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日韓併合100年首相談話

 -「首相談話」によって歴史に名を残すつもりが各方面に波紋を広げているらしい-

 菅直人首相は10日、今月29日に控えた「日韓併合100年」にあたり首相談話を発表しました。過去の朝鮮半島の植民地支配に関し、「多大の損害と苦痛に対し、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを」表明し、李氏王朝時代の儀典書「朝鮮王室儀軌(ぎき)」など朝鮮半島由来の図書を韓国に「お渡ししたい」と明言しました。
 首相談話は、戦後50周年の「村山談話」(平成7年8月)、戦後60周年の「小泉談話」(平成17年8月)などがあります。両談話のお詫びの対象は「アジア諸国の人々」でしたが、今回は韓国のみを対象としています。

 同談話に対して肝心の韓国はおおむね好意的ではあるものの、必ずしも「歓迎ムード一色」ということでもないようです。韓国政府論評(外交通商省スポークスマン)に「歓迎」の言葉はなく、単に「注目」し今後の両国関係の発展を「希望する」としているにすぎません。ただ旧朝鮮王室の図書返還についてだけは「評価」するとしています。
 また韓国マスコミも、日本政府が依然、日韓併合条約そのものの無効、不法を認めず、過去補償も不十分だとし、過去清算は「未完」で「期待に及ばない」と相変わらず批判的な論評です。

 同談話には中国も敏感に反応し、11日中国各紙では「植民地支配や侵略を受けたのは韓国だけにとどまらない」「お詫びをしなければならないのは韓国だけではない」として、「北朝鮮のほか中国、東南アジア諸国も同様に日本帝国主義の苦しみを味わった」と指摘し、「日本は中国にも謝罪してくれるのか」と問題提起しています。
 ただ中国各紙は同時に、「民主党政権下で脱右傾化している」「菅内閣の全閣僚が終戦記念日に靖国参拝しない」ことも伝えています。

 国内では、社民党や公明党が同談話に対して一定の評価をしました。それに対して自民党は10日夕に外交部会を緊急開催し、「菅政権になって土下座外交が目立つ」「台湾やパラオなどにも(謝罪談話を)出さなければならなくなる。北朝鮮にも謝罪するのか」「拙速よりも拙劣だ」というような批判が相次ぎました。

 今年NHK総合では「日韓併合特集」を何回かで放映しています。私は2回ほどしか見ていませんが、いかに戦前の同併合について何も知らなかったかと痛感させられました。従軍慰安婦の問題はもとより、創氏改姓、日本語教育、皇民化政策、朝鮮各地への神社創建、同参拝強要などなど。
 当時の列強諸国とのパワーゲームで起こったこととは言え、当時の日本が朝鮮半島で行ったことのプラスとマイナスを天秤にかけた場合、確かに後世の今日「謝罪談話」を出さざるを得ないものがあると思われます。
 ですから菅政権については一貫して否定的な私も、同談話は一定の評価をすべきものと考えます。

 ただ国内外から批判が多いことにおじ気づいたか、菅首相も仙谷官房長官も先の消費税増税の時のように、またぞろ逃げ腰の発言に終始しているようです。この場合菅首相らの念頭にあったのは、やはり9月14日の党代表選のことでしょう。少し支持率が回復した今、さらに支持率アップを図り、菅代表再選に向けた流れを少しでも優位なものにしたいという思惑があったものと思われます。
 動機が不純な上、例によって党内外への根回し不十分で唐突なため、自民党に付け入るスキを与え、また民主党内にも異論が出ているのです。玄葉光一郎や野田佳彦など「対米隷属」閣僚からは、「聞いてないよ」とイチャモンをつけられる始末です。

 そのことについて政治評論家の浅川博忠氏が、12日付「日刊ゲンダイ」で鮮やかな分析をしています。
 「首相談話は国家ビジョンに関わる問題ですから、普通なら、弱体化した内閣が押し切るべきものではない。実は金賢姫の来日とバーターではないかと勘ぐる向きもあります。しかし、金賢姫来日の成果はゼロ。揚げ句に今回の談話は、自民党など野党に攻撃材料を与えるだけでなく、与党内からも批判が噴出する始末。民主党には右から左まで、さまざまな価値観の持ち主がいるのだから、こういう問題では党内の根回しが必須です。消費税問題と同じで、そういう基本的なことができていない。菅首相は、もともと外交には強くないといわれますが、またしても政治オンチぶりを露呈してしまいました」。

 また同じく政治評論家の有馬晴海氏は、「この問題は代表選に影響してきますよ。95年の村山談話、05年の小泉談話に続く10年の菅談話で歴史に名を残したかったのかもしれませんが、結果的にマイナスが大きすぎた」と述べています。
 代表選再選に向けて、社会党出身の「阿波狸」官房長官あたりが知恵をつけたのでしょう。しかしまたしてもオウンゴール気味、自ら火種をまく結果となりそうな気配です。

 (大場光太郎・記)

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