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晩秋の横浜

  晩秋の午後のかもめと云うものは群れて広場でうずくまりおり   (拙歌)

 抜けるような晩秋晴れとなったきょう16日昼過ぎ、久しぶりで横浜に行ってきました。
 もちろん業務上のことで、遊びやショッピングなどといった優雅な横浜行ではありません。行き先は毎度の神奈川県庁です。

 ただ神奈川県も他の都道府県同様、バブル以前の県内各地のハコ物粗製濫造、乱脈県政等のムリ・ムダ・ムラのつけにより、とうの昔に債務超過転落県となってしまっています。本来ならふくれ上がる一方の県業務にかんがみ、手狭な本庁舎、新庁舎の他に新々庁舎を建てたいのは山々なのでしょう。
 しかしこのご時世に用地買収、建設費など捻出出来るはずもなく、仮にそんな話でも持ち出そうものなら多くの県民から突き上げられるのが目に見えています。そこで仕方なく、部局によっては近くの民間ビルの何階かを賃貸して「分庁舎」と称しているケースもあります。

 私がいつも行く建設業課もその一つです。何年か前のある記事で述べたことがありますが、本庁舎などとは日本大通りを挟んで対面の街区にある○○横浜本社ビルの4階を間借しています。
 そして毎月定期的に行われる今回の申請会場は、ややっこしいことに同分庁舎の大通りの反対側、つまり新庁舎のある街区の奥まった区画にある中小企業●●ビルの何階かの一室を借り切って行われています。
 天下の神奈川県の実情は、かくのごとく「間借県政」であるのです。

 …本日は桜木町駅で降りて、会場までは徒歩ということにしました。少し長い距離です。第一が県庁舎群は横浜港にほど近い奥まった所にあります。そのため桜木町駅にせよ関内駅にせよ、2、3キロは歩かなければならないのです。
 雨の日や厳冬の季節はずい分こたえますが、本日はさほど苦にもなりません。晩秋というのに寒からず暑からず、今の時分から初冬頃のほどよい暖かさを「小春日和」というのでしょうか。

 いつもながら乗降客でごった返す駅構内を抜けて外に出ます。と、人が大勢行き来しているだだっ広い広場、その向うのご存知ランドマークタワー、クイーンズタワー、さらにその先のみなとみらい21の大観覧車などがいやでも目に飛び込んできます。それら超ノッポ建造物の上には、雲一つなく澄み切った青空が広がっています。
 それらタワー群を左手に振り仰ぎながら、外エスカレーターに乗ります。すると上は下の車道を跨ぐ遊歩道となり、やがてそのまま「CROSS GATEビル」の2階通路に沿って歩く形になります。同ビル入り口のスタバ・コーヒーの外テーブルでは、陽気のせいか何人もの人がそこに座ってコーヒーをすすったりしています。

 同通路の窓から下をのぞくと、車道の街路樹が少し紅葉しかかっているのが認められます。通路を通り抜けて階段を降り、少し行くと弁天橋にかかります。横浜市街を流下してきた何とか川は後少しで横浜港に流れ入り、海水と交じり合うのです。
 橋から川下の方を見ると、折りしも港の方から大きな屋形船が引き上げてきたところでした。橋にほど近い左岸に接岸しようとしています。船方さんならぬ船主さんらしい人が船首に立って、どこかにいる誰かへの合図なのかしきりに大きく右手を振っています。
 船尾はと見ると、その後方の川に水脈(みお)を広げています。

 川下のさらに遠くを見やると、先ほど見たランドマークタワーなどがデンと真正面に聳え立っています。とは言え川がそこまで流れているわけではもちろんなく、そのずっと手前で右にカーブして横浜港へと注ぐのです。

 この佳き日和、橋の上を行き交う人たちの表情もいつになく和んで見えます。浜からの風も凪いでいて、ほんの微風程度です。私のように仕事の事で気が急いている人も中にはいるのでしょう。が、何となくめんめめんめに横浜散歩を楽しんでいる風情に感じられました。
 右岸は遊歩道となっていて、所々にベンチもあります。そこに腰かけた何人かの人たちは川を眺めたりして、てんでに昼過ぎの日向ぼっこを楽しんでいるようです。

 橋を渡り切ると、舗道沿いにアスファルト舗装のだだっ広い空き地か広場かがあります。浜の一等地だろうに一体何の用地なの?周囲に高いネットフェンスを巡らし、前面の扉はがっちり施錠されていますから、駐車場としても使っていないのです。
 この場所については昨年11月の『晩秋の横浜随想』でも触れました。その頃の横浜で何があったか、もうお忘れかと思いますが…。
 ちょうど「横浜APEC」開催直前だったのです。オバマ大統領、胡錦濤主席など世界的要人が横浜に集結するとあって、当時の桜木町界隈も厳重警戒態勢だったのでした。

 その時は神奈川県警のみならず、他県からも応援部隊が横浜に集結する物々しさでした。そして警官・機動隊員の拠点の一つとなったのが、この広場だったのです。同記事でも書きましたが、パトカーや大型車など警察車両で溢れ返っていました。
 ということはここは国有地か市有地なのでしょう。いずれ何らかの形で有効活用するのでしょうが、不況下の今次なかなか買い手、借り手がつかず、もったいないことに遊休地状態となっているのでしょうか。

 一年前とは打って変わって静まりかえる同広場の中央あたりに、今回は何と「かもめ」たちが群れをなしてしゃがみ込んでいるのです。その数ざっと数十羽ほど。丸い輪を描くようにして白い塊りとなって、うずくまりながらじっと動こうとしないようです。
 「猿ダンゴ」の季節には早いだろうし、この小春日和の午後に日向ぼっこを楽しんででもいるのでしょうか。

 そう言えばいつもなら、川の上を何羽かのかもめが飛んでいたりしますが、きょうに限っては一羽も飛んでいません。群れによっては、川の右岸側に設けられた手摺の上に並んで止まったままやはりじっとしています。

 役所での申請が無事終了し、帰りも同じルートを通り、気になってそちらをのぞいてみました。1時間以上経つのに、やはり広場にはまったく同じようにじっとうずくまったままのかもめたちの姿がありました。

 橋に差し掛かり川下の遠くを見るに、ランドマークの西側最上部のガラス壁面に西日が照り映え、まるでそこから日の出の太陽が光芒を放つような眩しさ。それが日の差していない川に照り返し、港から寄せくるさざ波めく水面(みなも)がキラキラ光っていました。

 (大場光太郎・記)

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