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「黄桜かっぱ家族」あれこれ

 今現在当ブログの背景は「かっぱ君と雨」です。梅雨限定ということで3年ぶりに使用しています。3年前『河童考』という一文を公開しましたが、今回はまったく別の観点から「かっぱ」について述べてみたいと思います。

 当ブログの「かっぱ君」がそうであるように、「河童」はどことなく愛嬌があり憎めない幻獣ではあります。そこでこの河童をフルに活用してキャラクター化している会社があります。
 こう言えばすべての方がご存知でしょうが、「黄桜酒造」です。

 私などは黄桜のかっぱ家族のマンガは、もっぱら小島功(こじま・こう)画伯が創始者だどばかり思っていましたが、実はそれ以前からの歴史があったようです。

 黄桜酒造が「かっぱ」をCMキャラクターとして使い始めたのは意外に古く、1955年(昭和30年)のことだといいます。同社ホームページによりますと、親しみやすく美味しい酒「黄桜」にふさわしいキャラクターを捜していた先代の松本司朗氏が、その頃『週刊朝日』に連載中の漫画家・清水崑(しみず・こん)が描く「かっぱ天国」と出会ったことがきっかけだったそうです。

 以来半世紀余。初代の清水崑(1912年9月22日~1974年3月27日)から、二代目の小島功(1928年3月3日~)へと受け継がれ、今では「黄桜といえばかっぱ」と言われるほどお茶の間に広く浸透しています。

 思えば娯楽に乏しかった戦後間もなくの昭和20年代、昭和30年代前半は、手塚治虫の『鉄腕アトム』、竹内つなよしの『赤銅鈴之助』、桑田次郎の『まぼろし探偵』『月光仮面』など漫画が全盛の時代でした。

 我が国の「マンガ(MANGA)」は立派な文化として、欧米中心に世界中に流布されています。それに最近ではマンガの発展形と言える、宮崎駿監督の『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』などのアニメ作品が海外で高い評価を得ています。

 そんな中「かっぱ家族」は、体形こそ河童でありながら、顔はまったくの人間なのです。ですから河童に名を借りた“家族物語”であると言えます。その意味で長谷川町子の『サザエさん』と共に、清水崑→小島功の『かっぱ家族』は、戦後日本の理想的な家族像として有形無形の大きな影響を及ぼしていったものと思われます。そして『サザエさん』もそうですが『かっぱ家族』も、とにかく息が長く支持され続けているのです。

  

 「かっぱ家族」は、かっぱ5人家族の物語。家族構成は三度の飯より日本酒、取り分け黄桜好きで、マルチに何でも仕事をこなし家族想いの夫。働き者で美人で典型的な良妻賢母、その実なかなかの“隠れ酒豪”の妻。それによくできた長女(姉)と長男(弟)の2人の子供。そして祖父の5人家族です。

 初代の清水崑がどんな謂れで「かっぱ天国」を創案したのか、知る由もありません。しかし私が勝手に推察するに、芥川龍之介の名作『河童』の次のくだりから大いにヒントを得たのではないだろうかと思われるのです。
                      *
 僕はある月の好い晩、詩人のトックと肘(ひじ)を組んだまま、超人倶楽部から帰って来ました。トックはいつになく沈みこんで一ことも口を利(き)かずにいました。そのうちに僕らは火(ほ)かげのさした、小さい窓の前を通りかかりました。そのまた窓の向うには夫婦らしい雌雄(めすおす)の河童が二匹、三匹の子供の河童といっしょに晩餐のテエブルに向っているのです。するとトックはため息をしながら、突然僕に話しかけました。
「僕は超人的恋愛家だと思っているがね、ああいう家庭の容子(ようす)を見ると、やはり羨ましさを感じるんだよ」
「しかしそれはどう考えても、矛盾しているとは思わないかね?」
 けれどもトックは月明りの下にじっと腕を組んだまま、あの小さい窓の向うを、ー 平和な五匹の河童たちの晩餐のテエブルを見守っていました。それからしばらくしてこう答えました。
「あすこにある玉子焼は何と言っても、恋愛などよりも衛生的だからね」  (『河童 五』より)
                      *
 市井の小市民的一家庭のささやかな幸せ(現実)は、ツァラトゥストラ的超人を目指す高邁な理想に勝れり、といったところでしょうか。

 「かっぱ家族」はそれを髣髴とさせる、文句がつけようのない理想的な家族です。しかし生来皮肉屋の私が一言申し添えさせていただければー。

 昭和50年代以降、世の荒び(すさび)と歩調を合せるように、例えば当時穂積隆信の『積木くずし』、ジェームス三木の『仮面夫婦』がテレビドラマ化されたり社会現象化したように、深刻な家庭崩壊状況が進行しつつあることも事実です。
 いわく「家庭内別居」「セックスレス夫婦」「夫のDV」「妻の不倫」「離婚」「育児放棄」「幼児虐待」「家庭内暴力」「親殺し」「子殺し」…。

 近年我が国の家族の中には、かなり深刻な状況もまま見られるようです。しかし「かっぱ家族」に限っては、そのような各時代ごとの深刻なテーマはまったく反映していないわけです。大酒造メーカーの大切なイメージキャラクターである以上、それは当然と言えば当然の話ですが…。

 私は以前『ある母娘』という一文の中で「家庭は天国の最小単位である」という言葉を紹介しました。その意味で私たちは、「かっぱ家族」という理想的家族像を見失うことなく、見習い続けていかなればならないのかもしれません。

参考・引用  黄桜酒造ホームページ (黄桜ギャラリー)        . http://kizakura.co.jp/ja/gallery/index.htmll
   
 (大場光太郎・記)

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コメント

 私は知りませんでしたが、漫画家の小島功さんがお亡くなりになっていたようです(4月14日、享年87)。今回なぜ知ったかというと、ここ2、3日、小島功さんに触れた本記事へのアクセスがにわかに増え、『あれっ?』と思って調べたからです。ご逝去から5ヵ月も経つのにどうして今頃この記事なのか?は不明です。小島さんといえば「黄桜かっぱマンガ」。本記事もそれに関した内容でした。少しエロチックな、しかしほのぼのとした心温まる「家族マンガ」でしたよね。平和な世の中だからこそ、大衆に広く受け入れられたのだし、また描き続けられたのだと思います。平和の世であってこそ文化は爛熟し、人は成長・進化できるのです。よほどの悟達の人でなければ、戦乱の世では人々の心は荒みむしろ退化してしまいます。戦前と相似形のようにも思われる現情勢下、戦争を間近で見聞したであろう小島さんは生前、今戦争法案成立に至るキナ臭い動きを、どうお感じになっておられたのでしょうか。小島功さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

投稿: 時遊人 | 2015年9月22日 (火) 04時03分

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