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伝説のミノス王

 ミノス王は、クレタ島北方のクノッソスに都を創設し、エーゲ海を広く支配していました。ミノス王にまつわる神話はいくつものバリエーションがありますが、代表的なものは以下のとおりです。

 ミノスはゼウスとエウロパとの子であるとされています。ここでも無類の“エロ大神”ゼウスは、またも妻神ヘラの目を盗んで浮気をしたのです。事の次第はこうです。

 時のフェニキア王には、エウロパというたいそう美しい娘がいました。フェニキアは当時地中海沿いのアジア寄りに栄えた国でした。これには前回見ましたように、クレタ島のミノア文明とフェニキアとの盛んな交易が反映されているようです。
 ともかく。千里眼のゼウスは、かねてからこの娘に目をかけていたもののなかなかうまくいかないのです。そこでエロ大神は、他のところでも使い古した奥の手の“変身の術”を使うことにします。

 ある日のこと、エウロパが侍女たちと海岸で遊んでいると、雪のように白い牡牛が泳いでくるではありませんか。それがあまりに美しく、おとなしそうだったので、エウロパはつい気を許しその背に乗ってみたのです。
 あっという間に牡牛は海中に飛び込むと、地中海の波の上を、まるで大地を走るように駆け出しました。そして「わしはゼウスだ。わしの言うことを聞け」と、わななくエウロパを背に海を走り渡って、クレタ島に上陸しました。

 エウロパは、この島で3人の子を産んだと言われます。その最初の子供がゼウスの子のミノスだとされているのです。
 ところで、それ以前クレタ島以北は前人未到の地といわれ、エウロパはその土地に初めてやってきた人間だということで、同島以北の陸地は「ヨーロッパ」と呼ばれるようになりました。またゼウスが姿を借りた牡牛は、「おうし座」として空に上げられたのです。

 名にしおう“種馬神”であるゼウスは、己の欲情を満たし、種付けさえしてしえば後は知らん顔、さっさとトンズラしてしまいます。無責任な親権放棄もいいところです。
 見知らぬ島に乳飲み子を抱えて残されたエウロパは、たまったものではありません。「慰謝料や子供の養育費をどうしてくれんのよ !」。裁判を起こそうにも、何せ相手はゼウス大神なのですから、そうもいかず。

 と、これが神話の矛盾するところです。前人未到のはずのこの島には、実は「王」が存在していたのです。クレタ王アステリオスです。
 やむなくエウロパはアステリオス王の妻となりました。その子ミノスはアステリオス王の庇護の下で成人します。やがてミノスはパシパエを妻とし、カトレウス、デウカリオーン、アンドロゲオス、アリアドネ、バイドラーらの子供をもうけました。
 このうちデウカリオーンは、トロイア戦争の勇将イードメネウスの父にあたります。ということは、実在さえ定かではないミノス王は、イードメネウスの祖父ということになり、(紀元前1250年頃とされる)トロイア戦争より前の、紀元前14世紀頃のクレタ王だったことになります。

 さて義父であるアステリオス王が死ぬと、古今東西のどの国の例に漏れず「後継争い」が勃発します。ミノスは長子である自分が継ぐべきだと王位を要求したものの、反対勢力は「そなたはどこの誰とも分からぬ氏素性ではないか」と、これを受け入れません。

 そこでミノスは王国が神々によって授けられた証(あかし)に、自分の願いは何でも叶えられると大見得を切ります。そしてミノスは王位継承の証として「牡牛」を海から送ってくれるよう、海神ポセイドンに祈ります。願いが聞き届けられた暁には、その牡牛をポセイドンに生贄として捧げることを誓います。
 この願いは叶えられ、海中から1頭の牡牛が現れ、ミノスは王位を得ることができたのです。

 海神との約束どおり牡牛を生贄に捧げなければなりません。が、ミノス新王は送られた牡牛のあまりの美しさに、欲を出して別の牡牛を生贄としました。
 さあポセイドンの怒るまいことか。仕返しにポセイドンは、牡牛を凶暴に変え、さらに王妃となったパシパエがこの牡牛に強烈な恋心を抱くように仕向けました。

 美しい牡牛に化けてエウロパを誘惑したゼウスといい、今回の美しい牡牛といい、同工異曲的な「牡牛」が登場します。当時この地には「牡牛信仰」がありこれはその名残なのかどうか、それは定かではありません。  (以下次回につづく)

 (大場光太郎・記)

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