« 「脱官僚」から「親官僚」へ。菅総理の変節 | トップページ | ハイランドのメリイ »

“小枝”新旧幹事長会談

 -たった3分だけの会談。枝野新幹事長の屈辱的な完敗だったのではないか?-

 清新ならざる「クーデター」菅政権がスタートした翌日の9日午後、民主党内で注目すべき動きがありました。枝野氏と小沢氏の「新旧幹事長会談」が、国会内の民主党幹事長室で行われたのです。
 これは枝野氏が幹事長就任直後から、小沢氏に要請していたもので、小沢氏の調整がつかずこれまで実現しませんでした。それが小沢、枝野両氏と接点のある細野豪志幹事長代理が間を取り持つ形で、この日ようやく実現の運びとなったものです。

 小沢氏は4日の代表選が終わると共に、国会内と党本部それぞれの幹事長室でさっさと荷物をまとめ、その後東京元赤坂の個人事務所にこもりきり。枝野氏の就任が決まった7日の両院議員総会も「所用のため」欠席し、杳(よう)として動向がつかめませんでした。
 そのため「小沢外し」一色の党内では、「無役になった小沢氏の影響力は低下する一方だろう」「もう小沢一郎も終わりだろう」というような観測がしきりに流されていました。

 枝野氏との会見に向かうべく、国会内廊下を歩く小沢氏の姿が久しぶりにテレビに映し出されました。終始にこやかな笑顔で、いつにも増して余裕が感じられました。

 小沢氏は「日米対等、親中派」「国民生活重視主義」、対して枝野氏は「米国従属派」「市場原理主義」と、同じ民主党内でありながら対極に位置しています。それもあってか、一連の検察、マスコミが捏造した小沢氏の「政治とカネ」の問題で、枝野氏は小沢批判の急先鋒の一人でした。

 そんな因縁の枝野氏が、自分が権勢を誇っていた「幹事長」という要職を襲ったのです。小沢氏としては内心面白かろうはずがありません。しかしこの度の余裕の笑顔はどうしたことなのでしょう?
 やはり「民主党が参院選に勝つ」ことこそが至上命題、そのためあえて自ら身を引いた小沢氏です。やはり小沢氏側近の参院幹部の、「(枝野氏が幹事長になることによって)離れかけていた無党派層が戻ってくる。『参院選が終わるまでの枝野』ならいい人事だよ」というのは、小沢氏の見立てでもあるのでしょうか?

 会談は終始小沢ペースだったようです。小沢氏は、先に幹事長室で待っていた枝野氏ににこやかに歩み寄り、握手を求めながら「頑張ってください」と激励したといいます。そして参院選の候補者擁立について、「残った選挙区は沖縄だけだから、よろしく」と要請。枝野氏は「かしこまりました」と答えたということです。
 そしてたった3分で会談は終わったというのです。ジャーナリストの大谷昭宏氏は、「会談後の小沢氏の記者会見のほうが長かったんじゃないの?」と苦笑しながら、某報道番組でコメントしたほどです。

 枝野氏としては3分ではなく、出来れば30分ほどかけて、じっくり選挙対策や政治資金管理などを、前職の大幹事長から職務引継ぎしたかったのではないでしょうか?
 そしてかなりしこりを残した今回の造反劇の主要メンバーとして、小沢氏から禅譲を受けたことを党内外にアピールすることによって、幹事長としての自分の立場を正当化し、また磐石なものにしたいという思惑もあったものと思われます。

 しかし繰り返しますが、たった3分だけの会談です。これでは会談などと言えるようなものではなく、ホンの儀礼的な顔合わせのようなものでしかありません。これまでのいきさつから、『枝野は短命幹事長』と決めているらしい小沢氏としては、枝野氏の隠された意図などとうに読みきって、必要最小限の話をしてさっさと切り上げたのでしょう。
 「事業仕分け」で鳴らした枝野氏も、小沢氏にかかっては“子供幹事長”のようなものです。体よくあしらわれた格好です。これにはさしもの枝野氏も、だいぶこたえたのではないでしょうか?それが証拠に、枝野氏は普段の“口先男ぶり”はどこへやら、会談後追いかける記者団には無言のまま足早に歩き去り、この件で口を開いたのは夜になってからでした。

 枝野幸男の政治的スタンスは到底認めがたいものの、党内きっての政策通であることは間違いありません。頭目である前原誠司などよりずっと有能でしょう。このたびは「党務に就きたい」というかねてからの要望により、菅総理からいきなり幹事長という重責を任されました。奇しくも因縁の小沢氏が自民党幹事長に就いた(第1次海部内閣)のと同じ47歳という若さです。
 枝野氏が幹事長として、政治家として大成するにせよしないにせよ。検察、マスコミという「虎の威」を借りて、3分間会談の相手の小沢一郎を蹴落とした一人である。この悪名は、枝野氏の政治家人生に今後ついて回ることでしょう。

 対して小沢氏は、会談後早々と余裕で記者団の会見に応じました。その中で「私自身は一兵卒として当面、参院選の勝利に向け、できる範囲で微力を尽くしたい」「国民の信頼を回復して、いい結果が得られるように期待している」との心境を語りました。
 辞任直後岩手県連の会合に寄せた、「参院選後に先頭に立って頑張る」というような内容のビデオレターを受け、「すわっ。さては9月の代表選に小沢氏自身出馬する意向か !?」という憶測が流れています。同発言の趣旨を聞かれた小沢氏は、「一番後ろで頑張るわけにはいかんだろ。特別な意味はない」と煙に巻いていました。

 (大場光太郎・記)

|

« 「脱官僚」から「親官僚」へ。菅総理の変節 | トップページ | ハイランドのメリイ »

時事問題」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。