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悪夢の三月を越えて

   見上げれば常と変わらぬ桜なり   (拙句)

 3月は例年になく寒い日が続き、今年の桜の開花は大幅に遅れました。比較的暖かかった2月下旬の開花予報では、「東京の開花は3月26日頃でしょう」というものでしたが…。
 しかしいざ3月はド~ンとまた気温の谷に入ってしまい、「春は名のみの風の寒さや」という状態が続きました。

 実際3月中旬、下旬は少し異常なくらいの寒さだったように思います。晴れて始まってもやがて曇りあげくの果ては雨になる、そんな日がけっこうありました。そんなある日の午後横浜に遠出しました。曇っていても、「きょう1日雨は降らないでしょう」という可愛い“お天気お姉さん”の言葉を信じて傘は持たずに出かけました。
 ところがどうでしょう。本厚木駅の少し手前でもう雨が降り出したのです。バスの広いフロントガラスに雨粒がかかり、大きなワイパーが右に左に動き出します。

 時あたかも福島第1原発が予断を許さない頃。東京や関東南部にまで放射性物質の拡散が懸念され、外出自体控えた方がいいと言われている折りでした。「もし雨が降ったら降り始めが一番危ない」と、確かどっかのテレビ番組で言っていたっけ。
 日頃はブログで、「この世は夢だ、幻だ。どんなことがあっても慌てなさんな」というようなことを述べているにも関わらず。『こんな雨に打たれてはかなわん』とばかりに、バスを降りるやスクランブル交差点を急ぎ通過し、百メートルくらいを一目散に走って駅構内に駆け込みました。

 その日は国木田独歩の『武蔵野』の一節ではないけれど、「雨降りみ降らず」。横浜での所用の間雨は止んでいました。最後に行ったのが神奈川県庁本庁舎。用が済んだら例の屋上に出て、海を眺めながら一服して帰ろうかと思いました。

 担当部署で届出書類が受理され、帰り際応対してくれた男子職員に「つかぬことを伺いますが、屋上の喫煙場所今でもあるんですか?」と尋ねてみました。「えヽありますよ。ただ以前の海に面した所から、北側に移動しましたが。何せウチの知事さん(松沢成文氏)が全国に先駆けて喫煙防止条例を作っちゃったでしょ。職員が喫煙しているのを海の方から見られると具合が悪いんですよ」。
 『なるほどねぇ。でもまだ吸えることは吸えるんだ』と思っていると、追っかけるように「ただこの空模様ではねぇ」と言ってくれました。屋上だから海風も強いだろうし、職員たちは当分そこでの喫煙は控えていることでしょう。「そうですね。またこの次にしますよ」と言いながら県庁を後にしました。

 横浜スタジアム端と対面の、いつものヴェローチェで4、50分過ごして外に出てみると、少し本降り気味の雨になっています。仕方なく目指す関内駅まで、ここでも目いっぱい走りました。やはり予期せぬ雨だったらしく、暮れなずむ中何人もの人が横浜市庁舎前道路を同じように駅目指して走っています。
 例年この頃なら「春雨じゃ、濡れて参ろう」で済みますが、この雨ばかりはそんな悠長なことは言ってられないようです。

 3月下旬はこのように、夏の夕立でもあるまいに、夕方頃不意討ちの雨に祟られることが多かったようです。それに相前後して決まって一陣の妖しい風が吹きつけてくるのも不気味でした。放射能雨に放射能風?どうなってんだよ、この天気は。
 さらにある日の夕方にわか雨が上がった後に、少し南に寄った東空に虹が出ているではありませんか。「春の虹」という季語もあるにはあるが、三月の虹など多分“アラ還”に至って初めて見ました。
 それも夏の夕立後のような、すっきりした空に架かる美しい虹ではないのです。薄黒い雲を背景にした、それゆえ何となくくすんで見える虹だったのです。

 月が変わって4月になって、だいぶ暖かさを取り戻してきました。何より世の中全体が、落ち着きを取り戻し始めました。広範囲の被災地や福島原発の周辺地区で、今なお深刻な状況が続き、手放しでは喜べないものの…。

 3月末まではいつ咲くか分からないほど固く蕾を閉ざしていた桜も、週末当地の近所の桜は1、2分咲きになっていました。さらに週明けの4日またその辺を歩いてみますと、開花はぐんぐん広がっており、もう3、4分咲きといったところです。
 桜並木を見上げながら咲き始めた桜の花を愛(め)で、その奥に広がる希望の色の青空を透かし見ながら、そこの遊歩道を通り抜けました。

 (大場光太郎・記)

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