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ペルセウスの誕生秘話

 -ペルセウスもまた、大神ゼウスの浮気心によって生まれた英雄だった-

 本来ならばオリュンポスの神々に、人倫の道ならぬ「神倫の道」を率先垂範して示すのがゼウスの大神としての職掌であるはずです。ところがこのゼウスがとんだエロ大神であることを、『ヘラクレスの誕生秘話』で見てきました。
 ともかくそういう次第で、貞淑な人妻アルクメネは、夫アムプトリュオンに姿を変えたゼウスとの一度の交わりによって、ヘラクレスを胎内に宿すことになりました。

 ところで言い忘れていましたが、アルクメネはペルセウスの孫娘なのでした。ペルセウスはこれまたギリシャ神話中名高い英雄です。「ペルセウス座」として、9月末から冬にかて夜空に輝く星座の名前にもなっています。近年では、毎年8月の「ペルセウス座流星群」としてご記憶の方も多いかと思います。
 当初はこのままヘラクレスの事跡をと考えていました。しかし順序としてその前に、ヘラクレスの曽祖父にあたるペルセウスの事跡を見ておかなければなりません。ペルセウス英雄譚は、子孫のヘラクレスに勝るとも劣らない、いや物語としてはこちらの方が面白いかもしれません。

 ゼウスは本当にどうしようもない“歩く種馬”大神です。というのも、ペルセウスもまたゼウスの出来心によって生まれたからです。
 度重なるゼウスの不行跡は、裏を返せば「神の繁殖力」のアピールなのかもしれません。旺盛な生殖能力こそ神の第一の権能なのだとばかりに、「産めよ、殖やせよ、地に満てよ」という神の大方針を、大神自らが実践して見せているのかもしれない…。
 ともあれここでもまた、「ペルセウス誕生秘話」からたどっていかねばなりません。

 ペロポネソス半島の東側、スパルタの北方あたりにアルゴスという国がありました。この国の時の王がアクリシオス。その娘が“白鳥レダ”などと並び称され、しばしば西洋絵画の題材として用いられる美女ダナエです。
 アクリシオス王はある時、自分の運命をデルフォイの神託に尋ねます。すると「汝の娘の子によって殺されるであろう」という、恐ろしいご託宣を賜ります。王は対応に苦慮しますが、かといって最愛の娘を殺してしまうのも不憫です。
 悩んだ末出した結論は、『それなら娘に子供を産ませないようにすればいいのだ』ということでした。

 こうして王はダナエを、かの倫敦塔(ロンドン塔)の幽閉物語のように、青銅の塔に閉じ込め、男どもが決して近づけないようにしたのでした。
 しかしゼウスは、何だかんだ言ってもオリュンポス随一の大神です。そういう方面には殊に全能の千里眼ぶりを発揮し、天界でダナエ幽閉の次第など先刻お見通しです。その上困ったことには、またぞろゼウスのスケベ心がムクムクと持ち上がり、この美少女を見初めてしまったのです。さあそうなると、青銅の塔くらいでは何の役にも立ちません。

 ある時ゼウスは黄金の雨と化して、青銅の塔に降り注いだのです。
 「まあきれい、どうしたのかしら?」。ダナエが、金の糸となって落ちてくる異様な雨に魅入られて窓を開けた時には、すかさずダナエの股の奥に流れ込み、交わりを完遂してしまったのです。
 この“交わり”は非現実的で、あまりうまくイメージできませんが…。「股の奥に流れ込」んだ黄金の雨は、ゼウスの“精液”の比喩なのでしょうか?大神の精液ともなれば、凡俗の人間どものような白濁液ではなく黄金液?

 なおダナエが幽閉されたのは塔ではなく青銅の部屋(地下室)で、ゼウスは黄金の雨となってその部屋に入り込み、そこで本来の姿に戻ってダナエと交わったという説もあります。こちらの方が幾分現実味が出てくるかもしれませんが、ここでは「阿刀田高説」を採りたいと思います。

 ともかく。こうして生まれたのが英雄ペルセウスです。ダナエはこの赤ん坊を塔の奥深くに隠し、決して父王に見られないように育てていたのでした。
 しかし赤ん坊というものは、俗に「泣く子は育つ」と言うように、古今東西泣くのが仕事です。これは大神ゼウスの子という類い稀な貴種ペルセウスと言えども同じこと。
 かえって、後に英雄となるペルセウスの泣き声はひときわ高かったのでしょう。ある時その泣き声が塔の外にまで漏れてしまい、とうとう発見されてしまうのです。

 アクリシオス王は、およそ有り得ざる状況で生まれた子を見て、さぞ驚いたことでしょう。しかし「自分を殺す子」が現実に生まれてきてしまったのです。またまた処置に困り果てた王は、ダナエとペルセウスを木箱に詰め込んで、死者を追悼する精霊舟でもあるまいに海に流してしまいます。
 アルゴスの東の海に、小さなセリポス島があります。箱詰めの母子は奇跡的に生きたままこの島に流れ着き、島人のデュクティスに助けられたのです。
 ペルセウスはこの島の漁師に預けられ、立派な若者に成長していくことになります。

 (大場光太郎・記)

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