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どうなる?「世界恐慌と日本沈没」

 -いつまでも続く「ダラダラ型恐慌」。没落確定の日本は価値観を転換せよ-

 少し前になりますが、『日刊ゲンダイ』の7面最上段コラムに、『どうなる?世界恐慌と日本沈没』というシリーズが連載されました。

 「ヨーロッパを中心に国家の財政破綻危機が広がり、世界同時株安、超円高と、日本を取り巻く経済状況はかつないほど深刻化しつつある。今、世界経済では何が起こり、それは日本経済にどんな影響を及ぼすのか」

 シリーズ冒頭の上記の問題提起を受けて、日本を代表する経済学者、エコノミストが:現時点での状況分析、今後の見通しなどを述べていく企画でした。
 第1回目は、元財務官で青山学院大学教授の榊原英資氏でした。榊原氏は著書『世界同時不況が始まっている !』で今回の事態を的中させ、近著『世界恐慌の足音が聞こえる』でさらに警鐘を鳴らしています。
 以下に榊原氏の主張を要約してみます。

 榊原英資氏の予測では、「世界恐慌になる可能性はかなり高い」ということです。それも1929年のブラックマンデーのような株大暴落不況ではなく、1870年型大不況が始まっているというのです。
 どういうことかというと、大不況がある日突然ドカーンとやってくるのではなく、じわじわ真綿で首を絞められるようなタイプの不況だというのです。株大暴落というような事が起らないから、多くの人は大不況に気づかないが、10年たってみると大恐慌が起ったと同じくらい株が下がり、経済は縮小している。そういうタイプ、別の表現をすれば「ゆでガエル症候群的大恐慌」とでも言えましょうか。

 榊原氏の見立てでは、今世界に大きなパラダイムシフトが起きているということです。それは欧米の凋落であり、米国と欧州の時代は終焉しつつあるというのです。これは16、7世紀以降の世界をリードしてきた、「近代資本主義そのものの終わり」をも意味しているのですから事は重大です。

 確かにサブプライム問題、リーマンショックが“強欲資本主義”の米国を直撃し、銀行救済のために巨額の公的資金が投入され、それが国家財政をパンクさせ、さらなる公的資金を必要とするという悪循環に陥っています。
 また欧州は、国家財政危機を抱えるギリシャのデフォルトが懸念され、仮にそんな事態になればドイツ、フランスの銀行を直撃します。のみならずポルトガル、スペイン、バルト三国など同じく国家財政危機を抱える国が連鎖反応を起こしかねません。米国や我が国も深刻な影響をこうむるのは必至なのです。

 「残念ながら先進国の時代は終わった」と榊原氏は断言するのです。これまで欧米と歩調を合わせてきた日本も当然その中に含まれるわけです。
 なのに、落ち目の米国言いなりのТPP参加に前のめりなのはどういうことだという話です。

 代わって今後世界をリードしていくのはどこか?これまでは後進国だった中国やインドです。既に中国はGDPで日本を抜き、ほどなく米国をも抜くのは確実です。
 インドはもっと勢いがあります。一人っ子政策の中国と違って、人口増加率が一番大きいのがインドで、2050年には16億人となり中国を抜くと予測されています。低成長に苦しむ我が国などを尻目に、インドは今後とも7%くらいの高成長を維持していくとみられるのです。

 中国やインドなどが台頭し欧米などが没落していく。大いなるパラダイムシフトの時期はしばしば戦争や恐慌が起ると、榊原氏は警鐘を鳴らしています。どうしても軋轢を伴うため、移行がスムーズに行かないケースが歴史上ままあったからです。
 「戦争」ということでは、核の抑止力があるため「大きな戦争」は起らないものの、中東などで局地戦が起る可能性は大いにありそうです。
 榊原氏は、米国は経済的なリーダーシップを失っただけでなく、中東の安定化にも失敗していると見ています。世界は「米国の終焉」を目の当たりにしているというのです。今後世界は経済的恐慌のみならず、政治的、社会的にも混乱していく恐れが十分あるわけです。

 我が国の円高傾向は今後とも続くことが予測され、原発再稼動も難しい情勢です。慢性的な電力不足が続く中、これまでのようにどんどんモノを作れなくなります。「もうモノを増やせばいい時代ではありません」と榊原氏は言い切っています。そして今後の日本人は、「経済的な繁栄とは別の価値観」を求めていく時代になると言うのです。
 作家の五木寛之氏も、「下山の時代」と別の言葉で榊原氏と同じことを言っています。

 それには従来の新自由主義という弱肉強食の強欲丸出しの米国型より、税は高くなっても欧米型の社会福祉国家を目指すべきだと、榊原氏は暗に示しています。
 今の日本には、少なくと後1、2年は国債を発行しても消化できるくらいの財政的余力はありそうです。この期間の増税はご法度です。それよりは急ぎ社会福祉を充実させ、雇用を大幅に増やせるよう整備していく。それから、今後日本は「弱肉強食ハゲタカの米国型」「社会福祉の欧州型」のどちらで行くべきか、国民の判断に委ねるべきだと言うのです。

 榊原氏は結びとして、今日本は本当に厳しい局面に置かれているのに、野田政権は呆れるほど危機感がないと嘆いています。

参考・引用
『日刊ゲンダイ』10月4日、5日-「どうなる?世界恐慌と日本沈没(1、2)」

 (大場光太郎・記)

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