続・命の輝きを伝えたい
-岩野の「命の輝きを伝えたい」という想いは、小菅にどう伝わっていったか-
小菅正夫は岩野俊郎の誘いで、再び岩野が所属する北九州市の到津(いたるづ)遊園を訪れました。その時同遊園には、(当時で)40年の歴史を有する「林間学園」があることを知ります。
林間学園では、参加した子どもたちが、到津遊園内の動物や植物と深く触れ合うためのプログラムが組まれており、巧みに自然への興味を引き出すよう工夫がなされていたのです。
そもそも戦前に同遊園内での林間学園を始めたのは、久留島武彦(くるしま・たけひこ)という人でした。久留島武彦(1874年~1960年)は、鈴木三重吉が創刊した『赤い鳥』にも関わった児童文学者で、アンデルセンの復権を訴えたことが評価され、デンマーク人から「日本のアンデルセン」と呼ばれた人です。
久留島は子どもたちに、森の中で生き物が登場する独特な物語があることを知ってもらいながら、それによって豊かな情操を育んでもらいたいという願いを込めて、林間学園を始めたのでした。
当時林間学園を担当していたのが岩野俊郎でした。岩野は訪ねてきた小菅を、林間学園の舞台となる到津遊園の森に案内します。
そこには、子どもたちの関心を動植物に向けさせようと情熱的に指導する小菅の姿と、豊かな森の中で、多様な植物に触れたり動物たちを触ったりして、嬉々として歩き回っている子どもたちの姿がありました。
岩野は生の自然との触れ合いの中から、子どもたちにこの森の植物も動物も全部地球につながっているかけがえのないものなのだ、という「命の輝きを伝えたい」という想いをもって子どもたちと接していたのです。
到津遊園のそんな取組みを目の当たりにして、小菅は『こんな動物園もあったのか !』と驚きます。久留島以来の伝統を受け継ぐ岩野の姿から、小菅は「命の輝きを伝えたい」という無言のメッセージを受け取ります。
しかしこの時は、「動物たちを育てたい」ということばかりに目が向いていた小菅には、まだ岩野のその想いが本当には届いていなかったのです。
転機となったのは、1980年代から始まった「テーマパークブーム」でした。旭山動物園でもブームに取り残されまいと、最新の遊具を次々に導入し来園者の増加に腐心しました。確かに物珍しさも手伝って、一時的に人が集まったものの、飽きられるのもまた早く、やがて高額な遊具償却の問題だけが残る悪循環に陥ってしまいます。
その頃小菅は飼育係長になり、動物園全体の運営に携わるようになりました。そのため、小菅にとって旭川市との交渉が最大の仕事になっていきます。
市の担当者は、テーマパーク流行り(ばやり)の昨今「動物だけで人を集める時代は終わった」と言い放ち、なかなか小菅らが思うような予算をつけてくれようとはしません。遊具導入の失敗から、「動物園の主役は動物であるべきだ」と改めて再認識した小菅は、そんな市の対応に業を煮やして怒鳴ることも何度かあったと言います。
そういう経験を通して、小菅は「動物園とは何なのか?」という切実なテーマと真剣に向き合うことになっていきます。そして小菅はある時ハタッと思い当たったのです。
『今までオレはお客さんのことを考えず、動物だけを見ていた』。確かに小菅は、これまでは野生動物を守ることに命を賭けてきました。一飼育係としてはむしろ十分過ぎる貢献と言うべきです。しかし園全体の運営を視野に入れた場合、世間が旭山動物園を認めてくれてより多くの人が来園してくれなければ、動物園を維持していくことすらできなくなるのです。
その時「命の輝きを伝えたい」と、林間学園活動に情熱を燃やす岩野の姿が甦ってきます。『そうだ、人々に“命の輝き”を伝えることは、実は動物たちの保護にもつながっているのだ』。その時初めて、岩野俊郎が小菅に伝えたかったのは「これだったんだ !」と気づいたのです。
そしてその「気づき」こそが、その後の動物園存続の危機を乗り越えさせ、今日では年間200万人もの人たちが訪れる日本有数の動物園へと、旭山動物園を押し上げる原動力となっていったのです。 (以下「続々」につづく)
(大場光太郎・記)
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