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自衛隊は「暴力装置」?

 -柳田法相に続いて、“蔭の総理”仙谷の口からも究極の失言が飛び出した-

 このところ国会は、柳田稔法務大臣の失言をめぐって大揺れです。
 これは先日の地元後援会での発言ですが、身内の会合でつい気が緩んだのか、同法相は「法相はいいですね。2つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。(略)あとは『法と証拠に基づいて、適切にやっております』、この2つなんです。まあ、何回使ったことか」とやらかしたのです。
 
 マスコミではこの部分をピックアップして集中的に報道しています。しかしその前段もかなり問題です。それは「皆さんも『何で柳田さんが法相?』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはないんです」。
 どうでしょうか?前任者の千葉景子も「何もやらない法務大臣」との評価でしたが、それでも曲がりなりにも弁護士の資格を持ち「法務関係」はまあ分かる大臣だったのです。それが柳田法相の場合は、国会議員になって20年この方「法務関係とは無関係」だったと言うのですから呆れてしまいます。
 当然菅総理、仙谷官房長官の任命責任の問題も浮上してきます。

 当然18日の参院予算委員会の野党質問でも、この柳田発言は大きく取り上げられました。また自民党、公明党のみならず、社民党、共産党、みんなの党などが一致して、参院で柳田法相に対する問責決議案を提出する方向でまとまったようです。
 この流れを受けて民主党幹部からも、「柳田の辞任は避けられない」との見方が強まっています。仮に同決議案が野党多数の参院に提出され可決しても、菅政権は一応無視の構えを取ることもできます。ただしそうなると、国民生活にとって死活問題の補正予算案の可決が危ぶまれる事態となるため、「柳田の首を差し出すのと引き換えに…」というわけです。

 難題が次から次へと降りかかって、今やすっかり末期的ダッチロール状態の菅政権にとって、さらに弱り目に祟り目の失言が重要閣僚から飛び出しました。あろうことか、菅内閣の大番頭どころか今や押しも押されもせぬ「蔭の総理」である、仙谷由人官房長官の口から「自衛隊は暴力装置」という問題発言が飛び出したのです。

 それは同日の参院予算委員会での、世耕弘成議員(自民)の質問に対する答弁で述べたものです。世耕議員は、防衛省が政治的な発言をする団体に防衛省や自衛隊が関わる行事への参加を控えてもらうよう指示する通達を出したことが「言論弾圧」として問題になっていることについて、国家公務員と自衛隊員の違いを質問しました。
 それに対して仙谷官房長官は、「“暴力装置”でもある自衛隊は特段の政治的な中立性が確保されなければならない」と語り、議場が騒然となったものです。

 すかさず世耕議員は謝罪を要求し、さしものの“柳腰”のらりくらり官房長官も直ちに同発言を撤回し「実力組織」と言い換えた上で、「法律上の用語としては不適切だった。自衛隊の皆さんには謝罪する」と陳謝しました。
 菅総理も午後の同委員会で、「自衛隊の皆さんのプライドを傷つけることになり、お詫びする」と述べ、同夜「蔭の総理」の仙谷氏を執務室に呼びつけ、「今後気をつけるように」と「表の総理」として一応口頭で注意をしました。

 菅政権きっての最高実力者のこの問題発言に対して、特に自民党は猛反発です。例えばイラク戦争時「ヒゲの隊長」として名をはせた、同党の佐藤正久参院議員は「おそらく全国の自衛隊員は『聞き捨てならぬ発言』と捉えたのではないか」と怒り心頭の様子です。
 対してみんなの党の渡辺善美代表は、「昔の左翼時代のDNAが、図らずも明らかになっちゃった」と呆れ顔で語っていました。

 この渡辺代表の指摘は、仙谷氏について鋭いところを衝いていると言うべきです。
 「暴力装置」とは初めて聞く用語です。私はてっきり「民主党で一番頭の良い」仙谷様の造語かと思っていました。しかし実はそうではなく、この「暴力装置」は元々ドイツの社会学者のマックス・ウェーバーが、警察や軍隊を指して用い「政治は暴力装置を独占する権力」などと表現した言葉のようです。
 それをロシアの革命家レーニンが「国家権力の本質は暴力装置」などと、暴力革命の理論付けに使用したため、全共闘運動華やかなりし70年代、主に左翼用語として流通していたというのです。

 そのためか今回の仙谷発言に対しては、各野党間でも微妙な温度差があるようです。自民党の丸川珠代参院議員は、「自衛隊の方々に失礼極まりない」と柳眉を逆立てて批判しました。一方共産党の穀田恵二国対委員長は、「いわば学術用語として、そういうこと(暴力装置との表現)は当然あったんでしょう」と一定の理解を示しています。
 それもそのはずで、例のハマコーこと浜田幸一衆院予算委員長(当時)の「ミヤザワケンジ君(宮本顕治君の誤り)は人殺し」発言の時の当事者だった、同党の先輩・正森成二元衆院議員も、「権力の暴力装置ともいうべき警察」(昭和48年の衆院法務委員会)と発言していたのです。

 しかし「暴力装置」と名指しされた自衛隊そのものの位置づけが、昭和40年代と今とでは格段に違います。その後の湾岸戦争、イラク戦争を経て、好むと好まざるとに関わらず日米同盟は一段と強化され、イラク戦争で自衛隊は遂に海外派遣も経験しているのです。
 最近「蔭の総理」などともてはやされ、本人もすっかりその気になっているせいか、自衛隊=暴力装置は、いくらなんでも不用意な発言だったと言わざるを得ません。
 前原を次期総理として想定している仙谷の謀略で、幹事長職を押しつけられ国会運営に苦慮している岡田克也は、「人間誰でも間違いはある。本来、実力組織というべきだったかもしれない」と言葉少なに語っています。

 しかしそんなことでは収まらないのが自民党です。「この発言は謝罪して済むようなものではない」という強硬意見が多数を占め、脇雅史参院国対委員長は「柳田法相と共に、仙谷官房長官、馬渕国交相の3人を問責決議案にかけるのは確定だ」と語っています。
 実際のところ仙谷官房長官の「間違い」は、岡田幹事長が「人間誰でも間違いはある」というレベルを超えています。中国人船長の釈放問題しかり。中国漁船衝突ビデオを非公開としたことしかり。そして今回のこの問題またしかり。何もかも間違いだらけ官房長官?

 菅直人が仙谷由人を切れないのなら、いっそのこと参院野党の「問責決議案」という手段によって辞任に追い込んでもらうのも一つの方法かもしれません。
 しかしその場合、上記で見てきましたように、「仙谷発言」で社民党や共産党がすんなり同調してくれるかどうかは疑問が残ります。

 それにしても当の仙谷によって一兵卒に追いやられた、小沢一郎はさすが政局をしっかり見ています。同日夜の1年生議員有志50名の「一新会倶楽部」に最高顧問として出席し、「このままでは民主党は死んでしまう。日本が危ないことになる。いつ“やぶれかぶれ解散”があってもおかしくないから、今からしっかり準備をしておくように」と話したというのです。
 「小沢抜き」民主党は、本当にご臨終間近です。

 (大場光太郎・記)

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