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「秋田国際教養大」急成長の秘密

 -低成長時代でもやり方次第では急成長できることを同大は示してくれている-

 少子化が定着しつつある我が国にあって、星の数ほどもある大学は生き残りをかけた厳しい学校運営を迫られています。それでも学生が思うように確保できず、定員割れを起こし、創立わずか5年にして廃校に追い込まれる私立大学の例もあるといいます。
 そんな中にあって、今受験生や高校関係者の注目を浴びている大学があるそうです。2004年開学した秋田県の公立・国際教養大学(AIU)です。今回は同大学の急成長の秘密に迫ってみたいと思います。

 秋田国際教養大の場合、年々志願者が増加し、2012年度の偏差値は「66」(代ゼミ発表値)にまで急増したのです。ちなみに、東大は71、京大は69、阪大は66、東北大は64です。秋田国際教養大は今やこれら旧帝大系と肩を並べるレベルなのです。
 同大学の就職状況も注目に値します。就職超氷河期の当今、08年3月に就職した1期生の就職率は、何と100%とパーフェクトの実績を挙げているのです。

 グローバルな社会で活躍できる人材の育成を目指しているといいますが、そのカリキュラムは半端ではありません。企画担当者は次のように言います。

 「英語はツール。数学や科学、自然科学など教養科目を含め、すべて英語を通じて学びます。帰国子女は少なく、日本の高校で3年間過ごした学生がほとんどです。1年生のときは、英語集中プログラムがあり、ここで最低限の英語力を身につけます。そこで基準をクリアーしないと次のステップに進めない。必ず1年間留学しなければなりませんが、留学基準もTOEFL550点以上などと決まっている。成績管理は徹底していて、例外は認めないので学生に逃げ道はありません。4年間で卒業できる学生は50%以下。また、1年生は出身地に関係なく、全員寮生活が義務付けられています。原則2人部屋での暮らしを通じ、異文化を身をもって体験してもらいます」

 何とも厳しく息がつまりそうなスパルタ教育ですが、退学者はほとんどいないといいます。というのも、1学年の定員が175人、1クラス20人以下の少人数制で、サポート態勢が万全なためです。学生一人一人に担当教員が付き、入学から卒業までトータルで相談できるようになっているのです。

 しかし「世界に通用する人材を育成しよう」「偏差値を上げよう」はどの大学でも目指していることです。他は伸びなやみ、同大だけがここまで躍進できたのはなぜなのでしょうか。朝日新聞出版「大学ランキング」編集統括の小林哲夫氏は次のように解説しています。

 「公立だからうまくいったのでしょう。新設の大学の場合でも、国公立というだけで、ある程度のレベルの人が受けてくれるから、偏差値が保証されるのです。私立が同じようなカリキュラムを組もうとしても経営的に難しいでしょう。さらに、ここまで実績を上げたのは学長の中嶋嶺雄氏のリーダーシップがあったからです。また、多くの大学は教授会が強く、改革は難しいのですが、中嶋学長が理念に共感する教員を集め、一体化となって新しい大学づくりを進めたことも大きかった」

 秋田国際教養大の急成長を知り、『思考は現実化する』(騎虎書房刊)の中のあるエピソードが連想されました。
 シカゴにあるラサール大学は20世紀前半、パッとしない無名の田舎私立大学にすぎませんでした。この大学が、同著の著者ナポレオン・ヒルを広報部長に迎えたのです。ヒルは同大学運営のどこに欠陥があるかをただちに見抜き、改革に着手します。時には学生たちをも改革の協力者にしたのです。その結果同大学は目覚しい成長を遂げ、その後「ラサール大学」は世界に名の轟く名門大学になったのでした。

 「教授会の強い」硬直化した東大などは年々地盤沈下傾向にあります。近年ではアジアレベルでも、東大は北京大学などの後塵を拝しています。それに比して開学間もない秋田国際教養大の場合、変な縛りがなく、進取の気性を持つ中嶋学長のもと自由な学校運営ができ、国際的人材育成のための厳格な教育を学生たちに施せるわけです。
 東大など旧帝大系や早慶などもうかうかしていられないのではないでしょうか。「国際」の名が示すとおり、秋田国際教養大が我が国トップの大学として、国際的知名度を高める日が来るのかもしれません。

 (大場光太郎・記)

参考・引用
『日刊ゲンダイ』(4月25日7面)
参考
『公立大学法人 秋田国際教養大学』公式サイト
http://www.aiu.ac.jp/japanese/

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コメント

[2012年度の偏差値は「66」(代ゼミ発表値)にまで急増したのです。ちなみに、東大は71、京大は69、阪大は66、東北大は64です。秋田国際教養大は今やこれら旧帝大系と肩を並べるレベルなのです。]真っ赤なウソです。センターは当然フル規格、二次も数学の必須フル規格入試の帝大と、大きなことを言っているが所詮かつての「アラカルト入試」で数科目の選抜を行っているに過ぎない秋田なんとか大の偏差値を同列に論じるのはナンセンスです。試験科目が減るほどみかけの偏差値が上がるのは入試の常識です。http://www.aiu.ac.jp/japanese/admission/pdf/youkou/2012.ABCyoukou.pdf.pdf

投稿: 学歴マニア | 2012年4月26日 (木) 20時39分

学歴マニア様
 貴重な情報をお寄せいただき、大変ありがとうございました。なるほど秋田国際教養大の高偏差値にはそういうからくりがあったわけですか。私は当今の大学事情に特別詳しいわけではなく、たまたま目にした『日刊ゲンダイ』記事に、これは記事にできるぞとばかりに飛びついてしまいました。
 今後また画期的な大学情報でもあれば、ぜひお教えください。

投稿: 時遊人 | 2012年4月27日 (金) 00時10分

学歴マニアさんの意見は仰るとおりでしょう。
ですがAIUは入りやすいが出るのは難しいというアメリカ型の大学ですから、そこを考慮しないといけないと思います。理系は別として、旧帝文系でもAIUほどには勉強していないのではないでしょうか。
他にも研究面が弱いという批判をよそで目にしましたが、これも別にいいでしょう。研究は東大京大に任せればよいです。旧帝大ではやってない教育を実践しているのがAIUだと思います。
東大に行ける能力があり、東大のブランド力を利用するためや、研究をバリバリやりたいからと東大に進む人を私はなんら否定しません。AIUを目指すのは、例えば生きた英語を習得して海外の人達と交流できる人物になりたい人、厳しい環境に身をおいて努力を継続できる人間になりたい人などで、旧帝の文系学科に入学する人とは動機や目的が全く違うと思います。
少なくとも社会のニーズのすき間にいち早く答えたことは、就職実績で証明されたと思いますね。

投稿: 興味津々 | 2012年5月28日 (月) 04時39分

興味津々様
 貴重なご意見大変ありがとうございます。またご返事遅くなり申し訳ありません。なにせ当ブログ、コメントはたまにしか寄せられないもので(苦笑)、つい見落としてしまいました。
 そうですね。旧帝大系とAIUとではそもそも設立の趣旨が違うわけですから、それぞれへの入学の動機や目的が違って当然ですね。東大・京大が研究主体なら、AIUの方は米国方式の実践的実学主体ということになるのでしょうか。ますますグローバル化しつつある中、国際的に通用する人材育成機関として、AIUにならった大学が今後増えていきそうですね。
 それと総体的に劣化の著しい今の大学生、AIUを見習ってもっとみっちり勉強していただきたいと思います。
 また何か貴重な大学情報がありましたら、お教えください。

投稿: 時遊人 | 2012年5月29日 (火) 03時05分

この大学、ろくに査読済み論文を出してる教授もいないような大学なんですね。そもそも大学は本来、高等研究機関で、その中にいる高度な頭脳を持った研究者から知恵の片りんを自分から学ぶというスタイルでしたから、就活のために教育だけに特化している、というのをみると本当に大学?と首をかしげてしまいます。

投稿: なんか違う | 2012年11月22日 (木) 01時03分

 秋田国際教養大学、最近喧伝されているような良い面ばかりではなく、さまざまな問題もありそうですね。ただ同大学、就職超氷河期の今日を乗り切る「就職偏差値」の高さや、グローバルな人材育成など、喫緊な課題に特化し、注目すべき実績を挙げている側面は認めなければならないと思います。

投稿: 時遊人 | 2012年11月22日 (木) 19時17分

秋田国際教養大学ですが
年々志願者数が減っています。


2011年:2756人
2012年:2318人
2013年:2398人
2014年:1712人(前年度比▲28.6%)

こういう大学はリスクが高いです。気をつけましょう


AIUへ入学する学生はほんとうに質が高いのか?と考えてみた。
やはり全国的に有名で実績もある超難関校、難関校はAO推薦入試の割合が低い。
それに対してAIUは2014年度実績でいうと

定員175人に対して一般入試入学者が109人である。
したがって、募集人数にしめるAO推薦入試の割合では37.7%となる。


以下の実態から判断するとAO推薦入試の割合が高い大学はレベルが相対的に低いと言わざるを得ず、
AIUもその例に漏れない。加えて、国際教養学を学ぶ上では広範囲の知識が必要になると思われるが
受験科目は英語と国語だけの軽量となっており、この点も大学の姿勢として甚だ疑問である。

募集人数にしめるAO推薦入試の割合

≪旧帝国大学≫
・東京大学:0% ・京都大学:0%
・大阪大学:0.7%・北海道大:2.8%
・九州大学:6.8% ・名古屋大:18.4%
・東北大学:18.9%

≪有名国立大学≫
・筑波大学:29.4%・お茶女大:19.6%
・広島大学:14.0%・横浜国大:10%
・千葉大学:10.0%・神戸大学:6.5%
・一橋大学:1.6%・東京工業:2.9%

≪地方国立大学≫
・兵庫教育:36.2%・高知大学:31.7%
・山梨大学:30.1%・群馬大学:28.9%
・徳島大学:28.4%・帯広畜産:25.6%
・福島大学:25.4%・香川大学:24.3%
・静岡大学:23.1%・宇都宮大:22.8%
・小樽商科:21.8%・福井大学:20.8%
・信州大学:20.4%・新潟大学:19.7%
・三重大学:16.1%・熊本大学:14.7%

≪地方公立大学≫
・島根県立大:54.5%・山口県立大50.0%
・都留文科大:47.8%・群馬県立女42.5%
・埼玉県立大:40.0%・長崎県立大35.3%
・北九州市立:31.7%・京都府立大24.0%
・首都大東京:19.4%・大阪府立大14.9%

全国平均、国立16%・公立26%

AIUは倍率が高い、偏差値が高いと言われているが私立と同様に変則である。
その理由は簡単である。実は「そこまでしないと学生が集まらないから」である。
その根拠を以下に示すが変則的な試験により高偏差値、高倍率を確保できているが実態としては受験生から人気があるとは言えない。
その理由はこの歩留まり率の低さからみても明らかであり、旧帝大や一流国公立大より遙かに人気が低いとうかがえる。
このデータからみてもAIUは国立大の滑り止めとして受験されていると予測され、倍率の高さはどうしてもAIUに入学したい学生が何度も受験していることが原因だと思われる。

これは個人的見解だが2014年度でみると合格者の55%が入学を辞退しており、AIUより魅力のある大学に合格したと思われる。そうことを踏まえると実際入学した学生の中にも第一志望校は不合格だったからAIUには滑り止めとして合格した人もそれなりにいると思われ、入学者の2~3割は、AIUが第一志望(大本命)ではなかったと思われる。

いくらAIUの学生が“AIUはすばらしい”と訴えり、前学長が多くの著書を発行したところで世間の目は、騙されないということです。

*歩留まり率とは、定員割れしていない大学であれば合格者数と入学者数(=定員)の比率である。

2011年度入試 国公立大歩留まり率(入学者/合格者x100%)

1位 東京芸大 100%
2位 京都大  99.6%
3位 東京大  99.5%
4位 一橋大  99.0%
5位 東工大  97.9%
6位 名古屋大 97.1%
7位 大阪大  96.8%
8位 北海道大 96.2%
9位 九州大  95.6%
10位 神戸大  95.3%
  ・
  ・
  ・
30位 横市立  67.4%
トップ30位平均 91.6%

国際教養大学の場合

2011年度(特別+一般)

合格者 273人
入学者 183人

歩留まり率  67.0%

2014年度(一般入試のみ)

合格者 239人
入学者 109人

歩留まり率  45.6%

投稿: サラマンダー | 2014年6月21日 (土) 14時40分

 大変貴重な情報をありがとうございます。中には秋田国際教養大学に関心を持ち、受験しようと考えている人がいるかもしれませんが、貴情報を大いに参考にしていただきたいものですね。

投稿: 時遊人 | 2014年6月22日 (日) 16時19分

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