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星落秋風五丈原

              土井 晩翠

一、
  祁山(きざん)悲愁の風更(た)けて
  陣雲暗し五丈原(ごじょうげん)
 
 零露(れいろ)の文(あや)は繁くして
  草枯れ馬は肥ゆれども
  蜀軍(しょくぐん)の旗光無く
  鼓角(こかく)の音も今しづか
  丞相病あつかりき
  丞相病あつかりき

二、
  夢寐(むび)に忘れぬ君王の
  いまはの御こと畏(かし)みて
  を焦し身をつくす
  暴露(ぼうろ)のつとめ幾とせか
  今落葉の雨の音
  大樹ひとたび倒れなば
  漢室の運はたいかに
  丞相病あつかりき

三、
  四海の波瀾収まらで
  民はみ天は泣き
  いつかは見なん太平の
  のどけき春の夢
  群雄立てりことごとく
  中原(ちゅうげん)鹿を争ふも
  たれか王者の師を学ぶ
  丞相病あつかりき

四、
  嗚呼(ああ)南陽の旧草廬(きゅうそうろ)
  二十余年のいにしへの
  夢はたいかに安かりし
  光を包み香をかくし
  隴畝(ろうほ)に民(たみ)と交れば
  王佐(おうさ)の才に富める身も
  ただ一曲の梁歩吟(りょうほぎん)
  丞相病あつかりき

五、
  成否(せいひ)を誰れかあげつらふ
  一死尽くしし身の誠
  仰げば銀河影冴えて
  無数の星斗光濃し
  照すやいなや英雄の
  孤忠の胸ひとつ
  其壮烈にじては
  鬼神も哭(な)かむ秋の風

六、
  嗚呼五丈原秋の夜半
  あらしは叫び露は泣き
  銀漢清く星高く
  神秘の色につつまれて
  天地微かに光るとき
  無量の思(おもい)齎(もた)らして
  千載の末今も尚
  はかんばしき諸葛亮
  名はかんばしき諸葛亮


…… * …… * …… * ……
 上に掲げた詩は、明治の詩人・土井晩翠の長大な叙事詩『星落秋風五丈原』(←全詩)(ほしおつしゅうふうごじょうげん)のうち、後に六番までを抜粋して曲をつけ歌としたものです。三国時代の名宰相・諸葛亮(孔明)が、今まさに五丈原で陣没せんとするまでの代表的な生涯の場面が描かれています。
 後のことは《私の鑑賞ノート》として、続編で述べたいと思います。作曲者は不明ながら、詩の内容にふさわしく曲は心に響く悲壮調(←混声合唱視聴)、是非一聴をお奨めします。

 (大場光太郎・記)

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コメント

ごめんください。勝手ながら「川越だより」に「星落秋風五丈原」を紹介させてもらいました。

丁寧なお仕事に感謝申し上げます。

小沢裁判に対する的確な批判に心を強くしました。ありがとうございます。

投稿: 鈴木啓介 | 2012年2月19日 (日) 08時45分

鈴木啓介様
 コメントありがとうございます。
 本記事「川越だより」にご紹介いただいたとのこと。こちらこそ恐縮に存じます。と言うことは、鈴木様は川越にお住まいなのでしょうか。
 私は30代半ば頃の半年ほど、当時の仕事の関係で所沢に住んでいたことがあります。所沢を中心に、入間市や川越市などを車で営業して回っていました。ふと懐かしく思い出されました。
 「小沢裁判」の結果次第では、本当にこの国の将来が大きく変わってしまうと思います。もうこれ以上、官僚たちの好き勝手、横暴を許してはいけません。それでは亡国一直線です。
 国民の多くは、「官」と一体化したマスコミの長年の「小沢人格破壊キャンペーン」によって、「小沢一郎 = 悪」が刷り込まれています。これを覆すのは容易ではありませんが、できるだけ多くの人に「真実」を知っていただければと、微力ながら時折り関連記事を出している次第です。
 「至誠の人」ということでは、今の日本の政治家の中では小沢一郎が最も諸葛亮に近いと考えます。

投稿: 時遊人 | 2012年2月19日 (日) 15時13分

自遊人さま

私は1969年4月以来、川越に住み、東京に通勤してきました。旧市街の北部・神明町です。

機会を作ってお尋ねくだされば光栄です。東松山には原爆の図・丸木美術館があります。毎日が日曜日の生活です。喜んでご案内します。

投稿: 鈴木啓介 | 2012年2月20日 (月) 17時55分

鈴木啓介様
 重ねてのコメントありがとうございます。
 そうですか、1969年以来ずっと川越にお住まいですか。もう40年以上ですね。私が所沢の星が丘(記憶あやふやです)の線路沿いのアパートに住んだのは昭和61年頃のことです。
 神明町という町名までは存知上げませんが、短期間でも方々を駆け回った思い出が懐かしいです。いつか機会があれば、改めて所沢周辺を訪ねてみたいと前から考えていました。
 折角のご縁ですので、その節は是非メール差し上げたいと存じます。ずうずうしい事ながら、川越市内や丸木美術館などのご案内、よろしくお願い申し上げます。
 

投稿: 時遊人 | 2012年2月20日 (月) 19時57分

自遊人さま

そんな日を楽しみにしています。

投稿: 鈴木啓介 | 2012年2月28日 (火) 06時42分

鈴木啓介様
 本日多忙のため、満足にブログチェックできず返事遅れてしまいました。
 なかなか時間が取れませんが、私の方こそ「そんな日」を楽しみに致しております。2月も終わりだというのに、一向に春めいてきません。お体大切にお過ごしください。
 

投稿: 時遊人 | 2012年2月28日 (火) 23時39分

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