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経産3トップ更迭。官僚に責任を負わせてお終いか?

-原発問題は官僚の更迭で済む話ではない。責任を取って辞任すべきは菅首相だ-

 海江田万里経済産業相は4日午前、緊急会見を開いて経済産業省の松永和夫事務次官(59)、寺坂信昭原子力安全・保安院長(58)、細野哲弘エネルギー庁長官(58)を更迭すると発表した。
 この中で海江田大臣は「人心一新を図る」という口ぶりだった。しかしこの3人はそもそもこの夏の人事異動で「勇退する」だろうとみられていた面々である。だから大臣の言葉を真に受けることはできないのだ。

 これが経産省の組織防衛の一環であることは、3人と海江田大臣との7月末の段階での以下のやりとりでも明らかである。
 「大臣が辞めるなら、われわれも辞めます。先に辞めるので、新しい体制を決めてから辞めてください」
 このように今回の更迭人事は、予め両者合意の上での“出来レース”だったのである。3人は御しやすい海江田に働きかけて、自分たちの“勇退”と引き換えに、それ以上の経産省改革に手を突っ込まれるのを阻止したのだ。いかにも「初めに省益ありき」の高級官僚のやり口ではないか。

 そのことを元経産官僚で現慶応大学大学院教授の岸博幸氏は、次のように指摘している。
 「今回の人事は海江田大臣の政治決断でも何でもなく、経産省の事務方と一緒に練った出来レースに他ならず、その狙いは経産省の組織防衛だったということです」
 「本来更迭された3人は、定期異動で辞めてもおかしくないヤツばかり。それが辞めるのは更迭でも何でもありません。国民はこんな浅はかな演出に騙されてはいけません」
 その上で「本当に福島第一原発事故の責任を問うのであれば、局長級の幹部を全員更迭するか、あるいは経産省そのものを解体すべきだ」との考えを示している。

 今回の更迭人事が経産省改革に直結するものでないことは、4日夕海江田大臣が早々と発表した新人事からも明らかである。
 松永事務次官の後任には安達健祐政策局長(59)を昇格させ、細野エネルギー庁長官の後任には高原一郎中小企業庁長官(55)を充て、寺坂保安院院長の後任には深野弘行商務流通審議官(54)を起用するという。
 例えば松永次官の後任として思い切って、ただ今“改革派”として脚光を浴びている古賀茂明氏を就任させるというサプライズでもあれば「おっ、本気だぞ」と評価できたものを。これでは単に、経産省防衛の思惑が明確になっただけの“順送り”と言わざるを得ない人事である。
 

 そもそも更迭筆頭格の松永事務次官は、古賀茂明氏に対して、法的根拠のない「クビ宣告」を行い「とにかく辞めろ」と迫った悪名高き人物である。また「津波に弱い」原発の原因となった津波想定5.7メートルを認めた当時の原子力・保安院長でもある。
 さらに今般西山審議官の路チュー問題、エネルギー庁のインサイダー疑惑、やらせ問題と不祥事続きなのに、松永次官は一切表に出てきていない。そして呆れたことに“原子力ムラ”を守るために、御用委員会や有識者会議の立ち上げに奔走しているというのだ。

 この者たちは例え今官僚を辞めても、先々の身の振り先は決定済みだから何の心配もいらないのだ。
 キャリア官僚の場合普通、退官までに4億円以上稼ぎ、これに退職金がつき次官なら8,000万円から1億円。その後、業界団体など経産省の監督先、大学や外郭団体など国の補助金の交付先に天下りする。そこでの退職金も足すと、生涯賃金は7億から8億円ほどになる。東電のような監督先大企業の役員に天下れば、生涯賃金は10億円に迫るというのだ。
 現下の民間平均年収400万円と言われる時代、ロクな仕事もせずに何とも恵まれたキャリア官僚人生ではないか。

 明治政府以来の、かくも諸々悪しき官僚制度の「打破」「改革」を掲げて政権交代したのが民主党のはずではなかったか。しかし現在の菅政権の体たらくはどうだ。
 今回の更迭の第一原因が福島原発事故の対応の不手際にありとせば、事務次官級とは言え官僚たちに責任を押し付けて済む話ではない。政権交代当初から「政治主導」を旗印に掲げて発足した民主党政権ならなおのこと。
 ましてや福島原発事故初動の指示ミス、要らざる余計な口出しなどで、菅首相自身の対応の不手際によって事故は一層深刻さの度合いを増したと指摘されている。真っ先にきっちり責任を取って辞任すべきは、政治家である海江田経産相であり、菅首相自身なのだ。

 国会答弁中思わず涙を見せるほど、ある意味“純”な海江田大臣は早晩必ず辞めるはずだ。だから特段問題にするほどのことはないだろう。
 ただ辞めて「ポスト菅」に名乗り出てもらうのだけはお断りだ。7月7日の七夕辞任表明から何日経ったというのだ。優柔不断すぎるし、仮に一国の首相になって、例えばG8のような各国首脳による熾烈な国際会議の場で泣かれては国民としてたまらないのだ。

 最大のネックはやはり菅首相だ。海江田経産相の思惑では、今回の3人更迭と自身の辞任という2枚のカードを切ることで、菅首相と刺し違える腹づもりらしい。しかしこと権力闘争にかけては、東工大委員長時代から“ズル菅”“ニゲ菅”ぶりを遺憾なく発揮してきた菅首相のこと。まるで相手にならないのでないか。
 それが証拠に菅には、海江田に悪評高い松永次官らのクビを切らせて、例によって自らの責任を回避する意図も見え隠れするというのだ。これまで岡田克也幹事長、仙谷由人代表代行らがあの手この手で何度攻めても適わなかった化け物だ。
 海江田大臣の作戦が奏功するかどうか、甚だ心もとないと言わざるを得ないのである。

参考・引用
『日刊ゲンダイ』8月3日、8月5日付
『ガジェット通信』-「海江田経産大臣による「更迭人事」は浅はかな演出」
http://getnews.jp/archives/133579
『msn産経ニュース』-「【原発3首脳更迭】奏功するか、海江田氏の「差し違え作戦」」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110804/plc11080421100028-n1.htm

 (大場光太郎・記)

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