広島平和式典に思うこと
-「核なき世界」の盛り上がりを後戻りさせるな。菅総理、岡田外相にはがっかり-
今年で65回目となった6日の広島原爆の日は、大きな節目の平和式典となりました。広島市中区の平和記念公園で午前8時から始まった平和記念式には、5万5千人が参列し、藩基文(ハン・ギムン)氏が国連事務総長として初めて参列。また原爆を投下した米国の代表として初めてルース駐日大使が参列。そして核保有国であるイギリス、フランス、ロシアの代表も参列。史上最多となる74ヵ国の代表が式典に参加。
その意味ではこれまでにない、国際的に注目すべき式典となりました。
これはオバマ米大統領の 、昨年4月のプラハでの「核なき世界」演説の効果が、徐々に全世界に着実に浸透している結果と見るべきで、大変歓迎すべき兆候です。この平和のうねりを決して絶やすことなく、秋葉忠利広島市長が世界中に呼びかけているように、2020年に全面的な「核廃絶」が実現できるよう、特に米ロを中心とした核保有国は今後とも具体的削減を図っていくべきです。
しかしその実現にはさまざまな困難が予想されます。オバマ演説以来核軍縮の機運は盛り上がりを見せつつも、世界の核兵器の約95%を現に保有している米ロ両国で、戦略核の削減は進展しながら、戦術核削減はまったく進んでいないのです。
また今回の平和式典には、中国代表が参列していません。一酸化炭素削減交渉のように、こちらの核軍縮でも米ロが削減にあい努めている間に、中国は「ウチは核後進国なんだから」とばかりにせっせと核開発を進められてしまっては、相対的に中国の核の脅威が増大することになりかねません。
その他第二次世界大戦の戦勝5か国の核保有とは別に、イスラエル、インド、パキスタンなども既に核を保有していることは公然の秘密です。これらの国はいずれも複雑な隣国関係を抱えています。これらの国にどうやって廃絶を促していくのか、特に世界一の“ならず者国家”であるイスラエルが、それに「ハイ、分かりました」と素直に応じるのか、大変難しい問題をはらんでいます。
それ以外にも、北朝鮮やイランの核開発という厄介な問題もあります。また旧ソ連崩壊前後に、小型核がテロリスト集団の手に相当数渡っているのではないか?とも懸念されています。
今回のルース米駐日大使の初参列は、オバマ大統領の強い意向を受けて実現したものだそうです。しかしルース大使は参列中終始硬い表情を崩さず、式典終了後は何も語ることなく会場を後にしました。
ルース大使の参列に対して、肝心の米国内から相当の反発があるようなのです。例えば、広島に原爆を投下したエノラ・ゲイのパイロットの子息は、「大使の参列はとうてい理解できない。米国は対外的に弱みを見せるべきではない」というようなコメントをしているようです。
第一米国には、依然「広島への原爆投下が戦争終結を早めたのだ」、したがってそれは正当な戦争行為だったのだ、という主張が根強くあるのです。
米国民にそういう世論が多くある以上、いくら広島市民が「せっかくルース大使が来たのだから、“謝罪の言葉”を口にしてほしかった」と望んでも、それは無理な注文と言うべきです。
経済対策のつまずきなどで、現状ではオバマ大統領の2期目はないと見られています。ということは「核なき世界」に向けた世界的機運も、後2、3年後はどうなっているか分からないということです。
元々共和党はおおむね、産軍学複合体=戦争屋=ロックフェラーユダヤ系だと見られています。近現代の米国史を見れば明らかなとおり、米国は自国の経済的悪化などの打開のために、「10年に一度は」大きな戦争を起こさざるを得ない国なのです。
そのためには「9・11」の自作自演でもどんな謀略でも、イラク戦争のように「大義なき戦争」でも平気でやる国です。例えば次にブッシュ前大統領のように、ネオコンに牛耳られるような共和党政権になったらどうでしょう?
おそらくまた世界の雰囲気は、「核なき世界」などどこかに吹き飛んで、好戦的気分や重苦しい対テロ戦争が世界を領することでしょう。
そんな「世界の警察」「一国支配」としての米国は、もう真っ平ごめんです。
なのに折角歴史的意義のある式典に参加した、おらが国の菅総理、岡田外相はどうだったのか?秋葉広島市長が平和宣言で、「我が国は米国の“核の傘”からの離脱を目指すべきだ」と政府に要求したのに対して、式典後の記者会見で菅総理は「近隣諸国の現状を考慮すれば、“核の傘”は必要だ」と発言したのです。岡田外相も似たり寄ったりの発言をしています。
「はあっ?何だよそれ」ではないでしょうか?菅総理は式典挨拶では、「唯一の被爆国である我が国には、“核なき世界”の実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任がある」と美しい言葉を述べたばかりです。なのに舌の根も乾かないうちに、恐るべき二枚舌、ダブルスタンダード、建前と本音の使い分け、総論賛成各論反対…の最たるものではないでしょうか?
野党時代は、菅直人も岡田克也も高く評価していた私は、これ一つ取ってみても彼らには本当に裏切られた感を深くします。
もうこんな連中は頼りにできません。経済的には国民各自がしっかり自己防衛。平和の問題では、これも政府など当てにせず「草の根ネット平和運動」。これで行くしかないようです。
(大場光太郎・記)
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