第24回・サラリーマン川柳
-検察審査会の「市民目線」などぶっ飛ばす、まさに「庶民目線」の秀句群-
第一生命による「第24回サラリーマン川柳100句」が17日発表されました。「サラ川」は、『流行語大賞』『今年の漢字』などと並んで、その時々の世相を知るための格好の指標となるものです。
当ブログでは開設以来注目し、『第22回』『第23回』とその都度取り上げてきました。今回もまた取り上げてみたいと思います。
「サラリーマン」と銘うっていることもあり、先ず会社における自分の立ち位置、上司との関係、会社そのものへの喜怒哀楽を詠んだものが多くあります。なお引用句の後の()内は“雅号”です。
ボーナスは メガネかけても 飛び出さず (3D頼り夫)
長引くデフレ不況下、各企業はたとえ業績が回復して収益が上がっても、せっせと内部留保または株主配当に回してしまい、社員の給料、ボーナスは横ばい、下降傾向です。
この句はその悲哀を詠んでいます。雅号から推察するに、メガネとは当今流行りだした「3Dメガネ」ということなのでしょう。昨年私も映画館でこれをかけて試用してみましたが、なるほど映像が立体的に飛び出す迫力に圧倒されました。
100万円の札束なら約1センチくらい?それなら十分立体的に感じられることでしょう。しかしそんなにはとてもとても…。その3分の2、いや半分以下?
持ってない ととのえられない 我が会社 (七色とうがらし)
「持ってる」は、日ハムに入団した斎藤祐樹投手が、大学最後となる試合で早稲田大学を優勝に導いた直後、インタビューで答えた言葉でした。「ととのえました」と共に昨年度流行語大賞にノミネートされました。
この句はその両方を否定形で巧みに織り込んでいます。「持ってる」というのは、ツキや運を持っているということなのでしょうが、「当社には残念ながらそれがない」というのです。「運も実力のうち」と言いますから、きっと社運が傾いてどうしようもない状態なのでしょう。
それは、会社としてのリズムが崩れていることに起因しているのかもしません。ならば悪い流れを戻して善循環の流れに乗るには、さまざまなことを「ととのえる」ことが必要ですが、それすら出来ないというのです。これではますます負のスパイラルですね。
役員の ブログで知った 社のピンチ (しーぱっぱ)
今はある意味「まやかしの時代」です。国際関係、政治の世界、企業間取引、男女の関係…。会社の中にあってすらそう。まして役員ともなると、下々の社員は適当にあしらい、企業のマル秘情報は漏らさないものです。
この句の主人公は会社の実情など知らず、業績もまあまあだしと安心していたのです。ところが、たまたまのぞいた社の役員ブログには仰天です。『どうせ我が社の者は来ないだろう』と油断したのか、それとも重圧をブログでつい発散したくなったのか。社の窮状が述べてあったのです。読んだことが吉と出るか凶と出るかは、あとは当人の身のふり方次第でしょう。
「サラ川」では、政治モノにも毎年秀逸な句がみられます。今回で特に目立ったものをー。
日本海 どこからどこまで 日本かい (万歳老人)
ありました、ありました。こう思わせられる出来事が。昨年9月尖閣諸島沖で発生した、中国漁船衝突事件。船長を逮捕したは勇ましくても、中国の猛抗議にたちまち腰砕け。「あくまで那覇地検の決定」という世にも珍奇な国家判断で、起訴せず船長釈放という国際的赤っ恥。かと思うと「国家機密」のはずの衝突映像が、ネットに流出して大慌て。
「弱」菅外交の足元をしっかり見たロシアは、大統領らが続々北方領土訪問。とどめに今月、最高権力者のプーチン首相まで訪問するそうな。
こんな日本外交の破綻を見せられては、「どこからどこまで 日本かい?」と国民誰しもが不安になってしまいます。
バブル崩壊後の「失われた20年」の漂流日本。この国は本当に夢のない社会になってしまいました。それを端的に詠んだのが、
小学生 夢見る職は 「正社員」 (クラーク博士)
ちょっとクラーク先生。あなたは確か「少年よ、大志を抱け」とおっしゃったのではありませんでしたか?あなたの感化を受けて、この国の昔の少年は「末は博士か大臣か」と“大志”を抱いておりましたのに。
最近子供たちに「将来何になりたい?」と聞きますと、中には「宇宙飛行士」などと昔ながらの大志を抱く子供もいるにはいるが、多くは「サラリーマン」「ケーキ屋さん」「バスの運転士」「花屋さん」など、日常に密着した現実的なものが多いそうです。それを究極すればこの句になってしまうわけです。
夢見る「少年たち」がこれではいけません。
「サラ川」の花形は、何といっても夫婦間の“グチ川柳”です。この分野で今年も秀句が多く、5、6句まとめて紹介したいほどです。しかし出来ませんので、特に印象深かった句をー。
我が家でも 影の総理が 幅利かす (湘南鳶)
思わず「うまい !」と言いたくなります。この句は、時局を巧みに身近なところにたぐりせて詠んで秀逸です。一家の大黒柱のはずのこの俺(夫)は“お飾り”で、我が家の実権は「影の総理(妻)」が握っているというのです。これは言わずと知れた、改造内閣前の菅直人総理と仙谷由人官房長官(当時)の関係が前提にあるわけです。
でも“家庭政府”においては、「カカア天下」の方がうまくまとまると言われています。ただし、亭主に上手に花を持たせる「賢いカカア」でなければなりません。影の総理が「幅利かす」ではうまくいきません。どうりで「出たがり仙谷」官房長官は、当時から菅総理との関係がギクシャクしていたわけです。
その仙谷代表代行が、切羽詰まった菅総理に「鈴をつけられるのはオレだけだ」と、菅退陣に動き出したもようです。もし失敗すれば恐怖の「解散」ですぞ。党分裂の元凶、仙谷由人。仮に「鈴をつけらない」ようだと、民主党は木っ端微塵に吹っ飛ぶぜよ。
(大場光太郎・記)
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