« 狂王の城 | トップページ | 押尾裁判判決下る »

菅改造内閣の危うい船出

 - 命名するなら「こりゃアカン(唖菅)内閣」。唯一目立つのは「脱小沢」のみ -

 17日菅改造内閣がスタートしました。6月に政権が発足して3ヶ月余、先の菅内閣はあまりにも失点が目立ちましたので、今度はさてどんな布陣で臨むのか?と興味津々で見ていました。がしかし、出揃った閣僚の顔ぶれは、まず第一に今代表選の論功行賞が最優先、また新閣僚になったメンバーも主に当選7期という年功序列で新鮮味に欠ける地味な人事といえます。

 そんな中気になったのは、やはり「脱小沢」色が今回も鮮明になったことです。あるテレビキャスターは、「この布陣では“脱小沢”というようなものではなく“嫌小沢”だ」と述べていました。「挙党一致」「412人内閣」「ノーサイド」などと口では言いながら、いざフタをあけてみればそれらの言葉とはまるで違うことを平気でやるわけですから。
 二重人格というのか、二枚舌というのか、詐欺師なのか、それとも年で単なる健忘症(だとしたら一国のトップリーダーはとても務まらない)なのか。

 そんな菅総理は組閣後の記者会見で、「政権交代後1年間の試行錯誤を経て、いよいよ有言実行の段階に入った」として、今度の内閣は「有言実行内閣だ」と胸を張って見せました。スタートの人事で早くも前言を翻しておきながら「よく言うよ」ではないでしょうか? こんな総理の言うことを真に受ける国民有権者がもしいるのなら、よっぽどおめでたい人たちです。(しかし今週末世論調査では、おそらく70%台の高い内閣支持率を与えることでしょう。)

 それにしても菅総理、記者会見のテレビ画像などを見ても、相(そう)が良くありませんね。目に力がありませんし、とにかく精彩に欠け、トップリーダーとしての輝きやオーラがまるで感じられません。
 一国の宰相たるもの、たとえ一身に背負っているものがどんなに重かろうが、それを顔に表して『重いんです、苦しいんです。どうか分かってください』などと国民の同情を引こうとしてはいけません。そんなプレッシャーなど全部はね除けて、その姿を一目見、一言言葉を聞いただけで国民が勇気、元気が与えられ、「よし、俺も一緒に頑張るぞ !」と明日への希望、活力が湧いてくるような指導者でなければねぇ。

 内閣総理大臣に力量がなければ、例えば片山善博という民間人(前鳥取県知事)を総務大臣に当てて、小沢氏の政策パクリの「地方分権」を推進しようとしても、中途挫折に終わるのが目に見えています。また馬淵澄夫新国交相の力量は、パフォーマンス先行の前原誠司より優れているのは認めるとしても、思う存分本領発揮とはいかなくなります。
 この難局に総理大臣を務めるのは、余程の大器量人でなければならないのです。

 閣僚の顔ぶれがそうなら、党人事でも「脱小沢」「嫌小沢」が鮮明です。閣僚人事に先行した幹事長人事は特に難航しました。幹事長と言えば党代表に次いでナンバー2のポストで、党の資金、選挙の公認権を一手に掌握できる最重要ポストです。これに就いてそこそこの実績を挙げれば、次の党代表、総理の座も狙えます。
 本来なら仙谷、前原、野田らが「我も我も」と名乗り出てもおかしくありません。しかし今回は誰も買って出ようとしなかったのです。こんなことは戦後政治史上かつてなかった事態なのではないでしょうか?

 岡田氏、川端氏、北澤氏に話を持ちかけても難色を示され、結局は振り出しに戻って最初の岡田克也前外相が、行きがかり上しぶしぶやっと受諾したのです。2番目に話を受けた中間派の川端前文科相は、「さんざん亀裂を入れておいて、今さら人に後始末を押し付けるなよ」と親しい議員に吐き捨てて就任を断ったそうです。
 もしこれ以上難航するようだったら、私は『菅が総理と幹事長掛け持ちだな』とか、『亀裂を生んだ張本人の仙谷にやらせてみろよ』と勝手に思っていました。

 岡田克也は果たして幹事長が務まるのでしょうか?まず党内の各種調整役をこなさなければなりません。そこに立ちふさがるのが、前回のデジャヴュの「嫌小沢」でまたも冷や飯ぐらいとなってしまった小沢直系議員です。
 岡田氏は代表選前、「検察審査会で起訴されるかも分からない人が首相になることに、私は違和感を覚えます」と発言しました。最終審で有罪となるまでは「推定無罪」が大原則であることをこの者は知らないのか?同氏が卒業した東大法学部はそんなにレベルが低かったのか?と疑ってしまいました。
 とにかくこの発言で小沢派は、「仙谷と岡田は絶対許さない」と息巻いたそうです。岡田幹事長、さあ党内融和をどう図っていくのでしょうか?お手並み拝見です。

 それに負けず劣らず難しいのが「衆参ねじれ」下の与野党協議です。これが難航するようだと、重要法案が一本も通らず菅内閣は立ち往生です。海千山千の各野党幹部との粘り強い根回しや協議で、果たして辣腕、敏腕を振るえるのか?融通の利かない「原理主義者」がどれだけ泥をかぶられるのか?これも見ものです。

 岡田氏はほぼ1年の外務大臣としての仕事ぶりで、早くも底が割れてしまいました。最も顕著なのが普天間問題で、早々と外務省と米国政府高官に取り込まれ、「出来れば国外、最低でも県外」を模索する鳩山前首相に対して、昨年の早い段階既に「辺野古沖しかありませんよ」と、いち早く「対米隷属派」に宗旨替えしてしまったのです。
 イオングループ創業者の次男、東大法卒、通産省官僚出身。結局岡田克也も“お坊ちゃま”、この程度の政治家だったということです。

 内閣の要は仙谷由人、党の要は岡田克也。これではまるで小沢派への「喧嘩吹っかけ」布陣なのではないでしょうか?これを決めた菅直人や仙谷由人は、政治家として本当に了見が狭く視野狭窄だと思います。
 国内の状況、国外の状況、まるで国難的な非常時。かつての出口王仁三郎の言ではないけれど、今こそ「一等星のような宰相」でないと乗り越えられないのです。本当は挙党一致どころか、「挙国一致」体制で難局に当たるべき時です。なのにこんな小粒な二等星、三等星どもに政治を壟断(ろうだん)させておいていいものでしょうか?いずれ高支持率を与えた国民有権者に、モロにはね返ってくることを覚悟しておくべきです。

 (大場光太郎・記)

|

« 狂王の城 | トップページ | 押尾裁判判決下る »

時事問題」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。