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テレサ・テン『何日君再来』

 先日は1930年代の上海が懐かしく呼び起こされる、ディック・ミネの『上海ブルース』を取り上げました。折角ですから、“ノスタルデック上海”を喚起させられる歌をもう一つご紹介したいと思います。
 『何日君再来』(ホーリー ジュン ザイライ)です。




『何日君再来』 訳詞:長田恒雄、作曲:妟如
 
 今回YouTubeで歌うはテレサ・テンです。しかし元々は1937年に上海で製作された映画『三星伴月』の挿入歌として歌われたのが最初でした。当時の人気女性歌手だった周璇が歌って空前の大ヒットとなったのです。
 また1939年に香港で製作された映画『孤島天堂』の挿入歌にもなり、黎莉莉が歌いこちらもヒットしました。

 さらに1939年(昭和14年)、『いつの日君帰る』というタイトルで日本でも歌われてヒットしました。こうしてみると、その年ディック・ミネが歌ってヒットした『上海ブルース』は、この歌に触発されて作られた歌だったことも考えられそうです。

 この近代中国の名曲をより深く味わうため、ここで当時の上海の概略を述べてみたいと思います。
 当時の上海は人口150万人と世界一の人口密度を有する極東一の大都会でした。1843年のアヘン戦争以降英米仏独露などさまざまな外国人が居留していたアジア全体の金融の中心地でもありました。その豊かな冨を背景に、街には摩天楼が聳え立ち、「夢の四馬路(スマロ)」など外国人居留地にはショッピングモールや百貨店など大型量販店が建ちました。

 さらにはネオ・ルネッサンス様式、ネオ・バロック様式、アール・デコ様式などの華やかな建物も建ち並んでいました。
 近代中国文学の父・魯迅(ろじん-ルーシュン)も当時上海に住んでいたように、思想信条の自由もある程度保証され、思想誌が多く発刊され映画産業が発展した文化都市でもありました。

 反面法規制の甘さから“上海ギャング”も横行し、阿片窟、売春宿、カジノなどの闇商売がはびこり、裏社会が築かれていった「魔都」でもあったのです。
 成功を手にしようと多くの中国人が各地から流入してきました。しかし彼ら中国人労働者の大半は成功できず、欧米人の華麗な居留区の場末の貧民街で身を寄せ合って生きていました。
 1930年代のノスタルデック上海とは、全盛期であると共に頽廃と衰退が兆していた時期でもあったのです。
 
 蒋介石率いる国民党と急速に台頭しつつあった中国共産党との戦闘に上海も巻き込まれました。加えてこの歌が歌われた1937年は、日中戦争の勃発により上海も実質的に日本軍の統制下に置かれ、それまでの自由度が著しく圧迫され始めた年でもありました。
 風雲急を告げる中この歌が歌われ大ヒットしたのです。豊かだけれど妖しげな魔都の素顔も垣間見せる上海。中国人男女の奇跡のような純愛が描かれ、時局に翻弄され離れ離れとなり、「何日君再来」と遠き日の再会を希(こいねが)う歌なのです。

 その後この歌は日本だけでも、李香蘭(山口淑子)、夏目芙美子(羅仙嬌)、渡辺はま子、松平晃、翁倩玉(ジュディ・オング)、鄧麗君(テレサ・テン)、石川さゆり、小野リサ、夏川りみなど、数多くの歌手によって歌われてきました。
 もちろん本場中国(中華民国)でも多くの歌手が歌い継いできました。しかしこの歌の復活を決定づけたのは、何といってもテレサ・テンです。彼女が歌ったことにより、今や中華民国、中華人民共和国、香港、シンガポール、のみならず全世界の中国人によって歌われる「チャイナ・メロディ」の代表曲となったのです。(英語では『When Will You Return?』)

 いかにも嫋々たる胡弓の音(ね)に合いそうなチャイナ・メロディの代表曲を、奇しくも主に日本で活動していたテレサ・テンがリバイバルで歌って大きく甦ったのでした。

 この歌の復活との因果関係はないものの。上海も有数の世界都市として現代に甦り、2300万人もの人口を擁する中国における商業・金融・工業・交通などの一大中心都市となりました。
 そんな中1930年代に流行した旧外国人居留区のアール・デコ様式などの建築群は、そのまま中国政府によって保存建築に指定され、夜は一斉にライトアップされて上海の大きな観光資源となっています。

 あヽ今は亡きアジアの歌姫・鄧麗君(テレサ・テン)よ。“懐かしき”1930年代上海の街の灯よ。

 (注記)本記事は、『ウィキペディア』を参考にまとめました。
 なお参考のため、「美的姑娘」・周璇の元歌(YouTube)も掲げておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=HVpxBQNKm9g&feature=related

 (大場光太郎・記)

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