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続・こんな理由でブログ「全面削除」 !?

 ある人がご自身のブログの音楽記事で、著作権を侵害したことは事実のようです。著作権保護期間内にあるものを含む、著作権が現在有効な音楽著作物(具体的にはある歌の歌詞)を、ブログに掲載してしまったわけです。
 たとえ善意(この法律的意味は「知らずに」ということ)での掲載だったとしても、その管理団体であるJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)がその事実を知れば、何らかの処罰の対象になることは致し方ありません。
 
しかしそのことと、ブログの全面削除は別次元の問題であるように思われます。

 前回ご紹介した同氏コメント文では、ヤフーの理不尽な対応を特にお怒りでした。ヤフーブログの利用規約の「何の事前通告なしに、全ての記事を削除できる」という条項に基づいて、直接的に全削除という強硬手段に出たのはヤフーであるからです。
 しかし私は、ヤフーはJASRACの通告ないしは要請に基づいて、その意向を汲んでそうしただけ、と言えるとも思うのです。つまり、より問題視すべきは、この件に対するJASRACの対応です。

 著作権法の関連法として「著作権等管理事業法」というのがあります。著作物利用者が一々各著作者と交渉して利用契約などを行う煩雑さを避ける目的などのため、著作物の種類ごとに管理する団体が設立されていて、ここが一括管理し、利用者と使用契約などを行うシステムになっているのです。
 今回問題のJASRACは、その中の音楽著作物を一元管理する団体です。その他に映画、脚本、シナリオ、美術などの分野ごとに管理団体があり、その数はざっと数えて39にも上ります(平成16年時点)。 

 ちなみに問題のJASRACは、それら諸団体の中でも登録番号「第1号」です。諸著作物の中でも「音楽」の占める比重がいかに大きいかを物語っているようです。このことで同協会の鼻息が荒く、今回の暴挙の一因になっているのかもしれません。
 いずれにしてもご多分に漏れず、これらの諸団体には文部科学省、文化庁ОBたちがわんさか天下りし、それらのトップに君臨して各団体を牛耳っているわけです。

 上記のようなことから、私見では今回のブログ全面削除の件は、JASRAC、ヤフー一体として考えた方がいいように思います。同氏の場合、無料ブログで“善意”で歌詞を掲載してしまったのです。
 「その行為は著作権侵害に該当しますが、今回は注意だけに留めておきます。該当記事だけは削除してくださいね。次回はそうはいきませんよ」くらいで留めるべきだったのではないでしょうか。

 それをいきなり通告もなしで全面削除は誰が考えても常軌を逸しています。
 それでなくても著作権対象外として『船頭小唄』や『カチューシャの唄』のような古典的な歌しか思い浮かばない現状といい、同氏の「あんまり著作権がうるさいと、かえって文化の衰退を招くのでは」とのご懸念はもっともです。

 JASRACが依拠とするのはもちろん著作権法ですが、同法は民法の特別法であり、民法を支えている根本法は言うまでもなく日本国憲法です。つまり星の数ほどもある国内法はすべて最高法典である現憲法に収斂されていくのです。
 分かりきったことながら、現憲法は「国民の権利」に含むものとして「国民の自由権」が謳ってあります。これは少し踏み込めば「国家からの自由」という国民にとって大切な権利とされるものです。
 今回の件に関連することとして、「思想及び良心の自由」(第19条)、「集会、結社、表現の自由」(第21条)などが挙げられます。

 JASRAC及びヤフーは、著作権法という木ばかり見て、憲法という森を見ていないようです。結果、同氏という一国民の権利や自由を大きく踏みにじっているのです。

 ここでは特に憲法が保証する、国民の「集会、結社、表現の自由」について、少し考えてみたいと思います。
 著作権法では、「著作物を無断で利用できる例外」として、「私的使用のための複製」(同法30条)など利用範囲が限定されており、著作権者への影響が少ない場合などは、著作物の無断使用を認めています。
 JASRAC及びヤフーが、その例外と認めず、同氏の旧ヤフーブログに対して厳しい処断を下したということは、同ブログを私的なものではなく「公共的なものである」と判断したからだと思われます。

 確かに同ブログは、同氏が記事更新を頻繁に行い、ご自身の思想・信条を不特定多数の読者に向けて発信し、多くの読者を引きつけ、一つの記事に幾つものコメントが寄せられていました。
 これは立派に、ネット上に存在した、憲法で言うところの「集会、結社」とみなし得るものなのではないでしょうか。「集会、結社」であるならば、その自由は保証されなければなりません。

 JASRACとヤフーの両者には、果たしてそこまでの認識があったのかどうなのか。下された一方的な処断を見る限り、なかったことは明らかです。
 つまりこの両者は、憲法が保証する「集会、結社」をある日突然根こそぎ破壊し、同氏を含む人たちの「表現の機会」を奪ったのです。憲法の精神を踏みにじるこんな暴挙が本当に許されていいものなのでしょうか。
 特に問題とすべきはそのことだろうと私は考えます。  -  完  -

 (大場光太郎・記)

参考・引用
『ビジネス著作権検定上級公式テキスト』(編著:知的財産教育研究所、発行:ウイネット)
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