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金原ひとみ-今注目されている理由

 金原ひとみ(28)については、過日の『加藤ミリヤ-芥川賞狙える !?』の中で触れました。2003年下期『蛇にピアス』という作品で、綿矢りさの『蹴りたい背中』とともに芥川賞授賞となったのでした。
 授賞当時金原ひとみは21歳、同時授賞の綿矢りさに至っては19歳。二人ともそれまでの同賞最年少記録を大幅に破っての授賞でした。
 
 ちなみにそれまでの最年少授賞は、丸山健二(1966年下期『夏の流れ』)の23歳0ヶ月。以下石原慎太郎(1956年下期『太陽の季節』)の23歳3ヶ月、大江健三郎(1958年上期『飼育』)の23歳5ヵ月などとなっていました。
 ついでなので、逆に最年長授賞者もご紹介しておきます。森敦(1973年下期『月山』)で、61歳11ヶ月でした。『月山』の舞台は、山形県の出羽三山の一つ月山です。後に映画化もされました。私は出身県の聖山が舞台とあって、原作も読み映画も観ました。

 何せ石原や大江といった大御所たちの記録を大幅に破っての授賞だっただけに、当時大変な話題となりました。特に注目を集めたのが、当時19歳で現役の早稲田大学生だった綿矢りさでした。おかげで綿矢の授賞作『蹴りたい背中』は売りに売れてミリオンセラー、歴代ベストセラー作品で8位となっています。(1位は安部公房の『壁』、2位は石原慎太郎の『太陽の季節』、3位は大江健三郎の『死者の奢り・飼育』…)
 
 同賞の選考委員の石原慎太郎は、授賞後の記者会見で「両作品のうちからどちらかを選ぶとしたら『蛇にピアス』の方を推す」と語っています。ただ当時金原ひとみは綿矢りさの陰に隠れてしまい、むしろ綿矢の引き立て役的な役回りだったように思います。
 それが今なぜか注目を集め、最近のYahoo検索で「急上昇人物」の10位にランクインしているというのです。最近話題作を発表したという噂も聞かないのに、いったいどうしてなのでしょう?

 金原ひとみは、3月12日に福島第一原発が水素爆発を起こした、まさにその日のうちに、4歳の長女を連れて東京を脱出し、父親の実家があった岡山市に自主避難したというのです。その後もそのまま疎開し続けており、それが話題となっているのです。
 当時金原は臨月で、4月に次女を出産したといいます。本人は「危ないかどうか分からないけど、分からないからこそ避難した」と語っています。ただ、大手出版社勤務の夫とは長く別居中だそうです。

 彼女の取った行動に対して、ネット上では「子供を守るためには当然」といった意見から「ヒステリックな過剰反応」という意見まで、賛否両論が渦巻いているといいます。

 「ネット」といえば、当ブログも属している@niftyココログブログでは、『きっこのブログ』がアクセスランキングトップクラスの常連です。その「きっこさん」(30代未婚)も、3月に東京を母親と共に脱出し関西方面に避難しました。最近はあまり訪問していないのでその後の消息は不確かですが、中国地方の山奥に落ち着かれたのだったでしょうか?

 また植草一秀氏と共に“ネット言論の雄”である副島隆彦氏も、自身のブログで「子供たちを放射能被曝から守るため、東京以東の両親は今すぐ関西方面に避難してください。私はこれから義勇軍を募り、福島原発原子炉に突入し決死の作業をして死ぬ覚悟です」などと勇ましく宣言。阿修羅掲示板にも掲載されてやんやの喝采を浴びました。
 実際同志を集めて原発周辺には行ったようです。が果たしてどこまで進軍(?)したのか、どうもその辺の行動があやふや。その後もちろんご存命ですし、同氏からそれについての経過報告もほとんどなかったようです。そのため、その後は一転「副島は詐欺師だ」などと非難の声が集中しました。

 原発事故からもう7ヶ月以上が経過しました。いつしか各メディアの報道もめっきり減りました。事故を起こした原発各号機は無事収束し、事故そのものが過去の出来事だったかのような錯覚にとらわれがちです。
 しかし事故発生当初から、当時の菅政権、東電、経済産業省、原子力保安院など関係各機関は、歩調を合わせて情報隠蔽に走りまくりました。

 確かに以後水素だか水蒸気だかの爆発の危険性は去ったとしても、各号機はそう簡単には収束するはずがありません。現に今でも原子炉に近づけない状態が続いているのでしょう。誰も内部の実情を把握できていないのです。
 燃料棒が原子炉や原子炉格納容器を突き破ってメルトスルーし、地下水汚染という最悪の事態が深く静かに進行中なのではないでしょうか。極端なことを言えば、地下水は原発周辺のみならず本州全体に繋がっており、河川にも浄水場にも海中にも容赦なく流れ込むわけですから。

 それでなくても、今頃になって250キロも離れた横浜市内で、高濃度のストロンチウムが検出されたりしているわけです。大気中、地表面、地中、海中どれだけの汚染が広がっているのか。土壌や家畜や農作物や魚介類の汚染…。野田政権は、保安院など関係機関にシビアで綿密な測定を要求し、正確な数値を把握した上で包み隠さず情報公開し、それに見合った迅速な対策を講ずべきです。

 結局未曾有の原発事故発生当初、どれだけ放射能汚染が拡大するのやら誰にも分からなかったのです。時の政府がオロオロ、アタフタだった以上、言ってみれば一時的無政府状態。各自どうすべきかは完全に自己責任の自主判断でした。
 金原ひとみは母親として、子どもを守ることを最優先させ、“作家の想像力”を駆使して「乗るとしたら今しかない」と判断し、直ちに新幹線に乗り込んで東京脱出を図ったのでしょう。今なら何とでも批判できますが、彼女はその時点で取り得るベストの選択をしたというべきです。

参考・引用
『日刊ゲンダイ』10月25日5面-「急上昇人物 チェック」
映画『蛇にピアス』公式サイト (金原本人の意向を受けて、2008年9月蜷川幸雄監督により映画化されています。かなりシュールな問題作のようです。)
http://hebi.gaga.ne.jp//

 (大場光太郎・記)

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