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六月を綺麗な風の


            正岡 子規

   六月を綺麗な風の吹くことよ

…… * …… * …… * …… * ……
《私の鑑賞ノート》
 この俳句については、08年6月の身辺雑記風な『六月の綺麗な風』記事でも一度取り上げています。よろしかったら併せてお読みください。

50428_2          正岡子規 (1867年10月14日~1902年9月19日)

 「六月」は梅雨を迎える、暗くてうっとうしい季節とついイメージされがちです。しかし正岡子規の今回の句のように、「綺麗な風」が実感される日が本当にあるものです。

 それは梅雨入り後の梅雨晴れ間の一日でしょうか。私はむしろ、梅雨前の六月初旬の良く晴れた一日の感じだと思います。が、鬱陶しい梅雨の晴れ間の一日の方が、「綺麗な風」がより実感できるかもしれません。

 「六月を綺麗な風」がこの句の生命線です。もちろん風は無色透明であり、何色などということがあろうはずがありません。しかし子規は、この時の風を「綺麗な風」と把えたのです。これが実に秀逸です。

 「綺麗な風」は一月でも三月でも九月でもない、「六月」でなければならないのです。六月初夏のキラキラ輝いているような景色を吹き渡る風。「六月を綺麗な風」とは、まさに子規による発見です。

 この句が作られたのは子規何歳頃なのでしょう。これについては、それについて触れ、感想を述べた前記事の一文をそのまま引用して、今回の鑑賞文の結びとします。

 この句は、結核による大喀血の後に作られた句だそうです。しかしこの句からは、そんな病苦への恨み言や悲嘆などは微塵も感じられません。「体病むとも心は病まず」。おそらく三十歳前後であったろう子規の、澄み切った心境、諦観、見事な死生観がうかがわれる、すがすがしい名句です。

 (大場光太郎・記)

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コメント

いまプラハに来ております。貴ページの葉はこの国(チェコ)の国花(木)ですが、名前がわかりません。日本語で何という木ですか?
ここではリパと呼びます。教えていただければ幸いです。

投稿: Rinko | 2017年5月21日 (日) 01時58分

Rinko様

 このたびはコメントいただき、大変ありがとうございます。

 私のブログにはあまりコメントがありません。それでついコメントチェックを怠ってしまいがちです。しかしそんな時に限ってコメントされている事が多いのです。というような次第で、貴コメントの発見が遅れてしまいましたこと、大変申し訳ございません。

 えっ、 Rinko様は今プラハにご滞在中ですか?プラハは確かチェコスロバキアの首都だったと記憶していますが、ご旅行なのでしょうか。いやあ、実にいい所におられて羨ましい限りです。緑したたるこの季節、プラハの5月の町並みは最高でしょうね。

 現在当ブログ背景に使用しております「若葉」がそうかは分かりませんが、チェコスロヴァキアの国の木は「スラヴ菩提樹」のようですね。おっしゃるとおり、そちらの言葉で「Lipa」(リパまたはリーパ)らしいですね。

 どうぞ、東欧チェコはプラハの春を存分にお楽しみください。

投稿: 時遊人 | 2017年5月24日 (水) 23時32分

この記事へのコメントは終了しました。

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