの前原グループこそ、党の内部からマスコミと気脈を通じて鳩山政権を退陣に追い込んだ「クーデター」の中心グループであるのです。
さらに菅総理自身、長期政権の野望を持っていると見られています。するとなおのこと、世論(支持率)が何より大事、つまりは「マスコミとは喧嘩せず仲良く」と考えることでしょう。どう考えても、この政権は霞ヶ関改革同様「メディア改革」に本気で取り組むとは思えないのです。
こうして私たち国民は、いつまでも歪曲、捏造、偏向報道により、マスコミから好いように引きずり回され続けることになるのです。「すべては国民の“鏡”」ゆえ、致し方ないことながら…。
(大場光太郎・記)
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コメント
菅直人はシンガンスの釈放署名した男。そんな男許してはならない。
投稿: じろう | 2010年6月 8日 (火) 20時19分
じろう様 コメントありがとうございます。えっ?菅総理はかつて「シンガンス釈放」に署名したんですか?初耳です。もしそれが事実なら、由々しき問題です。一人の政治家も、さまざまな多面性、二面性があるということでしょう。ただ蜜月関係にある今は、マスコミはそんな事実を知っていたとしても当面は何も言わず、政権との関係にもしヒビが入るようなことが起こった時、この問題をすっぱ抜く可能性がありますね。
投稿: 時遊人 | 2010年6月 8日 (火) 21時41分