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検察全体の「組織犯罪」?

 -大阪地検の組織的犯罪。検察全体が罪に問われるべきなのでは?-

 郵便不正事件を巡る証拠資料のフロッピーディスク(FD)改ざんに関する犯人隠避事件で、最高検は1日、大阪地検前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐野元明(49)両容疑者を逮捕しました。
 当初は同特捜部主任検事・前田恒彦(41)単独によるFD改ざんかとみられていましたが、ここにきてその事実を特捜部全体で隠蔽を図った組織犯罪であったことが明らかになってきました。

 大坪、佐野の両名は今年1月下旬から2月上旬にかけて、前田恒彦主任検事(43)の改ざん事実を過失に見せかけるよう指示したとみられています。
 大坪、佐野両容疑者は、残されている業務日誌などを盾に容疑事実を否認しているもようです。しかし最高検は既に、両容疑者が前田主任検事に出すよう指示した元の「上申書」を前田容疑者のパソコンのデータから復元しているといいます。最高検はこれを、大坪容疑者による改ざんの隠蔽を裏づける物証とみて重視しています。

 大阪地検特捜部のトップ2人が逮捕されただけで、前代未聞の由々しき事態です。今回の事件で、検察官適格審査会に10人の検事の審査を申し立てている、三井環元大阪高検公安部長は、以下のようなことを述べています。(9月4日付『日刊ゲンダイ』3面)
 
 - 問題となった郵便不正事件では、村木局長という高級官僚の犯罪があったかどうかを裁くものだった。こういうケースではまず、大阪地検の検事正室に小林検事正、玉井次席検事、大坪特捜部長、佐賀副部長、前田主任検事、他の特捜検事らが集まり、捜査資料と証拠に基づき捜査経過を説明、逮捕すべきか否かをあらゆる角度から検討する。
 この結論を踏まえて、小林検事正は大阪高検の中尾検事長に事前協議資料を送付する。これを受けて、大阪高検では斉藤刑事部長室に刑事部の全検事と地検の前田主任検事、大坪特捜部長らが集まり、もう一度協議する。
 ここでもゴーサインが出ると、中尾検事長名で樋渡検事総長に事前協議資料が送付される。検事総長室で樋渡検事総長、伊藤次長検事、鈴木刑事部長らが協議を行い、最終結論を出す。(肩書きはいずれも当時)-

 これを「検察官一体の原則」と呼んでいて、前田主任検事が大坪特捜部長に報告したことは、最高検まで上がるシステムだというのです。
 ということは大阪地検の小林検事正や玉井次席検事も当然、前田容疑者のFD改ざんの事実を知っていたはずだし、最高検にも報告が上がっていた可能性すらあるということです。

 今回の大坪前特捜部長らの逮捕を受けて、民主党幹部からは検察のトップである大林宏検事総長の辞任に言及する声が再び挙っています。法務省幹部も「最終的に(大林検事総長は)自発的に辞めざるを得なくなるのではないか」という見方をしているといいます。
 しかしよく考えてみれば今春就任したばかりの大林検事総長は、隠蔽犯罪が行われていた当時は東京高検検事長であり報告を受ける立場になく、直接的な監督責任はなかったわけです。

 むしろ今回の事件で最終的責任を問われるべきは、当時の樋渡利秋前検事総長の方なのです。そして樋渡検事総長(当時)が総指揮を取ったのが、昨年春から今年にかけての一連の小沢捜査でした。
 見る人が見れば、大阪地検の郵便不正事件と東京地検の一連の小沢捜査は「民主党潰し」で共通しているといいます。確かに郵便不正事件の本当のターゲットは石井一衆院議員(当時)でしたし、一連の小沢捜査のターゲットは言わずと知れた「小沢逮捕」にあったわけです。

 郵便不正事件の方は石井議員の疑惑がアリバイによって早々と崩れ、以後村木元局長に絞られたものの、こちらも先月無罪が確定しました。あげくの果てに同事件捜査に関わるFD改ざんを地検特捜部ぐるみで隠蔽という事態まで満天下にさらけ出てしまいました。
 西の大阪地検が検察全体の存亡を揺るがす事態になっているのに、もう一方の東の東京地検が血眼になって捜査した、一連の小沢捜査の方は何の問題もなかったのでしょうか?

 昨年春の西松建設事件の大久保元秘書の公判では、検察側証人の証言が覆り、村木事件同様今後の公判維持すら危ぶまれる状況です。また今年初からの世田谷土地事件でも、関係先の強制捜索、石川衆院議員ら3人の元秘書逮捕などで徹底的に捜査するも、検察が当初思い描いていた水谷建設からの裏金授受の事実はまったく出てこず、小沢氏の政治資金規正法違反(共犯)ですら二度に渡って「不起訴処分」にせざるを得なかったのです。

 小沢土地問題では、1月から2月にかけて今回逮捕されたFD改ざんの張本人・前田主任検事が応援に駆けつけ、大久保元秘書を取り調べ調書を作成しています。前田容疑者の改ざん事実を、大坪前特捜部長らが知ったのは1月下旬です。それをその時点で事件にしていれば、その時継続中の小沢捜査は大きく変わっていたはずです。
 怪しい偽装市民団体が検察審査会に告発することはなく、東京地検の1回の「不起訴処分」だけで、小沢氏の「政治とカネ」問題は決着を見ていたはずです。

 ということは、鳩山政権が退陣に追い込まれることも、参院選で惨敗することもなかったかもしれないのです。そう考えると、当時最高検、トップの樋渡検事総長らにも改ざん事実が上がっていながら、「小沢一郎潰し」のためにその事実を検察全体でねじ伏せてしまった大組織犯罪があったのではないでしょうか?

 (大場光太郎・記)

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