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ペルセウス、アンドロメダを救出

 アンドロメダがどうして海辺の岩場に鎖で繋がれていたのか。それは次のような理由からでした。

 アンドロメダはエチオピア王のケペウスと王妃カシオペアの娘でした。母親のカシオペア。これが大変な器量自慢だったのです。「天上天下唯我独“美人”」とばかりに、
 「この世にはいろいろ綺麗な人はいるけれど、私くらいの美人はいないんじゃない?言っちゃあわるいけど、海神ネーレウスの50人の美しい娘たちの誰一人として私の足元にも及ばないわね。ウフフフフ…」

 グリム童話『白雪姫』の継母(新しい妃)のように
 「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」
と、毎日魔法の鏡に自分の姿を映してはうっとりしながらそう言ったかどうかは知らないけれど。美貌でも才能でも何でも、「自惚れ」は思わぬ災いの元となりがちです。

 案の定、それを漏れ聞いた50人の美しい娘たち(「ネーレイデス」と呼ばれた)は、
 「まあ何というひどい自惚れ。許せないわ !」
と怒り狂いました。ネーレイデスたちは祖父のポセイドン(元祖海神)に頼んで、エチオピアに大津波を襲わせ、怪獣の蹂躙するままに任せたのです。

 これにはエチオピア王のケペウスもほとほと困ってしまいました。「困った時の神頼み」は今も昔も同じこと。王は神託を仰ぎます。その結果、
 「娘のアンドロメダを人身御供として捧げよ」
とのご託宣を賜り、父ケペウスと母カシオペアは泣く泣くアンドロメダをくだんの岩場に鎖で繋ぎ、娘を置き去りにして帰ってきたのでした。

 ここで王妃カシオペアについてもう一度ふれておきます。
 王妃は死後、天に上げられてカシオペア座となりました。北の空にあり変形Wの形をした有名な星座です。しかしポセイドンは彼女が海の下に下りて休憩することを許さず、そのため彼女は常に天空を巡り続けているのです。(カシオペア座は、北半球の大部分の地域では水平線下に没することがない。)

 …この時のアンドロメダ姫、前回掲げた絵のようにルネッサンスからこの方の、西洋絵画お得意の全裸だったのかどうかはさておき。美貌自慢のカシオペアの娘ならそりゃあ母親譲りの美しさだったに違いありません。
 たまたま岩場を通りかかって、故・団鬼六ばりの美女緊縛の場面に出くわしたペルセウスは、ついクラクラ。父ゼウスの血が騒いだか美姫に一目惚れしてしまいます。

 そこで矢も盾もたまらず、すぐさま姫を救出するかと思いきや。緊縛の姫は一先ず置いといて、その前にやっておくことがあります。ペルセウスは冷静沈着にも、ケペウス王の館に向かったのです。
 さすがは、「契約社会」が当たり前の欧米人の遠い祖先と言うべきです。事前に救出の見返りについて、救出損にならぬよう、姫の父王としっかり取り決めておく必要があったのです。

 ペルセウスは単刀直入に切り出します。
 「この私が姫を救い出して進ぜましょう。首尾よく救出できた時には、姫を私の妻として迎えたいがよろしいか」
 「相分かった。その暁には娘をそなたの妻とするがよかろう」
 王としても大切な娘がみすみす海獣の餌食となるよりは、見ず知らずとは言え、何か勝算がありそうな美青年に嫁がせた方がずっといいわけです。交渉成立。

 再び岩場に戻ってみると、何という絶妙なタイミングか、今しも海獣(巨大鯨だったらしい)がアンドロメダに襲いかかろうとしているのでした。間一髪、ペルセウスは海獣の前に立ち塞がります。そしてすかさず、ゴルゴン退治の大戦利品である“メドゥサの首”を海獣に突きつけたのです。(こういう危急の時のためか、アテナ女神にはまだ献上してしなかった。)
 
 何しろこれを見た者は皆石に変えられてしまうのです。怪獣だろうが何だろうが一切例外はなし。海獣はあっと言う間に石に変わってしまいました。こうしてペルセウスはアンドロメダ救出に成功したのでした。
 エチオピアの岩場には、今でも巨大な海獣の姿をした岩塊が残っているのだそうです。

 「勇者に非ざれば美女を得る事能わず」。勇者ペルセウスは、美姫アンドロメダを伴って意気揚々とエチオピアに凱旋しました。
 しかしいざ結婚の段となり、厄介事が持ち上がりました。ケペウス王の弟のピネウスが元々アンドロメダとの結婚を申し込んでいたのです。姫への未練からピネウスは、
 「あんなどこの馬の骨とも分からんヤツに、我が国の王女を嫁がせるなんて危険極まりない」
などと触れ回りました。と共にアンドロメダには再び婚姻を迫り、兄である王にはペルセウス追放を唆します。

 しかし二人ともピネウスの陰謀には断固応じません。そこでピネウスは「この際王位も奪ってしまおう」と邪な考えを抱き、一党を引き連れて兵を挙げます。しかしここでも絶大な威力を発揮したのが“メドゥサの首”でした。
 ペルセウスはピネウス軍の前にメドゥサの首を高々と掲げます。するとピネウスとその一党はたちまち石に変わってしまいました。

 こうして邪魔者がいなくなり、ペルセウスとアンドロメダはめでたく結婚したのでした。  (ペルセウスの項「最終回」につづく)

 (大場光太郎・記)

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